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ほんぽーとにて読む。
『聖家族』は、主人公の女性が思い立ったことをすぐ実行に移していくさまが、神々しい。もしかしたら、人間、みな、こうやって生きてみればいいんじゃないか・・・。
『懐郷』は、田舎のふるさとを持ちつつ、都会で生計を立て生活をしている人なら容易に感情移入できるお話。
都会に疲れて帰ってはみるが、結局、そこでの生活にも違和感を持つこととなり、結婚相手を置き去りにして都会に戻り生涯を終えた男。
『悲しいだけ』は、長期の闘病生活を送った妻を見送ったのちの話。病気というものは、本人だけでなく周りの人の人生も壮絶なものへと変える。が、夫はただただ妻を失ったことを悲しんでいる。そしてそのなかに柔らかい希望が垣間見える。生き切った人にしか纏えない気配に、静かに、胸を打たれる。
北原武夫『聖家族』
ジョージ・ムーア『懐郷』
藤枝静男『悲しいだけ』
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「聖家族」
いくのは、刹那的な感情をたよりに生きていく。
でも、私にはそれはわかる気がする。
ある日突然、唐突に、節目はやってくる。
それは確信の持てる手ごたえと、有無を言わせない力で、やってくる。
スイッチがパチッと切り替わる。
そして、過去は焼き切れて、終わる。
最後の、彼ら3人の力強い後ろ姿。
光に誘われているかのようだ。
8月15日。
どこへ行くのか。どうなるのか。
希望と祝福の光であってほしい。
そう願わずにはいられない。
「懐郷」
田舎というものは、どこの国でも変わらないものなのか。
故郷は、遠きにありて思うもの、なのだろう。
そして、もうそこは自分が住むべき場所ではないのだろう。
「悲しいだけ」
読みにくい情景描写が続く。
なんだか淡々と書かれているかのようだけれど、随所に「死」の存在が顔を出す。
妻の苦しみと自然とが入り混じった描写。
目の前の景色と妻の死とが、混ざり合った世界を、彼は見ている。
黒い転轍機と赭茶けた砕石の後に、妻の赤黒い腹部という表現があるのは、たまたまのようには思えない。
景色と妻とには、多くのリンクが張らりめぐらされていて、彼にとって妻は、彼の世界にしみ込んだ存在であることが伝わってくる。
七滝について書かれているところなんて、妻のことには一切触れられていないのに、そこには確実に女の人の気配がする。
まるで、幽霊のようだ。
この作品は、あまり読みやすくないし、好きではない。
それでも、これほど多くを感じさせる作品なのだから、優れているのだ、ということは認めざるを得ない。
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北原武夫「聖家族」現代の老荘的な生き方とはこういうものなのか。
藤枝静雄「悲しいだけ」死によって悲しみもまた無に帰す。
ジョージ・ムーア「懐郷」結局、人の故郷は移ろうもの。
70/100