紙の本
書く技術の拙さが露呈してしまった感じ
2010/12/04 14:19
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:カフェイン中毒 - この投稿者のレビュー一覧を見る
書簡のみで成り立つ小説は、過去にもさまざまな作家が挑戦していますが、
名作傑作も多いし、思わず唸らされる工夫が随所になされていて、
読み手としては、とても楽しみな分野でもあります。
文章で成り立つ手紙を使って小説を創るというのは、
“創るだけ”なら、さほど困難なことではないと思うのです。
ところが、不自然さを残さないものとなると、いきなりハードルも上がるのではないでしょうか。
そこをクリアしたうえで、なおかつ物語も味あわせてほしい……と期待してしまうのは当然だと思うのですが。
往復書簡による、3篇が収められています。
長ければいいというものではないけれど、これが限界だったのかなとも感じました。
これ以上長いものを手紙のみで成立させるのは、難しそうな印象だったからです。
それぞれに謎解きが絡んでいるせいもあるでしょうが、あまりにも説明くさい手紙が延々と続くので、
書簡小説の意味がないとすら思ってしまいました。
対話の再現や手記まで出てくると、読んでいるうちに手紙の途中だったことも忘れてしまいがちです。
手紙だからこそ書けることもありますが、
手紙だからといって、書けない(書かない)だろうこともあります。
登場人物同士が知りうる背景などは、手紙に出てこない部分で補えるくらいの力量がなければ、
ただのうるさい語りかけでしかありません。
読みながら、著者の得意としているらしい“告白体”の文章との違いが感じられないほどでした。
「告白体以外は苦手らしい」ことを逆手にとって、書簡という形をとらざるをえなかったのではと、
いらぬことまで想像してしまう、そういう意味では試みそのものが危うくなっているような気さえします。
それでも新しい発見もありました。
人の持つドロドロした感情や悪意はあいかわらず巧いのですが、
いいかげんそればかりだなと思ってたところに、意外な面が強調された作品もあったからです。
2篇目、3篇目にそれが顕著なのですが、
そうなると謎解きのほうが甘くなってしまう(簡単に想像できてしまう)という粗さが目に付いたことも事実です。
前作までに比べると、バランスが良くなってきているのかもしれません。
でもやっぱり書簡小説じゃなくてもよかったのでは……と思ってしまうのは、ちょっと残念です。
紙の本
湊さんの新境地!マンネリなんかじゃありません、まだまだ成長中!
2010/10/22 15:18
3人中、3人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:nyanco - この投稿者のレビュー一覧を見る
高校の放送部の同級生が部員同士の結婚式で10年ぶりに再会。
一人だけ欠席したのは5年前の事故で顔に怪我をした千秋。
その場にいなかった悦子が真実を知るためにあずみと静香に送った往復書簡。
携帯無しでは生きていけない今時世代が読んだらどう感じるのかな~。
海外からの一時帰国でPCも使えない、携帯も無く、使える通信手段は手紙だけ…。
湊さんご自身がインタビューで書かれていましたが、どうしても手紙を使わなければならない設定を作るのが難しかったようですね。
第一作は、手紙でこんな話をするかな~というイライラ感がぬぐえませんでした。
携帯持ってなくても悦子から電話することは可能だっただろうし、深刻な話なら会って話すことだって…。
手紙にしか書けないことがある半面、文章として残ってしまう手紙だからこそ書けないこともあると思うんですよね。
そのあたりを手さぐりしながら作品を紡ぎだそうとされている湊さんの姿勢はとても良かったです。
人に思われている自分と、自分自身とのズレが、良く描かれていると思います。
隠されていた謎もなかなか面白かった。
悦子がこの後、どう感じたかは読者に委ねられたのでしょうね。
連作形式での『二十年後の宿題』
退職した恩師からの依頼で6人の教え子たちに会うことになった大場先生。
恩師が入院中という設定で手紙でのやり取りという必然性が綺麗に成立している。
20年前の事故の真相、事故を様々な思いで受け止め、成長してきた子供達の思いも切なく、そしてラストもなかなかお見事でした。
『十五年後の補習』
結婚を考えていた純一が国際ボランティアで海外へ。
二人の往復書簡はエアメール。
15年前の事件の記憶を失っていた彼女にずっと寄り添ってきた純一。
この書き下ろし作品が一番好きです。
え!え!と思いながら最後の手紙になってしまうのかと思って読んだラストが何とも素敵でした。
ただ、ひとつ以前から気になっている点がひとつ。
これは伏線?と思うような記述がいくつもそのまま放置されてしまうのは敢えてのトラップなのかしら…。
辻村さんみたいに、ええ!あれが…みたいに回収されるのを期待して読んでしまうのでノンタッチで終わるのが何だか肩すかしです。
ドロドロ好きの湊さんファンの方もいらっしゃると思いますが、今回のチャレンジ、なかなか良かったなと思っています。
特に一作ごとに往復書簡の形式に慣れてどんどんと往復書簡である良さが感じられました。
短い間にどんどんと成長をされる作家さんだと再認識いたしました。
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湊さんの本、全て読んでますがこれは本当に期待はずれ。ミステリー色は薄い。
すべて手紙でのやりとりの連作短編三本。
手紙っていいよね、って感じなヒューマン系を晒し出してるけどちっともでした。
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手紙での気持のやり取りは、お互いへの思いや、懐かしさしさ感じる反面、驕りや嫉妬、自己弁護と、責任転嫁、悪意さえ感じる。同じ時を過ごした仲間でも、勘違いや、思い込みで、それぞれの仮説が事実になって、勝手に作られた世界が思い出になっている。先入観や思い込みが、違う世界を作っていて、誰も同じ景色は見ていないと、あらためて感じる。
友達の幸せを願っている、のは嘘じゃないけど本心かといわれると、きっと違う。恨みや妬みをもっている。それは、自分を守るためや、自分を許すため、何かを信じて生きていくために。そんな気持が伝わってくる。そういうところが、きっと人間は愚かさってやつだね。
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短編3作品。
『十年後の卒業文集』
『二十年後の宿題』
『十五年後の補習』
手紙のやり取りですべて話が構成されていて
いつもながら、最後はいったいどうなるんだろうと
この話の真実はいったい…と毎回ドキドキさせられる。
湊さんの小説好きだ。
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相変わらずのサプライズな結末で、また作者が好きになった。
10年後の卒業文集、まさかの入れ替わりの結末
20年後の宿題、いろんな人間関係が複雑に絡んでいるが意外な結末
15年後の補習、二転三転の重い結末
「告白」「贖罪」に次いで良かった。
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手紙だからつける嘘。手紙だから許せる罪。手紙だからできる告白。過去の残酷な事件の真相が、手紙のやりとりによって明かされていく。衝撃の結末と温かい感動。書簡形式の連作ミステリ。
《2010年9月28日 読了》
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A→B:B→Aといった形式で2人の人物の間で交わされた手紙によって過去に起きたとある「事件」の真相が究明されていっている。
一冊の間に3つのストーリーがあり、それぞれの話はつながっていない。
湊かなえさんでは初の短編(中篇?)集。
手紙だからこその表現の仕方が巧く使われていて、それ故にドキっとする場面もあって面白い。
「告白」や「贖罪」に比べると被害にあう登場人物が少なく、物語の最後に光も見えたりするので色んな人に薦められるなぁと思った。
(個人的にはもっとドロドロして救いようが無い位でもいいのだけど)
湊さんの小説は、文章が語り口調だったり日記帳だったり、とにかく登場人物の目線から書かれているのが特徴だと思う。
その形式が初期から一切変わらず、つまらないという人もいるけど、私は湊かなえ=この形式で安定していいのだと思う。
違う形式の話を読みたかったら、別の作品を読むのは読者の自由だと思うし。
一度最後まで読んで「事件」について知って再読してみるのも面白いと思う。
そういう意味でやっぱり購入して本棚においておきたい一冊。
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あれは本当に事故だったのだと、私に納得させてください。高校卒業以来十年ぶりに放送部の同級生が集まった地元での結婚式。女子四人のうち一人だけ欠けた千秋は、行方不明だという。そこには五年前の「事故」が影を落としていた。真実を知りたい悦子は、式の後日、事故現場にいたというあずみと静香に手紙を送る—(「十年後の卒業文集」)。書簡形式の連作ミステリ。
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普段ハードカバーは避け勝ち(高額だし場所も取るので;)なのですが、本屋で開いてみたらもうたまらなく購入してしまいました。恩田陸の「Q&A」とか、ちょっと変わった文体物に弱いんです。
さて、読んでみたらこれがまた読みやすく面白く。怪しいと思った部分がちゃんと怪しく、重くなった雰囲気も読了時には優しく心地よくさせてくれる構成がとっても好きでした。最近重たいばっかりの小説が持ち上げられる事が多いので、こういう読み終わって気分が良いものも大切にしていきたいです。
流行ものに手を出すのを躊躇ってしまうひねくれ者なのですが同著「告白」を今更ながら読んでみようかと思います。
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短編3作を収めた短編集なのですがその全てが
「手紙」のやりとりのみで構成された作品。
やはりこういった手法での上手さは湊さん
らしく安定してます。サイズ的にも短編は
合ってる方法ですね。
メールよりも手紙の方が考えながら文章を
「書く」訳だし、書いた後も校正したりして...。
より相手に伝えようとする意思が強い手法ですよね。
が故にその手紙のみで展開されるこの作品が持つ
切実さが読む側を惹き付けます。
ジリジリと焦げ付くような悪意や嫌悪感を
思わす「十年後の卒業文集」は今までの湊作品
の王道...と思いきや最後の最後は意表を突く
展開を用意していて意外性では一番。
他の2編も今までの作品にはなかった感情や
印象を与えるだけの作品ではないのが次作への
期待になりますね。ただ、こういったスタイルは
もう食傷気味ですが...。
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告白、夜行観覧車に次ぎ3作目の読書。夜行観覧車より好き。特に3つ目の話は好き。
手紙って日本にいるもの同士だとほとんど書かないよね。留学してたときかされてたときかくらい。そのときのことを思い出しても、今読むと恥ずかしいくらい悩みを打ち明けてたり、逆に色々なことを分析してたり。
1つ目の物語で仲間内で出てきた噂話に対する、当事者の感想が深い。「仮説って大変なものだと思う。頭のいい人がこうだったんじゃないかと仮説を立てて、それもあり得るとなったら、仮説は事実になってしまう」
というかこの世に仮説しかないのではないだろうか。それを頭のいい人が追求していくと、真実に聞こえてしまう。
真実と偽話の境界線。真実と仮説の境界線。判断するのは個人個人。つまりは仮説も偽話も真実も、要は信じたい話。
そんな中でも、信じたくないような話でもこの人となら交わせる、受け止めあえる、そういう存在が救いになるんだと思う。そういう意味で最後の話は好き。
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手紙だけで構成された3つの短編小説。心の負を表現するのは相変わらずうまい。二番目の宿題は珍しく希望ある結末で良かった。でも、短編なのかちょっと物足りないかな…告白くらいのエンタメが好きです。
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早速買って読みました。
湊さん独特の構成で、今回は手紙。
3部構成になっているのですが、最後まで読み終えたとき、ちょっと残念な気がしたのは私だけでしょうか。
内容がというより、最後にすべてがつながるのかな・・と思いながら読んでいたので。2話目は、ちょっと強引な内容か??
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2010年10月4日-
15年目の~は、なんだか切なくて泣けた。大事な恋と遠距離と‐自分の私生活でも、予感はあったのかな。