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目次:
第1章 地域コミュニティの特徴と展開
1、「コミュニティ」に込められた思い
2、自治会・町内会の特徴と機能
3、現代の地域コミュニティ政策の流れ
第2章 地域の生活問題に向き合う活動
1、地域生活の共通問題への取り組み(ごみ対策/高齢者の生活条件の向上/防犯・防災対策)
2、地域生活の個別問題への取り組み(児童虐待問題/介護者の孤立/子育ての不安)
第3章 コミュニティの活性化と地域自治
1、コミュニティ活性化の課題
2、分権型まちづくりと合意形成能力 ほか
第4章 地域コミュニティ活動最前線―六分野、二〇事例の紹介
1、高齢者が住み続けられるまちに
2、地域でともに暮らし続けるために
3、地域の生活環境・防災対策
4、地域の担い手・後継者の発掘と育成
5、組織運営の工夫
6、組織間連携をすすめる
第5章 各地の事例から学ぶ―現代の問題への対処として
1、高齢者が住み続けられるまちに
2、地域でともに暮らし続けるために ほか
ピックアップと一言:
・コミュニティ組織ですが、全国的に共通の課題になっていることとして、次の六点に整理しておきます。①地域活動の担い手不足、②地域活動への参加者の減少・固定化、③多様な地域主体との連携・ネットワークの不足、④多様な地域課題への対応力の不足、⑤組織運営・マネジメント力の不足、⑥情報の発信・収集・共有力の不足。
→対応の例は、①⑤その人の得意分野を用意してあげる、②⑥情報発信を強化する、③④NPOなどの専門組織と連携する、あたりでしょうか。
・自治会・町内会、コミュニティ組織による地域共同管理が主体性を発揮してすすめられてきたこれまでの経緯は、これらの地域住民組織にまちづくり行財政権限を移譲していく地域分権の必然性を示してきました。その代表的なものは、自治基本条例ないしまちづくり条例による住民意思表明システムです。これらの市の条例は、町内会等の議決が住民の意見を代表するということの担保を、立法化することで保証したのです。その基礎には、住民の過半数以上の加入による共同活動と規約に基づく民主的な運営、住民合意を基盤にした意思決定が常に図られている自治会・町内会組織の形成が必要となります。
→自治会・町内会が地域を代表することを担保する条例。もちろん、それに値する組織作りが前提ですが、今後はこういった地域内分権のあり方が増えていくことでしょう。
・多くの地域では、不審者による事件が起こるとセンセーショナルにとりあげられることもあり、子どもたちを保護するということで、大人から隔離し囲い込むような活動が行われています。このようなことだけで、子どもたちにとって、本当に安心・安全な地域をつくることができるのでしょうか。子どもたちにとっての地域は、全生活領域であり、地域に暮らす多様な人々の蓄積に学び、交流体験を通して、人格の形成と生きる力を養う場です。子どもたちは、地域の祭りに心躍らせ、スポーツ行事に汗を流し、高齢者との交流から、どんなときでもあきらめないで生きることの意味を学んだ体験によって、それを通して他人への関心、愛着、信頼を確かめ、育った場のにおいを身につけながら社会的に成長していきます。そのようにして身につけた地域の人びとへの信頼関係を基礎にしていくことで、安全な地域生活を保っていくことができるのではないでしょうか。
→子どもは地域に育ててもらっていると思います。近所の人や、自治会・町内会の役員と気軽に挨拶できる家庭は、子どもの安全だけでなく、様々な場面でお互いに助け合い、安心安全なまちづくりにつながっていきます。
・加入の働きかけの工夫です。集合住宅に加入を呼びかけるチラシを配布することにし、会長の名前と電話番号を書き、ファックス番号を書いた入会届をあわせて届けるというものです。案内文には、町内会の概要(歴史と加入世帯数等)、活動内容(いつ、どんな活動を、どのくらいの頻度で行っているか)、会費額と使途の概要、質問や連絡の宛先などが、楽しそうな写真とともに載せてあります。
→加入することによるメリットだけでなく、組織の意義や役割や負担もちゃんと記載していくことで、長い目で見れば、信頼をしてもらうことができます。
・宇都宮市南中久保自治会…役員層は、三〇代から四〇代までが約四割を占め、比較的若い人たちが担っています。班ごとに任期一年の班長・代議員が一人ずつ選出され、また、多彩な自治会事業を繰り広げることによって、それらの経験者の中から次の役員の担い手を見極めて輩出するという仕組みがとられています。
・滋賀県東近江市蒲生地区まちづくり協議会…団塊の世代の地域デビュー応援の取り組みは、二〇〇七年から地域デビュー応援塾を開催し、約半年間かけて地域ウォッチング・料理講習などに取り組み、地域の再発見や仲間づくりに活かしています。
・立川市大山自治会…自治会の三役は会長以下、副会長五名、会計二名からなっていますが、この八名について三〇~七〇代の各年代別に推薦投票をするのです。それによって若い人からもお年寄りからもまんべんなく要望を出してもらえるとともに、世代を超えてまちづくりを進める雰囲気をつくり出しているのです。
→人材確保の事例です。それぞれの地域にあったやりかたが必要ですが、組織側が一方的に決めず、広く住民に意見を募りながら、やり方を決めていく必要があります。
・価値観の多様化した時代です。「自分の得意な分野なら関わってもいい」という人が多いことは当然です。地域の仕事というのは、大体がオールラウンドな性格をもっていて、地域や行政の仕事についての知識や経験の蓄積がないと、なかなか引き受けがたいものです。それぞれの人の個別の関心を活かすかたちで地域とのつながりをつくる、そのことによって、地域活動への参加のきっかけが見えやすくなり、特に、職業的あるいは趣味的な特技を持つ男性の参加が得やすくなります。
→みな何かしらすばらしいものを持っています。その人のすごい所を活かした活動の場を作ることで、その人はすごい人に変身する。しなければいけない活動に参加者を当てはめるのではなく、参加者が得意とする活動を活かせる場を新しくつくること。「人財」づくりとは「活躍の場」づくりですね。
・多様化する地域問題に対応していくためには、���治会・町内会、コミュニティ組織が地縁による結びつきを活かして取り組むことが求められています。地域住民組織とNPOが、より連携・協働を拡大していくようになるためにはどのような条件を整えていけばよいのでしょうか。行政が、業務委託(広報業務、各種調査業務など)をしていく際に接点をつくる努力をしたり、研修などの機会に両組織の紹介や協働の必要性を具体的に説明していくこと、などを地道に実施していくことではないでしょうか。
→組織間連携は、それぞれの自助努力と言えばそれまでですが、住民自治は行政の課題でもあります。中間組織の立ち上げなど、行政もできることをしていきたいですね、
感想等:
・自治会・町内会研究で著名な中田実氏と山崎丈夫氏により、最新のコミュニティ組織論の概要と、これからの時代における自治会・町内会(住民自治協議会)の課題や取り組みの方向性を、先進事例を紹介しながら解説しています。
・特に、高齢者、外国人、子ども、ペット、防災、担い手、組織運営、組織間連携に関する先進事例は参考になるものばかりです。
・自治会・町内会(住民自治協議会)の役員の方に役立つ一冊だと思います。