紙の本
批評とオマージュと創造力
2010/09/24 20:17
3人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:琉璃と瑠璃 - この投稿者のレビュー一覧を見る
単純なノベライズを許すようなやわな対象ではない、尾崎翠。
尾崎翠を理解するために欠かすことのできない、モダニズム尖鋭期の意匠,風俗を、贅沢に採りいれた力技。
遊び心にもあふれ、そこここに埋め込まれた尾崎翠モチーフの変装を発見する読書の楽しみも味わえる。
典雅にして残酷な、エログロナンセンスの光芒と深い闇の奥に、今なぜ、尾崎翠か、という謎が潜んでいる。
尾崎翠は手強い。
全力を挙げて「小説家」という方法によって尾崎翠の未完のシナリオと取り組んだこの書には、批評とオマージュと21世紀的な創造力が横溢している。
尾崎翠新世紀が、内発的に始まり、次の世代の表現者に精神のリレーのバトンを渡しうるとしたら、ここからだ。
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とても懐かしい匂いのする話だった。といっても悪い意味ではない。読んでいて江戸川乱歩、(アルセーヌ・ルパンの)モーリス・ルブランが頭に浮かんだ。時代設定もだが、一つ一つの要素が(ご都合主義といえばいいのか)次々と現われ、輪を作る様が、子どもの頃に読んだ乱歩とルブランを思い出させたのだと思う。文章の妙もあって、ぐいぐい物語の中に引っ張られた。ただ、個人的に残念なのはラスト。ルブランで言うなら、奇岩城と同じ類の後味の悪さとでも言おうか。大団円で良かったのに、と思ったが、おそらくあえてそうしなかったのであろうから、これはもう好みとしかいいようがない。
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どんでん返し的なものもあった。
「あの人は今?!」と思ってしまうような人も居た。
「變態性慾て!!!」と思いつつ、読んじゃった自分も居た。
でも、世界観というか、設定されたレトロ感がたまらず、最後まで読み切った感じ。
最初の頃にほのかに香った恋愛的なところを期待すると、全く違うところに着地しますが。
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大正末期昭和初期のデカダンス漂う東京の雰囲気がいい。荒唐無稽なご都合主義の話の展開、尾崎翠のシナリオが原作というので納得。唐草先生の狂言回し的な存在、津原氏の創作と知って、さもありなんと思った。とても楽しい作品だ。
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読んでいると、江戸川乱歩シリーズを思い出すような作品です。
昭和モダンな世界にどっぷりはまりました。
尾崎翠さんの脚本を基に肉付けされた作品ですが、
これはこれとして素晴らしいのでは?ぜひ、原案の作品も
読んでみたいと思いました。
ありえないーと突っ込みたくなることも多いけれど、そんなことが
どうでもよくなるくらい、痛快です。
久々にどっしりと読み応えのある作品を読んだ気が・・・。
面白かったです。
津原さんの作品は初めて読みましたが、ほかの作品もぜひ
読みたいです。
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あとがきを読むと、原案から今作の完成までに様々な変遷があったことが伺えるが、そんなことを全て取り払い、ひとつの小説として見ても、この作品はとても素晴らしいと思う。
まるで時代も空気もトリップして、陶酔すら感じるような、素敵な読書タイムを過ごせた。
ようするに、とても面白かった。
好きな人はとっっっても好きな雰囲気の作品だと思う。
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時は昭和三年―名探偵・唐草七郎の一番弟子にして閨秀の女探偵・岡田明子のもとへ舞いこんだ、摩訶不思議な依頼。「三姉妹を探して下さい。手掛かりは、三人とも左の耳に、一粒の琉璃玉が嵌った白金の耳輪をしています」阿片窟の女傑・女掏摸・生人形の少女・男装の麗人・旅芸人一座・変態性慾の男・老刑事・放蕩の貴公子…奇想天外、魑魅魍魎、百花繚乱、女探偵・岡田明子の事件簿(「BOOK」データベースより)
尾崎翠が、もともと映画の脚本として書いた作品を、津原さんが改めて小説化したもの。
このデカダンな雰囲気ときたらもう!
実に〈帝都〉な空気を醸し出しています。
映画もいいけど、できれば舞台で見てみたかったな。
宝塚だったらMoreBetter。
俳役とか、自分であれこれ悩んでみるのも楽しい一冊。
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尾崎翠原作を津原泰水がリライト?したものかなあ。時代設定などは古いのだけれど、そのレトロ感がほどよく。まるで古くさいという印象はありません。こういうのを読み慣れない人には読みづらいかもしれないけれど、現代でも充分すぎるほどに楽しめる作品です。
ミステリというよりは、冒険活劇。とにかく息をもつかせぬ展開の連続。「瑠璃玉の耳輪」に隠された秘密も現実離れするほどに壮大。瑠璃玉の耳輪の三姉妹をはじめ、多重人格の女探偵や隻眼の女芸人など、キャラクターも魅力的です。
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尾崎翠の小説を大胆にアレンジしたアングラな浪漫活劇。息をつかせぬ展開に引き込まれる。最後の壮大な持っていき方にはギョッとする。
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尾崎翠の映画脚本を小説化したもの。
女探偵、岡田明子のもとに”瑠璃玉の耳輪をした三姉妹を捜し出し、一年後の特定の日に連れてきてほしい”という奇妙な依頼が舞い込んだ。彼女の捜査活動を軸に様々な個性的な登場人物(阿片窟の売笑婦、変態性欲者、囚われた娘、女掏摸、旅芸人の一座、伯爵家嫡男など)が入り交じって事件が展開していく。
視点や場面の転換が多いので、登場人物によってはしばらく出てこないでどうしたんだろうと思うこともあったが、そんなところも含めて昭和初期のモダンで退廃的で奔放な世界を存分に堪能できた。戦前の探偵小説って長編はこんな活劇風のが多いし。
後半はストーリーもかなり変わっているらしいので、尾崎翠の脚本というのも読んでみたい。
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私の評価基準
☆☆☆☆☆ 最高 すごくおもしろい ぜひおすすめ 保存版
☆☆☆☆ すごくおもしろい おすすめ 再読するかも
☆☆☆ おもしろい 気が向いたらどうぞ
☆☆ 普通 時間があれば
☆ つまらない もしくは趣味が合わない
2011.3.31読了
尾崎翠の映画脚本を原案に、津原泰水が現代の小説として著したとのこと。
尾崎翠さんを知らなかったので、最初はそのことも半信半疑で、、最近はその辺から騙されるものもときどきあるので、、読んでいました。
前半は、戦前の探偵小説的な雰囲気に溢れていて、江戸川乱歩好きにはたまらない感じでしたが、だんだんダレてきて、女探偵というのにも特別の事柄もなく、まあ、復刻本のようなものかと。
しかし、途中、秋の後半ぐらいから、えーっという驚きに。
これが、昭和の前半ぐらいに書かれたのかと、ちょっとドキドキするぐらいに。また、小説としても、もの凄く盛り上がって来て、グイグイ引き込まれるものになっていた。
これは、尾崎翠を読まなければと思い、勇んであとがきを読んだら、何だそういうことかと。
まあ、面白いことは面白いけど、こうした意味がよく分からないかな。まあ、小説に意味は必ずしも必要では無いか。
ドラマにしたら、面白そう。
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時は昭和三年―女探偵・岡田明子は瑠璃玉の耳輪をした三人姉妹を探すという依頼を受けるのだが……。尾崎翠の未発表シナリオを津原泰水がリライトした長編。
幻想小説のテイストの入った冒険活劇。女探偵、女掏摸、旅芸人一座、阿片窟、変態性欲…、帝都で繰り広げられる妖しくアングラで濃厚な物語に目眩がするほどに圧倒される。
尾崎翠の原作も読んでみたいね。
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幻の女性作家・尾崎翠の原案による、昭和初期の帝都・東京や、異国情緒に満ちた横・南京街、そして浅草などを舞台にしたレトロ・モダンが懐かしい探偵物語。江戸川乱歩調のややエロティックで怪しげな読み物が好きならば、ぐいぐいと引き込まれる魅力がある。 登場人物たちの怪しげなこと。まずは主人公の一人で多重人格の女探偵・岡田明子(明夫)、伯爵家の跡継ぎにして美貌の高等遊民・桜小路公博。見世物一座出身の女スリに阿片窟の金髪売笑婦・マリー。極めつけは、希代の変態性欲者の成金炭鉱主・山崎などなど。登場人物たちのその後の因縁を暗示するかのような出会いを描いたエピログから始まって、美しい中国少女三姉妹の片耳に嵌められた琉璃玉のイヤリングの行方を追う探偵行が展開されていく。
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物語の後半が、普通のミステリになって残念。尾崎翠原案の前半との差はしょうがないか。もう少し怪しげな話になってるとよかったんだが。
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2011.8.6 初読 市立図書館
ひさしぶりの津原作品。おもしろかった。
そのうち、また読もう~。