紙の本
未来に向け希望を与えてくれる
2015/02/27 19:48
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投稿者:多礼 - この投稿者のレビュー一覧を見る
昔が良く感じる懐かしむ感情ではなく、現在に立ち塞がる医療、社会などの難題に対して、人間の叡知で技術革新していけると勇気が湧いた。哲学者アランの「悲観は雰囲気に存し、楽観は意思に存す。」をほうふつする。
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日本経済の長期にわたる停滞により、悲観的な書物もしくは現実逃
避のためのエンタメ本が売れている今日。
やっと、前向きな本に出会うことができました。
本日の一冊は、フィナンシャル・タイムズ&ゴールドマン・サック
ス選による「ビジネスブック・オブ・ザ・イヤー2010」の候補作と
なった、注目の翻訳書。
ベストセラー『やわらかな遺伝子』の著者であり、リチャード・ド
ーキンスらと並ぶ科学啓蒙家として有名なマット・リドレーが、10
万年にわたる人類の歴史を俯瞰し、そこから経済成長のヒントを読
み説いた、注目の一冊です。
※参考:『やわらかな遺伝子』
http://www.amazon.co.jp/exec/obidos/ASIN/4314009616/businessbookm-22/ref=nosim
経済成長が頭打ちになると、決まって「昔は良かった」という主張
がはびこるものですが、著者は、これらの主張を、さまざまなデー
タを用いて否定。
これによると、世界は確実に改善され、豊かになっているのであり、
それを導いてきたのが、「交換」と「分業」です。
著者の主張が正しいとしたら、現在の若者の自給自足への動きや閉
鎖性は、日本のタスマニア化を促進するものであり、社会の成長に
とって、極めて危険な状態です。
本書で示された、イノベーションを生み出すためのアイデアは、こ
れから知的生産で飯を食っていく我々にとって、極めて有用です。
人類がなぜ発展・成長してきたのか、その理由を俯瞰することで、
明日への成長のヒントが得られる、そんな知的な一冊。
知的刺激にあふれる上巻に比べ、下巻はややトーンダウンした感が
ありますが、この手の冗長さは、翻訳書のお約束。
<上巻>
もし文化が、他者から慣習を学習することだけで成り立っていたら、
たちまち成長が止まってしまう。文化が累積的になるには、アイデ
アが出会ってつがう必要があった
人間は交換によって「分業」を発見した。努力と才能を専門家させ、
互いに利益を得るしくみだ
若い世代が上の世代の生活を支えられるのは、イノベーションのお
かげで豊かになっているからだ。誰かがどこかで三〇年返済のロー
ンを組んでビジネスに投資し、そのビジネスが生み出した機械で購
入者が時間を節約できれば、未来からもたらされたその資金は、借
りた本人と購入者の両方を豊かにするので、ローンは子孫に返済で
きる。これが成長だ
自分の必要とするサービスを買えるだけの値段で自分の時間を売れ
なければ貧しく、必要とするサービスだけでなく望むサービスまで
手に入れる余裕があれば豊かだと言える
専門家によって知識がしだいに積み重ねられ、そのおかげで私たち
一人ひとりが生産するものの種類をしだいに減らしながら、しだい
に多くの種類のものを消費できるようになる。これが人間の歴史の
中心を成す物語だと、私は言いたい。イノベーションは世界を変え
るが、それは、イノベーションが労働の��割を進めるのを助け、時
間の分割を促すからにほかならない
結びついている人口が多いほど、手本となる人物の技能は高く、生
産的なまちがいが起きる確率も高まる。逆に、結びついている人口
が少ないほど、技能は継承されるうちに着実に衰えていく
個々のタスマニア島民の脳には、どこにも悪いところはなかった。
問題は、彼らの集団的頭脳にあったのだ。孤立(自給自足)が彼ら
のテクノロジーの縮小を引き起こした
<下巻>
人間には交換と専門化の習慣があるため、古き良き時代のマルサス
的人口抑制がじつは人間には当てはまらないことを示唆している。
つまり、食糧供給量に対して人数が多すぎるとき、人間は飢餓と疫
病で死ぬのではなく、専門化を強めることによって利用できる資源
で生存できる人の数を増やすことができる
人口を減らす政策として抜群に良いのは、女性教育の奨励だろう
ハイエクが論じたように、知識は社会に分散されており、それは各
人にそれぞれの視点というものがあるからなのだ。知識はけっして
一つの場所に集中させることはできない。それは集団的であり、個
別には存在できないからだ
企業が成長していく上でもっとも危険な瞬間は成功を収めたときだ、
なぜならそのときイノベーションを忘れてしまうからだ
二一世紀にはカタラクシー──交換と専門化によって自発的に起き
る秩序を指すハイエクの造語──が拡大し続けると予測する。知性
はより集団的となり、イノベーションと秩序はよりボトムアップに
なり、仕事はより専門化し、余暇がより多様化する
<上巻>
プロローグ アイデアが生殖(セックス)するとき
つがう心
第1章 より良い今日──前例なき現在
第2章 集団的頭脳──二〇万年前以降の交換と専門化
第3章 徳の形成──五万年前以降の物々交換と信頼と規則
第4章 九〇億人を養う──一万年前からの農耕
第5章 都市の勝利──五〇〇〇年前からの交易
<下巻>
第5章 都市の勝利──五〇〇〇年前からの交易(承前)
第6章 マルサスの罠を逃れる──一二〇〇年以降の人口
第7章 奴隷の解放──一七〇〇年以降のエネルギー
第8章 発明の発明──一八〇〇年以降の収穫逓増
第9章 転換期──一九〇〇年以降の悲観主義
第10章 現代の二大悲観主義──二〇一〇年以降のアフリカと気候
第11章 カタラクシー──二一〇〇年に関する合理的な楽観主義
謝 辞
訳者あとがき
原 注
ハイエク『法・立法・自由』第10章「市場秩序またはカタラクシー」の要約である。
但し要約にしては長い。
ちなみに「カタラクシー」とは、
市場秩序が諸目的の共通のハイアラーキーをもたないことを強調するために、
市場秩序を構成する諸経済を叙述する語としてハイエクが採用した語である
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『やわらかな遺伝子』などでは人間と他の動物の類似性を書いた著者だが、今回は反対に違いに取り組んだ。
「交換」と「専門化」。この二つが人類繁栄のキーワードなのだ。
昔は良かった、なんてノスタルジーにひたってたってしょうがない。現代が人類史上もっとも幸せな時代ということが信じられない人は本書を読むとよい。
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感想はこちら → http://mdef.blog29.fc2.com/blog-entry-85.html
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悲観主義が世界の雰囲気を包んでいる昨今にあって、著者は勇気をもってそれでも未来の世界はすばらしいものになることを多くのデータと証拠事実を集めた上で主張する。
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プロローグ アイデアが生殖するときつがう心
第1章 より良い今日
第2章 集団的頭脳
第3章 徳の形成
第4章 90億人を養う
第5章 都市の勝利
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下巻から印象的な箇所の要点まとめ。
・人々はどんどん都市に集まっている。都市への人口集中は今後も増える、集団で交換できる環境が整うから。
・経済が発展し、消費者になることができれば、女性は子どもを生まなくなる。人口増加は、経済発展によって自然に止まる。
・工場労働者の方が、農村で働く人より豊かだった。産業革命期の工場労働批判者は、農村の貧しい現実を見ることがなかった。農村より豊かな生活が送れるようになるから、みな農村を出て都市の工場に集まったのだ。
・酸性雨によって自然破壊は起きなかった。酸性雨は、人々の科学技術に対する恐怖の典型。
・テクノロジーを発展させることで、現代の問題を解決可能である。
(所感)
日本人は何故こんなに毎日牛の命を消費しているのだろう。牛肉、牛乳、乳製品。牛の他にも、鶏、豚の命を食べて、人間は生きながらえている。動物にとって人口爆発の現実は残酷ではないか。そう思っていたけれど、この本を読んである程度誤解だと思えた。人間の家畜として牛が選ばれなかったとしたら、別の動物が選ばれていた。牛が家畜として最適だったから、人口の増大とともに牛の命の消費も増えた。もし牛が選ばれなかったとしたら、別の動物か植物の命を人類は消費することになる。その選択の違いだけ。
そうだからといって、牛の過剰消費は慎まなければならない。悲観することはない。問題は解決できると絶望せずに信じてみること。
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2011年9月17日再読完了
最初に読んだ時は交換と専門家による発展ばかりが印象に残った。
けれど今回は、過去問題とされたことは、大抵が思い過ごしだったか技術によってほぼ解決された、ということが印象に残った。
あとは研究室ではバイオ燃料の収益性やエネルギー収支ばかり気にしていたけど土地利用の問題というのも考える必要があるのだなぁ、と。
次は原文で読んでみたいところ。
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貧困や気候変動への危機感など、世界中に蔓延する「悲観主義」に正面から反論し、「合理的楽観主義」を提唱する。膨大な量の史実とデータの検証により、単なるアンチテーゼに終らない説得力のある主張が展開される。本書を読むと「消費型社会vs持続型社会」とか「経済的豊かさvs精神的豊かさ」といった単純な二元論が無意味に思えてくる。人類の歴史は即ちイノベーションの歴史であり、未来に向けてもそうであるはずだという本書の主張を最も必要としているのは日本なのかもしれない。
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下巻は、現実的な楽観主義者である著者が歴史上絶えず蔓延ってきた悲観論に真っ向から勝負をいどむ、挑戦的な内容。ボクは著者を支持します。国策からなのか、日本では目にすることが少ない内容で刺激的だけれども、冷静な心で読んでほしい作品です。個人的には上巻よりもおもしろい。
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「合理的楽観主義」宣言の書
インド人女性が、なぜ故郷の村を捨てて都市のスラムに住み続けるのか?
たとえ危険でむさくるしくても、都市はチャンスの象徴だからだ、インドの村の生活よりも魅力があるからだ、と説明している。
去年のインド旅行で街中を歩いた時、若者が多く、元気で、生き生きとしていると感じたのは、このことだろうか…
なぜ農村から都市へ人が移り住むのか?女工哀史に象徴される過酷な工場労働でさえ、農業労働よりはるかに良かったからだ。
1920年代の日本で、現代の中国で、人は都市に向かっている。
「資本主義が奴隷制度を莫滅した」
動力源が人間の筋力から、動物、水力、風力、化石燃料と飛躍的に発展していく
「我々は1000人の召使いのゐた太陽王ルイ14世よりも豊かな生活をしている」
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都市、人口、エネルギー、発明、悲観主義。
上巻もそうだけど、どれもそれだけで1冊の本にできるレベルなのに、惜しげもなく1章に圧縮して1冊の本の材料にしてしまうこの凄さ。
常に全力投球で書け、出し惜しみするやつは消えてくだけだ。そんな言葉を思い出す。
こんなクオリティの本が刊行されるのも、また、交換・専門化のおかげだろう。自給自足の社会じゃこんな本は生まれようがない。
食事の心配をしなくてもいい、数多くの専門家が何世代にもわたって積み重ねてきた知見と、同様に数え切れないくらいの分野に蓄積されてきた知見が、セックスしまくることでようやく可能性が生まれる。
もちろんアイデアに限らず、執筆におけるパソコンや、インターネット、本の装丁や流通、そして1時間程度の労働で買えるくらいに押さえられた価格、というよりは、他のすべての製品やサービスの低価格化による余剰なども含め。
人は誰しも30歳近くなると自分こそが伝統の最後の後継者だと思うようになる。
悲観主義の下りは、そんな言葉を思い出す。彼らは現在や未来を悲観しているのではなく、過去を慰撫してるだけなのだろう。ニュアンス的には愛撫かな。
や、いい本でした。
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世界は決して逆行しているわけではない。21世紀に突入し、生物の進化発展、技術の躍進とともに、さまざまな課題が浮上してくるようになったが、それと同時に、時を経るに従って大変便利な世の中になったように感じられる。過去を顧みて、「昔のほうがよかった」と思うこともあろうが、確実に何らかの形で進化を起こす力が生まれていることも事実としてはあるのだ。温暖化、貧困、食糧問題、人口増加など、世界全体で見ても、国だけにとどまらず、グローバルな視点から解決に向かわなくてはならない課題がとりわけ目に付く。その解決に向かうためにも過去を知ることは重要だし、それと同じくらい問題に目を向けて考えることも大切なのである。一点だけ、『銃・病原菌・鉄(ジャレド・ダイヤモンド著)』を凌ぐとあるがこれは言い過ぎ。そこまでの評価は、私が読む限りでははっきり言って下せない。
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下巻には知識という点と未来予測について書かれている。
知識の「交換」には拡散効果がある。知識を交換しても自分にもその知識は残るので拡散効果があり、イノベーションは科学、資金、知的財産権保護、政府支援などによって起こるのではなく知識の活発な交換がなければ起こらないという論旨である。こう言われてみると計画経済がうまくいかなかったり、独裁が滅びるのは必然であろう。現場力やWikiが今後も発展を支えていくということなのだろう。
未来予測に関しては極めて楽観的であり、こんなんでいいのかと思うほどである。しかし著者は歴史がそれを物語っていると論証する。ローマクラブの提言を始め過去の悲観主義は全て人間の知恵のもとにクリアされている。
そうかもしれない。しかしその悲観主義があるからこそ、人間は知恵を出せたという面もあるだろう。楽観主義の人間ばかりでは進歩しないかもしれない。環境問題も前から本質を外れているなと思っていたが、再度この本を読んでそう思った。ただし一点だけ、今後のエネルギーとしての最有力は原子力だと言っているのは時節柄かもしれないが相当違和感を感じた。
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分業と専門家で余暇が生まれ、イノベーションに繋がった。人類の進歩の過程とこれからの期待。こういう楽観的な考えは新鮮だった。ただ、想定外のことがおこった日本のことをどうとらえるのか、著者の発言をひろいたい。それでも再生可能エネルギーの方が地球環境に良くないのか。