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島田荘司全集の4冊目。4作品の「改訂完全版」を収録する。
1.『確率2/2の死』 ★★★
2.『サテンのマーメイド』 ★★★★☆
3.『夏、19歳の肖像』 ★★★
4.『火刑都市』 ★★★
それぞれの刊行年は以下の通り。
1. 1985年9月
2. 1985年9月
3. 1985年10月
4. 1986年4月(ただし、1984年9月刊行の「別冊小説現代」秋号に一挙掲載していた)
過密スケジュールが想像され驚いた。
前3作はホテルに缶詰にされて書いたそうだ。それでも、すごいと思ったら、書き溜めていたストックがあったからこそ出来たことだと後書きにあった。
ストックには完全なもの、アイデアだけのもの、習作があったそうだが、その3作はアイデアだけのストックを使って書いたという。4作目『火刑都市』については、執筆から刊行まで時間が掛かった理由がいろいろと書かれていた。島田さんの作品への思い入れを強く感じ、とても楽しく読ませてもらった。
さて、本編だが、4作ともちょっと古いが今読んでも十分に面白い。最も気に入った作品は『サテンのマーメイド』。まるでレイモンド・チャンドラー作品のよう。フィリップ・マーロウものが好きなので、ノスタルジーを感じながら愉しんだ。ただし、そこは島田荘司作品。奇想天外なトリックを用いた犯罪も盛り込まれている。でも、個人的にはこの大袈裟なトリックはいらなかった。せっかくのハードボイルドの世界がちょっと安っぽくなってしまった。それと、探偵の車がポルシェでなく、目立たない大衆車にしてほしかった。探偵の車なのに目立ってはダメだろう。こういう細かいマイナス・ポイントがなければ、私にとって『サテンのマーメイド』は最高の5つ星作品。もちろん、チャンドラー作品がお気に召さない読者にはダメだろうけれど。