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目次:
Q1 コミュニティにはどうもなじめません、おかしいですか?
Q2 プライバシーを守るいい方法はありますか?
Q3 住民登録からプライバシーを守るいい方法はありますか?
Q4 「村八分」ってどんなこと、いまでも残っているのですか?
Q5 外国にも「村八分」はあるのですか、外国の様子を教えてください。
Q6 会社も一種の「村八分」、社宅には入りたくないのですが…
Q7 町内会はかつて禁止されたことがあるそうですが、なぜですか?
Q8 町内会と自治会はどうちがうのでしょうか?
Q9 自治会に入らないと、どんな不利があるのですか?
Q10 町会費から神社に寄付するのはおかしいと思いますが…
Q11 神社の祭礼に町会が参加するのも納得がいかず、不愉快です。
Q12 手作りの祭りがやりたいのですが、どんなものがあるのでしょうか?
Q13 自警団だの防犯協会だのって、いったい何をする団体なのですか?
Q14 警察官の巡回調査には応じる義務があるのでしょうか?
Q15 戦争を思い出して不愉快、防災訓練に参加したくないのですが…
Q16 妙な制服の「防災婦人」が目について何か気味が悪いのですが…
Q17 防災無線はいざというとき、本当に役立つのでしょうか?
Q18 町内会が自治会にかわって国保の集金をするのあ許されるのですか?
Q19半強制的な町内会の募金集めに納得がいかないのですが…
Q20 どこかいかがわしいボランティア、そう感じるのは変ですか?
Q21 民生委員が何者なのか、わからないので不気味です。
Q22 暮らしの覗き、国勢調査を拒否したらどうなりますか?
Q23 透明ゴミ袋の強制は人権侵害ではないでしょうか?
Q24 透明ゴミ袋を拒否したいのですが、いい方法はないでしょうか?
Q25 仕事上、ゴミ当番や持回り役員の任務が果たせず困っています。
Q26 興信所の身元調査をキッパリと断りたいのですが…
Q27 悪質な訪問販売にだまされず、ピシャリと撃退したいのですが…
Q28 家に来る宗教の勧誘をキッパリ断りたいのですが…
Q29 地域を取り戻すために、何から始めたらいいのでしょうか?
Q30 豊かなコミュニティを創り出すことはできないでしょうか?
Q31 実際におきた大震災はわたしたちにどんな教訓を残しましたか
Q32 激しい意見対立のある自治会・町内会のおさらいをしてください
ピックアップと一言:
・新しいイメージもないままに語られるコミュニティはくせものです。かつての地域共同体へと誘い込む罠かもしれないのです。いたずらにコミュニティ活動になだれこむよりも、「なじめない」という違和感を抱くほうが健全なのかもしれません。コミュニティはけっして集団主義ではありません個々人が理想によって手を結ぶ社会です。このちがいを無視し、集団主義を振りかざすコミュニティはかつての部落会、町内会と何のちがいもありません。
→この本の初版発行が1994年で、まだ小学校区単位の住民自治組織の動きが無かったころに書かれているのでしょうがないのですが、旧態依然とした自治会・町内会と決めつけ、あの手この手で批判している本です。著者はフリーランス・ライターということでマスコミ記者を生業としており、自治会・町内会どころか、自治体、警察、消防、社会福祉協議会、民生児童委員、国勢調査員などありとあらゆる批判をしています。本当はこの本を紹介したくはなかったのですが、自治会・町内会の反対派の理論(決めつけ・思い込み・被害妄想・屁理屈)を知っておくことも必要と思い取り上げました。
・では日本型の地方・地域組織は住民の参加意欲や共同意識を必要としないのでしょうか。おそらくそのとおりです。明確な個人の意思ではなく、あいまいな集団の帰属意識だけを必要として成り立っている地域共同体なのです。「人はみな似たりよったりで、地域はその願いや思いを代行しているのだ」という考え方が前提で、異質者の存在を想定していないのです。だから、個人の意思を問う必要がないのです。
→昔はそういうタイプの自治会・町内会もあったかもしれませんし、今でも一部の自治会・町内会(の役員が)そういう考えを持っている可能性もありますが、それを日本全部の自治会・町内会がそうだとする決めつけは、単純に攻撃対象にした方が(特定の)読者の受けがいいからとしか思えません。批判だけでは何も解決しない。嫌いだから解決したくないだけです。
・しかしなお、わずかではあっても村落の共同作業が残っています。祭礼、葬儀のほか側溝の掃除、防犯灯の設置、防火用水の設置など、道路・防犯・防災の補助的な作業です。そのため「村八分」はなお、存在しています。「先々代のときから続く村八分」などというのもあるようです。行政は村に残る共同作業を吸い上げ、孤立者や異質者が生きやすい環境を拡げなければなりません。
→時代を逆行しています。村落の共同作業や、村八分という考え方も古いですが、行政お任せ主義であり、地域福祉の考え方もなく、1994年といえども時代を見ていないと思います。画一的な制度であれば行政がしてもいいかもしれませんが、逆に孤立者や異質者への対応は難しく、もしそれで税金が上がったらやはり叩くのでしょうか。
・やはり、この国の底流である村社会はファシズムなのです。それを自治会・町内会と警察との癒着が証明しているのです。この癒着を断たないと、この国全体が異様なものになってしまいます。日本の奇怪な全体主義(ファシズム)を、世界は「ファシズム」とは呼びません。「カミカゼ(神風特攻隊)」と呼びます。
→反体制を叫ぶと受けがいい。まさにそういう文章です。
・民生委員は市町村の民生委員推薦委員会が推薦した候補者を、都道府県の民生委員審査会の審査を経て、厚生労働大臣が任命します。この厳格な仕組みが、委員を名誉職に仕立て上げ、その結果、委員の人格的広さよりも、時代遅れの道徳観が幅をきかせてしまうのです。人格は測り難いが、染みついた前時代の道徳は、”老害“がはびこる政治家や中央官僚にも受けがいいからです。そのため、本当に失礼ないい方ですが、感じのいい民生委員を私は知りません。
→本当に失礼だと思い��す。任命のシステムだけ見て、机上の思い込みだけで批判しています。民生委員が、なかなか成り手のいない中、どれだけ地域の為に活動されているのか、現場を知らないことがよく分かります。
・旧名主層がそのまま国勢調査員となり、いまも町内会を牛耳る地域ボスであるというのが、総務省の期待する「正確性の担保」なのです。住民が自分に対して何事も包み隠さず、丸裸になること、これが地域ボスのバスたる威厳を与えます。ボスはガラス張りになった地域に君臨するのです。しかし、多くの地域ボスは一匹狼ではありません。上位のボスに対してはみずからストリップすることで忠犬を演じます。地域の情報を上納(売る)することで、地域ボスとしての資格を与えられる(買う)のです。こうした村支配のルールが国勢調査の原動力なのです。
→よく結びつけたなと思います。どこかの童話かと思うほど想像力豊かです。(屁)理屈もここまでいくと立派なものです。これで国勢調査がめんどうくさいと思う人にとっては、批判する格好の(屁)理屈ができました。調査方法に課題があるのも分かりますが、国勢調査の仕組みも毎回改善されていますので、建設的な批評をしてほしいものです。
・ふだんから、自治会・町内会のミニマム論としての立場を明らかにしておいて、最低のおつきあいで一年をやり過ごすのが、もっとも楽なやり方です。地域団体に多くを期待する行政や、地域に必ずいる隣組愛好者のマキシマム論に対して、最低のおつきあいでお茶をにごしたい、とするミニマム論支持者は多いはず。きちんと立場を明らかにし、筋道立って説ける人は、けっこう歓迎されるものです。
→結局、(屁)理屈を説いて、楽をしたい、ということでしょうか。確かに地域住民の意思に反して負担を強いるのはまちがいです。そこはできる人ができることをやる、という原則でよいと思います。ただし、その集大成が自分の住む地域の良しあしを決めますよ、ということであり、自分に返ってくることを踏まえて各住民に考えてもらう必要があります。
・共同保育所を核とした地域活動に、バザーや無農薬野菜の共同購入があります。もちろんこれは保育所がなくてもやれる活動で、これを核に地域ネットワークを形成しているグループも各地に増えています。ただし、地域を越えた広域団体の参加で活動すると、コミュニティは危機に陥ります。政治団体もそのひとつですが、日本体育協会などの管理下にあるスポーツにもいえること。注意が必要と思います。そうした広域団体とは無縁に、私の両親はお茶の共同購入、カラオケ・パーティ、登山、それに二つの習いごと(マンドリン、ステンドグラス)を教えて地域のネットワークを広げています。私もまた、コミュニティの大切さを肌で感じながら、さまざまな活動を始めているところです。
→地域活動は趣味のクラブとは違います。著者は地域活動をテーマ型にするべきだと論じていますが、地域(地縁)型(自治会・町内会)と、テーマ型(NPO法人・サークルなど)は存在意義が違います。さらに最近進んできているのが、地域型とテーマ型が集まった住民自治組織です。地域型とテーマ型の二つの活動が両輪となって地域を作っていくのです。
・神戸は利益追求型の都市づくりをそのままに、限界の穴うめとしてボランティアを活用しようと考えるに至ったのです。消防隊体制の手薄さや救援体制の不備をボランティアによって補おうというのです。それも自然発生的なボランティアではなく、行政が主導できる都合のよいボランティアを組織したいというのでしょう。その最終的な帰結が町内会・自治会の再生でした。そのために流布された嘘が「町内会組織がしっかりしていたところは被害が小さくて済んだ」というもの。そんな統計はどこにもありませんし、たとえそういう数字が出ても、町内会と被害の大きさには直接の因果関係はありません。町内会が組織されていたところは古い土地で、近所づきあいが深かった、ということはあるでしょう。近所づきあいは震災の最中でも助け合いを生む素地にはなったでしょう。が、近所づきあいと町内会活動とはまったく別物です。町内会が震災でどんな対処をしたのか、具体的な話はひとつもありません。
→消防庁の調査では、阪神淡路大震災における「生き埋めや閉じ込められた際の救助」として、自力で34.9%、家族に31.9%、友人隣人に28.1%、通行人に2.6%、救助隊に1.7%、その他0.9%となっており、この友人隣人と日ごろからどのように付き合い、訓練しているかが大きく関わることになる。近所づきあいが地域活動を活性化し、地域活動が近所づきあいを広めます。数字が無いのではなく、見たくないのでしょう。
感想等:
・地域活動に参加したくない人が、理論武装するための本です。「総点検」でも「トラブル対処法」でもありません。Q&Aにもなっていません。Qを導入に使い、著者が言いたいことを言っているだけで、Aはありません。
・書名を「町内会をトラブルなく避ける方法」にした方がよいと思います。「地域のトラブル対処法」だともっと役員側の建設的な提案があると思って本を買ってしまいます。むしろ、勘違いで買わせて、洗脳しようとしているのではと疑ってしまいます。
・批判は延々と続き、建設的な提案は何一つありません。最後に取って付けたような質問(Q29、Q30)がありますが、結局、「自前の保育所を作る」とか「子どもを預けあうグループを作る」といったテーマ型の提案でした。それ自体は良いのですが、「地域を取り戻す」とか「豊かなコミュニティ」につなげるにはそれだけでは難しいと思います。
・しかし、この本が引き続き売れているということであれば、こういう考え方の人も多いということです。住民総意の活動ができるように、住民自治組織はまだまだ努力していく必要がありますね。