紙の本
不朽の名作を新訳で『そして誰もいなくなった』(青木久惠訳)
2011/01/28 11:47
13人中、13人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:惠。 - この投稿者のレビュー一覧を見る
アガサ・クリスティの『そして誰もいなくなった』を読むのは、ここ半年で二度目。といっても、同じ作品を二度記録しようとしているわけではなく、訳者が違う。前回読んだ『そして誰もいなくなった』の翻訳者は清水俊二氏。そして今回読んだのは新訳で、訳したのは青木久惠氏だ。
クラシックに関する話題でよく、「○○の(例えば)ショパンが好き」なんてのを耳にする。この「○○」部分に入るのは、(この場合、ショパンがピアノ音楽だから)ピアニストの名前だ。例えば「辻行くんのショパンが好き」、「いやいやわたしはショパンならばキーシンの方が好みだ」といった具合に。
同じ作曲家の同じ曲でも、ピアニストによって曲が醸し出す雰囲気は異なる。ピアニスト(だけに限らず演奏家や指揮者)は、作曲家の意図を自分なりに解釈して、演奏するらしいのだけれど、この工程って――読書や絵画鑑賞にも通じるものがあるとは思う――、翻訳作業とすごく似ている(気がする)。
原作者の意図を正確に汲み取って、別の言語に置き換える。だけど、その別の言語で不自然になってはいけない。かと言って原作からかけ離れすぎてもいけない。同じ作品を題材にしても、訳者によって特色が出る。
だから、読み比べが楽しい。
今回の新訳では、わたしが苦手としている会話文(誰が何をしゃべっているのか理解に時間がかかる)の箇所が清水訳よりも断然わかりやすくなっている。
しかし、全体の雰囲気としては青木訳よりも、清水訳の方が好み。なぜだろうなぁ。「ちょっとした差」なんだろうけれど、「塵も積もれば」で全体的にみたら「大きな差」になっている。
今回の訳で特に好きになれなかったのが島の名前。清水訳の「インディアン島」のほうが断然いい。青木訳の「兵隊島」より、断然。これだけは賛同してくれる人、多いのではないかしらん。
内容に関しては――清水訳を読んで日が浅いのに――、やはり面白かった。疑心暗鬼になって恐怖に駆られていく様子がありありと伝わってきて、結末を知っているのにドキドキハラハラしてしまう。
そういえば…清水訳の時は気にならなかったけれど、青木訳では最後のひとりの顛末がご都合主義に感じられた。どうしてかなぁ…。
そういうところも含めて、翻訳ものの読み比べって、面白い。
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米澤穂信さんのインシテミルと少し似た雰囲気(書かれたのはこちらの方が断然前だが)。
ただ、登場人物が多く、一人当たりに割けるページが少なかったためか、あまりにアップテンポな作品になりすぎたように感じた。
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今から122年前の1890年9月15日、われらがアガサ・メアリ・クラリッサ・クリスティはイギリスで生を受けて、1920年のデビューから36年前の1976年に85歳で亡くなるまでの56年間ものあいだ、ミステリーの魔力にとりつかれて推理小説を書き続けた人。
およそアガサ・クリスティと名がついた長編66作・中短編156作や戯曲15作を中学高校でほとんど読みつくした私は、表むきはトーマス・マンの『トニオ・クレーガー』の芸術的苦悩のすばらしさとか、ドストエフスキーの『カラマーゾフの兄弟』の愚劣な残虐な不誠実な混濁した世界においても人は真実を貫き通せるのかなどといった口当たりのいい、でも歯の浮いたような純文学的話題を口にしていましたが、本当のところは、あの殺人のトリックやこのアンドロイドの苦悩の方が気になって気になって、つまり片一方で怒涛のごとくSFとミステリーにのめり込んでいった時期でもありました。
U・N・オーエンという人物から招かれて英国デヴォン州沖の孤島インディアン島に集まったのは、一面識もない10人の男女。当の招待主が不在では心落ち着かず、しかもその初晩餐に際して、いきなり彼方から全員の過去を暴露する声が響きわたり、そして童謡『10人のインディアン』のフレーズに合わせた連続殺人がスタートする。一人殺されると同時に一体ずついなくなってしまう人形達。はたして最後に残るのは誰なのか?
これは童謡殺人の最高峰といってもいい傑作で、クリスティ好みの(昔の私好みの!)犯人当てミステリの基本的なものを含んで、しかもスリルとサスペンスに満ち溢れた、そして演劇・映画的な視覚的効果も十二分に発揮されたとてもダイナミックな小説です。多作だった彼女ですが、これ一作でも歴史に残る作家として君臨したことでしょう。
それとこの本の表紙で、ひときわ光彩を放っているのが日本SFの同伴者である真鍋博の鮮やかなイラストです。彼は、星新一のみならず黎明期の日本SFの動向に呼応して、本の中の挿画や表紙のイラストにSF的な独自のタッチの描写・表現を創出して、日本SFをより豊かにそして深く実りあるものにしてくれた大恩人でもあると思います。試みに、1970年代前後のさまざまなSF本を並べて、真鍋博とその他の人たちの絵柄と比べてみれば一目瞭然で彼のすごさがわかります。
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すごく評判が良い。名作だし。
だからすごく期待して読んでしまった。期待しすぎたせいなのか、あまり面白味がなかったように感じた。もちろん、次々に人が死に、次に死ぬのは誰なのか、犯人の検討もつかなかった。その点は良かったけど、犯人の動機も、なーんだ。って感じで微妙。なにより、話に引き込まれる事がなかった。
たまたま手にとって読みはじめた本だったら、純粋に楽しめたんだろうな。
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互いに面識のない10人の人間が、ある孤島の屋敷へ招待、または就労のために集められた。多くの者がが招かれた理由に疑念を抱く中、レコードから10人は全員が過去に故意・重過失の殺人を犯しているという音声が流れる…。
孤島のミステリーの元祖であり、大変満足のゆく出来の作品でした。
ぜひ真相を推理し、答えを見つけて頂きたい。
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アガサ・クリスティー著
『そして誰もいなくなった』
読んだ。
昔から読みたかったんだけどな〜んか機会がなくて、
この前『インシテミル』のあとがきでクローズドサークルの定番?王道?みたいな感じで書かれていたので、良い機会だ!と、本をお借りして読んだ。
私、なぜか、本当に純粋に次は何が起こるんだろう!みたいに読んでて、誰が犯人だとか考えずに読んでたから最後の方『誰が犯人だと思う?』って友達に聞かれた時、自分なりに推理とか全くしてないことに気づいた。
というのは、なんだか人がどんどん死んでいってるのにそれがグロくないといったら変なんだけど、
いやらしくないというか、
きれいで、
考え抜かれていて、
シンプルだけど綿密で、
『そして誰もいなくなった』の中の独特の雰囲気で殺人が起こっていく。
登場人物も特徴的ですごく魅力的。
なんか不思議な本だった。
うん、私、買うな♪
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U・N・オーエン氏に招かれて「兵隊島」に集まった10人の男女。
マザ−グースの歌に合わせて殺害される被害者たち。被害者ともに消えていく10体の兵隊人形の謎。
2011年1月1日読了
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言わずもがな、非常に有名なミステリ小説。
まず島があって、外界と遮断されていて、内部の人間が次々殺されていく。今となっては典型中の典型な設定だが、それでも面白い。面白いのだが、しかし場面転換が早すぎて、また登場人物も多いので名前が覚えられずじまいに終わってしまった。
個人的には複数犯だと思っていたがそんなことはなかった。
以前、綾辻行人の『十角館の殺人』を読んだが、この作品を相当モチーフにしていると感じた。十人という人数といい、最後の告白といい、また読み直してもいいだろう。
しかしもっと残念なことが一つだけ。おそらく、確認は取っていないが翻訳が酷い。この小説の鍵となるひとつの童謡があるのだが、この訳では、「小さな兵隊さんが……」という文面で始まる。しかし父親がかつて映画を見たときには「One Little Indian ...」というものだったらしい。ということは物語の舞台となる「兵隊島」も「インディアン島」だったのだろうか。確かに人権問題などあるかもしれないが、それを翻訳の段階で切ってしまうのはどういうつもりだろう。その時代を反映したものが文章となって記録として残っているのに、それを排除するなど断じて許されない。どうも作中人物のセリフに不具合があると感じていたが、人種差別の概念の上に成り立っていると考えれば納得がいく。当時の世相も考えて訳し、注釈などをつけるなどして配慮する方法の方が良かったのではないか。
一応念のため、確認は取っていないと一言付け加えておく。
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生誕120周年の新訳。内容のせいか新訳のせいか翻訳本にしては随分読みやすかった。
話自体は何度も使い回されていて新鮮味が無いものの、余計なアレンジが無い分、この形式自体の面白さを改めて感じられた。この分なら、今さらと倦厭していた他の作品も楽しめそう。
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読み応えありますね。
何しろ人物描写がハンパなく、どんどんストーリーに引き込んでくれます。
とにかく名作!結末もどう解決するんだろうと気をもんでいたら…
あと、吉村達也の「トリック凶殺人事件」を思い出した。というより、「トリック~」ってこの作品をリスペクトしてたのね(笑)
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中学のころ読んでいました。テンポが良くて面白い。もう一冊、清水さん?別の出版社からも出ていたけどこちらの翻訳の方が読みやすかった。オリエント急行とともに歴史的な本。
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そして誰もいなくなったが、アガサクリスティ生誕120周年にのっとり早川から新訳がでました
シリーズものではなく一冊でスッキリと終わるので導入編としては最適かも
ミステリーの大御所であり今なおたくさんの推理作家に影響をおよぼす名作をこの年まで読んでこなかったことがかなり恥ずかしく思いながら読みました
本を読み進めていると、はやみねかおるのそして五人がいなくなる、カラクリ館の数え歌、といった小説から漫画の名探偵コナンの烏丸屋敷の謎までいろんな話を連想させられました
それほどまでに、この話が魅力あるものでした
彼女が今の時代でミステリーを書いたらどんな話になるのか、読んで見たかったです
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クリスティ、わたしはあんまり好きじゃないのかも、と思ってたんだけど、挑戦して三作品めにして、すらすらっとおもしろく読めたー、やったー、よかったー。新訳だからかな??やっぱり名作だから? 謎解きよりも、謎に関係ない話を好むわたしは、「牧師館の殺人」を読んだときは、謎解きだけみたいでつまんない、とか思った(笑)んだけど、この作品は、解説の赤川次郎氏も書いているけれど、謎解きだけでシンプルにしておもしろい、っていうのがよくわかったような。今のミステリだったら、登場人物ひとりひとりの過去を長々書いて三倍くらいの長さになっているんじゃなかろうか。そこをこの短さ、ほんとにひと晩で読める短さにして、それでも登場人物みんなが印象に残る書きわけがされていてすごいな、と。サスペンスとしても、どきどきするけれど、こわすぎず、わたし的にちょうどいいような。ちょっと暗い感じはするなあと思うけれども。それにしても、こーーんなに有名な作品なのに、これまでネタバレしてないというか、わたしがぼうっとしていただけかもしれないけど、まったく犯人がわからず、犯人を知ってへえー!と思えるのってすごいかも、みんな守秘義務?をよく守ってる、とか思った。
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登場人物の名が、どれも外人の名なので親しみがなく、ときどきというかしばしばこいつ何の職業だっけと何度か表紙裏の一覧で確認してしまった。
速読には適しているけど、そこらへん慣れが必要かも
本当に、最後まで読まないと評価は定まらない
種明かしで、初めてロレンスが真犯人だったということがわかったが、それまでになんとなく手口は推測できていたので悔しいがやられたとクリスティーに脱帽せざるを得ない。その真犯人ですら、ラスト自決するとはな。
手紙をビンの中につめ海に放流するシーンで、なんてロマンチックなんだろうか。
真犯人の性癖は到底理解しがたいが、グレーなところで法で罰することができないものを法の変わりに、いわば正義ぶって己の手で罰したいという心情はちょっと共感できた。
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トリックには無理があるとおもうけれど、プロットがいい。
1939年の作品にもかかわらず、現在でも楽しめた。