サイト内検索

詳細検索

ヘルプ

セーフサーチについて

性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示を調整できる機能です。
ご利用当初は「セーフサーチ」が「ON」に設定されており、性的・暴力的に過激な表現が含まれる作品の表示が制限されています。
全ての作品を表示するためには「OFF」にしてご覧ください。
※セーフサーチを「OFF」にすると、アダルト認証ページで「はい」を選択した状態になります。
※セーフサーチを「OFF」から「ON」に戻すと、次ページの表示もしくはページ更新後に認証が入ります。

e-hon連携キャンペーン ~5/31

hontoレビュー

ほしい本の一覧を見る

ボグ・チャイルド みんなのレビュー

2009年ビスト最優秀児童図書賞 受賞作品 2009年カーネギー賞 受賞作品

予約購入について
  • 「予約購入する」をクリックすると予約が完了します。
  • ご予約いただいた商品は発売日にダウンロード可能となります。
  • ご購入金額は、発売日にお客様のクレジットカードにご請求されます。
  • 商品の発売日は変更となる可能性がございますので、予めご了承ください。

みんなのレビュー20件

みんなの評価3.8

評価内訳

  • 星 5 (1件)
  • 星 4 (12件)
  • 星 3 (3件)
  • 星 2 (0件)
  • 星 1 (0件)
20 件中 1 件~ 15 件を表示

紙の本

近所で発見された遺体、獄中でハンストを行う活動家の兄など、死の影に忍び寄られながら、進路や恋の問題に向き合い、みずからを育てていく青年の物語。IRAの活動や泥炭ミイラなど、北アイルランドの特異な社会背景がからむ青春の夏。

2011/03/08 23:16

7人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:中村びわ - この投稿者のレビュー一覧を見る

 湿原植物の分解が中途半端なところで堆積したものが泥炭。これは切り出され燃料として利用できる。近年、この泥炭地の乾燥が温室効果ガス排出問題としても取り沙汰されているようである。
 泥炭は世界のあちこちにあるが、ヨーロッパ北部の泥炭地、例えばデンマーク、アイルランド、英国、オランダ、ドイツといった国では、過去にここから数百体のミイラが見つかっているという。泥炭の水分がタンニン酸を含み、それが遺体の筋肉や肌を防腐する。おまけにブロンズ像よろしく、黒光りさせる。酸素に触れない状態で、しかも低温が幸いし、指紋が採取できそうなほど、生前の状態が保たれている。
 「泥炭ミイラ」「湿地遺体」「ボグ・ピープル」などと呼ばれ、鉄器時代に生きた人々が主である。儀式の生けにえに使われた形跡のあるもの、罪人として埋葬された形跡のあるものなど推測はつくが、どういう理由で埋められることになったのか、なぞはまだ十分に解明されていない。ちなみに古代ゲルマン人、古代ケルト人は、湿地が聖なる場所への入り口だと考えていたようだ。
 以上、報道機関や事情通などのサイトを元に、はるかな過去からの使者のごとき人々について、興味深さのあまりまとめてみた。

 本書『ボグ・チャイルド』は、湿地に埋もれていたミイラを、小遣いほしさの泥炭盗掘の折に見つけてしまった高校生ファーガスのひと夏の物語だ。
 英国の北アイルランド地方、アイルランド共和国との国境ほど近くに住むファーガスは、国境を越えて行き来するランニングを趣味とする。海を渡った英国本島の大学で医学を学ぶことを志望している。
 泥炭の取れる湿地帯が近くにある自然環境や、ボグ・ピープルの発見という珍しい事件の当事者となったこと、それだけでも彼が特殊な環境下にあると分かる。それに加え、ファーガスの一家には、政治の暗い影が垂れ込めている。兄のジョーがアイルランド独立を目指すIRAの過激派の一員であるため投獄され、獄中でハンガー・ストライキを始めたというのだ。

 発見した湿地の子どもの遺体を、女性考古学者が調べにやってきて、少し明るい光が射す。考古学者は魅力的な年頃の娘コーラを同行させていて、ファーガスは彼女とフランクに語り合える。おまけに、その一帯では宿泊施設が限られているため、ファーガスの家の客間が母娘の常宿になるのである。
 ボグ・チャイルドについての調査の進展や考古学的な見解をときどき耳に入れ、ファーガスは興味をそそられる。だが、コーラへ惹かれていく気持ちを次第に持て余すようになり、テスト勉強の妨げにもなる。恋につきものの不安と共に、家族の差し入れも食べない兄の様子も大きな不安だ。両親の嘆きをどうすることもできない。
 その上さらに、もう一つの大きな問題に直面する。IRAのメンバーを兄に持ったために目をつけられ、兄の古くからの友人に厄介な頼まれごとをされてしまう。

 ミイラとして発見されたチャイルドの様相は、ハンストの決行でミイラ化していく兄の衰弱に重ね合わされる。こうした死の影を意識しつつ、ファーガスは学問や恋の行方に悩む。
 また、ファーガスが「メル」と名づけたチャイルドの声なき語りが、ところどころ断片としてサブストーリーのように太字で挿入されるが、ファーガスの内面にファンタジーとして響くメルの声が、次第にいきいきとして、ありし日の少女の姿を物語の中に復元していく。死に近づく兄と、ファーガスの空想で命を吹き込まれるメルとの対比が、独特の雰囲気を話の展開に添える。

 この物語のハイライトは、医師志望のファーガスが、その立場で、あることについての意見を、家族に決然と伝える場面である。精神的自立へ向けた記念すべきステップだ。

 家族や目上の人を大切にする、友だちや仲間を大切にする、その社会での道徳を大切にする、宗教的見方を大切にする、自分の経歴を大切にする、受けてきた教育を大切にする――そういった姿勢はとても素晴らしい。
 だが、人が何かを成し遂げようとするとき、大切にしてきたものをただ信奉するだけではいけない。そういったものに支配された価値観について、「本当にそれでいいのか」と自分に問う局面が人生には訪れる。
 本当のところを見極めるために、たとえ怖くとも、それまでに育んできた価値観をいったんは叩き壊し、再び一から、自分で組み立て直すことが求められるのだ。

 畳みかけるように、かつてない大きな出来事に見舞われたファーガスの夏は、そのような価値観の再構築の機会となり、特異な個性ある青春小説として書かれている。

このレビューは役に立ちましたか? はい いいえ

報告する

2011/04/16 13:57

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2011/05/09 15:40

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2011/05/27 12:56

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2011/08/11 09:02

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2011/08/26 15:26

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2012/02/16 23:57

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2012/02/25 13:44

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2012/12/01 10:54

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2013/03/17 22:13

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2013/04/12 12:53

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2013/05/11 23:09

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2014/05/16 10:21

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2016/08/13 15:48

投稿元:ブクログ

レビューを見る

2017/01/22 06:55

投稿元:ブクログ

レビューを見る

20 件中 1 件~ 15 件を表示
×

hontoからおトクな情報をお届けします!

割引きクーポンや人気の特集ページ、ほしい本の値下げ情報などをプッシュ通知でいち早くお届けします。