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カバーも美しくてタイトルも美しくて、カバーを外しても美しくて。もうどうしてくれよう、この本。
中身は言うまでもなく。文豪の名作を少しかじるにはもってこいです。活字も大きくゆったりとしたレイアウトなので、この手の作品が苦手と思っていた人でもすぐに馴染んで読めるのではないでしょうか。
150頁の本にしては、ちとお値段が。で、星一つ減らしてます。
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幸田文『台所のおと』
この作品は読むのは2度目だが、それぞれの女が持つ台所の音やその心境変化など、女性らしい濃やかさで実に巧みに書かれている
川口松太郎『深川の鈴』
下町の私小説?人情噺
高浜虚子『斑鳩物語』
虚子に小説のイメージがなかったが、エッセイ的掌品。機の筬の音が響く
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レビュー書いてる今、本が手元にないので詳しい振り返りが出来ないのだが、
とにかく幸田文「台所のおと」が凄かったと書き残しておく。
小料理屋を営む夫婦。夫は現在病に倒れて療養中、店は妻がかわりに切り盛りしている。
妻が台所に立ち、料理を作る音を、ふすまを隔てて布団の上で聞く夫。
夫は包丁のリズムや立ちふるまいの音から、妻の心情やなんらかの秘められた想いを聞き取る。
料理してる音だけで内心をそこまで聞き取られるんじゃ、うかうか料理もしてられんな!!
って感じだけど、夫婦それぞれのシュッと筋の通ったこころが非常に巧みに、凛として文に表わされていてとても魅せられる。
こんな文章が書けるような人間になりたいもので……。
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百年文庫。穏やかでとても良質な作品たち。
トントン、コトコトという静かな音が聞こえてくるような、幸田文「台所の音」の書き出しに惹かれて読んでみました。賑やかな大衆娯楽小説とは全く違う良さ・面白さが感じられる。それぞれの「音」が聞こえてくる3篇。高浜虚子の「斑鳩物語」は周囲の美しい情景も浮かびます。小説も書いていたのかというのは知りませんでした。
このシリーズは本と字の大きさ、一作の量共に手ごろなので、通勤通学のかばんに入れて読むのもいい。文豪・名作というものに身構えてしまう人にもハードルは低く読みやすい形になっています。
自分の人格をより良く形成するためにも、名作・良質の作品はやはり読んでおくべきだと思いました。
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110422読了
最初のがすごいよかったなあ
音の描写がとても丁寧なのと、心理描写とかおしとやかでこまやかでとてもよかった
ほか二つも穏やかなかんじで、読んでて心地よかったなあ
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借りたときは地味かな~とおもったけどかなり読ませられる。すごい作品ぞろい。どれもこれも、ものすごく深く頼りがいのある視点がすえられた日常のひとまくなんだけれど、なんかいいわ~では済ませられない大きなうねりのような、まるで時間がそのままおしよせてきているような、しかし興奮ではなくあくまで静かな気持ちで読んだ。とにかくすごい。
幸田文は特にすごいと思った。台所の音っていう、病人が枕元に嫁の台所の音を聞く話で、まったく余分なことを書いている気がしないのに、雑然と生活がある様子や、愛情のひきこもごもや、すべてを書いているという感じがするのがすごい。川口松太郎はわたし好きかも。高浜虚子は奈良のはなし。干し柿のよう。
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“音”をテーマに、幸田文『台所のおと』、川口松太郎『深川の鈴』、高浜虚子『斑鳩物語』の三篇を集録。
何気ない暮らしの中で聞く音を描いた作品ばかりで、地味ではあるけれども良質な作品揃いで読みふけってしまった。
賑やかで華やかな大衆小説では読めない、心の機微や日常の一コマが丁寧に慎ましく語られていて静かな感動が味わえた。
特に好きだなと思ったのは幸田文の『台所の音』。
料理屋を営む夫婦の、料理の音から感じる取る互いの愛情の深さと静かさが、凛とした文章で表現されていて心惹かれた。
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幸田文『台所のおと』、川口松太郎『深川の鈴』、高浜虚子『斑鳩物語』。「音」が物語を動かす鍵になっている短篇3編が収録されている。幸田文の『台所のおと』は本当に心洗われるような、繊細な美しい音に満ちている。海老をすりつぶすときのみちみちとした音、くわいの練り物を揚げる雨のような音。文の実の父幸田露伴は、実際にくわいの練り物を揚げるのを雨と聞き間違えたそうだ。台所で丹念に手を抜かず料理を作る筆者の生活が窺える筆致。昔の女性のつつましやかな台所の立ち姿が浮かぶ。たちの悪い病気を患う夫が耳を澄ませる中、その病状を隠して台所に立つ。夫はその音に妻の心情を慮る。その営みの音は切なく愛しい。他の2編も、聞こえる音は非常に日本的な情緒があって、余韻を楽しむような美しい響きに満ちている。若い方、刹那的な現代小説に辟易としている方に是非読んでもらいたい。
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百年文庫11冊目は「音」
収録は
幸田文「台所のおと」
川口松太郎「深川の鈴」
高浜虚子「斑鳩物語」
いずれも初読。高浜虚子散文も書いてたんだとへええとなる。
一番いいなと思ったのは「台所のおと」だろうか。文章の端々から、夫婦の微妙な感情がたちのぼるようで「名文だなー」と思ってしまった。すごい比喩とかあるわけじゃないんですけどね。言葉の選び方? 視線? 佐吉がなんだか優しく感じる。
「深川の鈴」は前読んだ宇野千代と同じくドラマとかにしてみたいような小説でした。
全体にどきどきするような雰囲気はなく、静かな「音」を感じさせる作品たち。
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『台所のおと』幸田文
くわいの柔らかな揚げ音、菜を洗うしゃあっ、包丁のとっ。
病や将来の不安で全体的に重めだけど、静かで心地よい音がたくさん。
これ好き〜。
『深川の鈴』川口松太郎
江戸っ子のはきはき、しおらしさを合わせ持つ魅力的な女性。お糸と過ごした幸せな時間が鈴の音と共に蘇る。
これも好き〜。
『斑鳩物語』高浜虚子
いまいち。読んだの忘れて、読み返しそうになった。
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幸田文 『台所のおと』
妻が台所をする際の描写が、とても丁寧で、自分も病気に伏している夫のように
目の裏に調理の情景が浮かんでくるような文章だった。
会話文が多く説明描写は少ないが、その中で登場人物がどんなことを
思っているのか、きっとここでは内心涙を堪えているのだろうなといったことが
読者に伝わってくるような温かみある言葉のやりとり。
川口松太郎 『深川の鈴』
腕に鈴をつけたまま行為をする……艶っぽい
懸賞に当選した時、お糸は主人公の背中に顔を押し付けて泣き出すが、
それは愛するものの努力が報われたという喜びだけではない。
後に、実はその瞬間に、お糸は主人公のためを思って身を引く覚悟を
決めていたことがわかる。
その涙を意味を考えると、切ない物語だなと思う。
高浜虚子 『斑鳩物語』
風景描写がとても緻密。文章で写生を行っているようである。
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・幸田文「台所のおと」△
同シリーズ「水」「青」と読んできて、日本人作家のは「また病気ものか…」とちょっと辟易。病気好きだね日本人。
夫が床に伏せてじぶんの代わりに台所の妻がたてる音に耳を傾ける。台所の音から心までお見通しのような美文。
しかしこうも美文であると最後にはうっとうしいのだ。
・川口松太郎「深川の鈴」◎
第1回直木賞作家。「大衆小説は描写じゃない。筋であり、物語である」
江戸!人情!
江戸っ子なだけに江戸っ子の書くものはどうも好きなようだ。そういえば色川武大もそうか。
芸道もの世話人情ものってのも気になる。
・高浜虚子「斑鳩物語」×
「『写生』という俳句理論を継承・発展させ、それを散文にも適用した人物」
へー。わかんなかったや。
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深川的铃是真话?我不知道、不过、好。屢数屡々(often?),凭凭(lean)。日本语和中文同意。但是,悯悯(中文)=不悯(日文)。
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三人の小説家の短編集。音に関係する小説。幸田文の「台所の音」しみじみ心に残る優しい小説だ。なるほど日本文学とはこんなものなのかと思い知らされる文体だ。料理人佐吉の目を通して三人の妻の話だが、最初は三人目の妻視点。以降は佐吉視点。小説を書いている人にとっては描写力のお手本になる本だ。今読んでも文体に関しては古臭さをまったく感じない。読んだことがなかっただけに驚いた。
川口松太郎の「深川の鈴」心に清と染みる小説だ。男女の仲を通し時代を世界観を照らし、読み手の心に大きな哀れの石を落としていく。重すぎてどかせない。しばらく哀れの石の下で物語の余韻に浸るしかない。書き手目線で見ればもう、上手いしか言いようがない。高浜虚子「斑鳩(いかるが)物語」確かに自然描写がうまい。当時もてはやされた文体なんだろう。幸田露伴の文体は好きだが、虚子のこの小説はさすがに古臭さを感じる。三篇中一番響かなかった作品だ。文学は描写、特に自然をありのまま描写することに重きを置いていた時代の作品から何かを得ようとするなら、やはり幸田文の作品か。斑鳩物語も面白いが、何度も言うが現代ではやはり古さを感じる。この古さが何なのか、それがわかればいいのだが漠然として掴むことが出来ない。どちらにしても三篇、全てが書き手にとっては意味ある作品だ。川口松太郎談「大衆小説は描写じゃない。筋であり、物語である」
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『台所のおと』幸田文
なるほど、こういうのを書く人なんですね。なんとも繊細な感覚。こまかいところに目が行きとどきすぎて窮屈な感じもするけれど。たしかに揚げ物の音は雨にも聞こえる。
『深川の鈴』川口松太郎
作者自身、講釈師の家に住み込んでいたので自伝的な色合い。芸道ものを書いていたそうで、やはり人物の口調がよい。お糸さんが眼前にいるような気がする。鈴のエピソードも、なんだか潔癖過ぎない女の情感という感じで面白い。
『斑鳩物語』高浜虚子
小説も書いていたのですな。なんだか『伊豆の踊り子』を思い出す。こちらは夜に響く機の音。
「音」ネタで3本見事にそろった。