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とてもよかった。当方、哲学はWikipediaのかじり読み程度しか知らず、本当の意味で「ニーチェ/哲学初心者」と言えるだろうと自負できる。
一通り読んでまず思ったのが、著者のニーチェへの愛だ。推しに対する深い考察、それから導き出されるニーチェが考えていたであろう"核"。ニーチェに対しては自分も「暗い、重い、難解そう」というイメージが先行していたが、この本を読んでガラリと変わった。あまりにも、あまりにも現実的に気高く生を謳歌する、そのための哲学を切り開いた人物だったのだろう、ニーチェというひとは。
そして、「何も知らなくても読める」ということを著者が気をつけていた通り、この本は何も知らなくても読める。哲学についてもほとんどわからないような自分が読んでも、ニーチェのことが少しわかったような気がする。
ニーチェが書いたものを読んでいないから本当にイメージだけで難しそうと思っていたし、どう読めばいいかと考えあぐねていたが……これを読んだ後では、むしろ読んでみようか、という気すらしてきた。
「死でさえ人生の中にあるのだから、人生から逃げることなどまったくもって不可能だ。」
いやあ、本当にそのとおりだ。結局生きることから逃れられないのなら、開き直って生きるしかないのかもしれない。
これは愛の書だ。いかに愛をもってして、いい事も悪い事も、自分のどんな決断も、愛していくべきかという、凝縮されたエッセンスを感じる。
ニーチェという人物がここに生きているのか、はたまたニーチェを愛した著者の愛がここに生きているのか。
とても面白かった。