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紙の本
ブッダの物語なのに、ほとんど出てこない1冊
2011/02/06 13:49
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:みなとかずあき - この投稿者のレビュー一覧を見る
第3部の第1章から第4章が収められています。
シッダルタが出家して、当面苦行をしていくあたりの話のはずですが、この巻の大半はカピラヴァストウの国王になりながらすぐに死んでしまったバンダカの遺児ダイバダッタの話が続きます。しかも物語全体の時間の流れを無視し、シッダルタが出家してから10数年経過した頃のことを、わざわざ150ページ以上を費やして描いていきます。
わざわざ物語の時間軸を無視し、主人公を放っておいてでも描いておかなければならない話なのだというのは、この続きを読んでいくとわかるはずですが、この巻だけを読むとやや唐突にも思われます。
それでもこのダイバダッタが放浪していく中で巡り会うナラダッタ(このキャラクターもたぶん手塚治虫のオリジナルでしょう。そしてこの物語の最初からずっと出てきているキャラクターでもあります)に、むしろこの手塚『ブッダ』が描こうとしているものを語らせるところがシッダルタの物語以上に重要に思えてしまいます。
それは第3章「老婆と浮浪児」の冒頭、人間は一人として出てこず、鷹が幼い豹を狙い、それを母豹が助けようとして命を落とし、しかしその間に幼い豹たちは蛇に呑み込まれてしまい、その蛇はアリの大群に襲われてしまい、アリたちも大雨のために流されてしまい、流されて大河に落ち込んでいくと魚に食われてしまうという描写が続きます。結局その魚を幼いダイバダッタが刺殺し食べてしまうところで、ようやく人間が出てくるのですが、その人間たちもダイバダッタとナラダッタで、決して普通の人間ではありません。
そしてそのナラダッタがダイバダッタに「縁」という言葉を使い、「生きものは生まれてから死ぬまで、自分ひとりだけの世界で生きているのではない」という話をします。
もう、これだけでこのマンガの言わんとするところが十分描かれているようにも思います。
まあ、そこが手塚治虫の描く『ブッダ』であり、どうしても必要なことなのでしょう。ナラダッタが語っているところをまだ悟っていないわけですから、そのあたりをビルドゥングス・ロマンとして描いてしまうところが手塚の真骨頂なのかもしれません。
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