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「築路」は、下放されて、荒野で道路工事作業をしている男たちが、寄る辺なさのふとした瞬間から次々と破滅へと突き進んで行く様子が過去と現在を行き来しながら語られて鮮烈だ。汗や恐怖や狂気のにおいが立ち上るような濃密さ。中編だが力強い作品。困憊。
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文革期の農村で三頭の牛を去勢したことからはじまる騒動を描いた『牛』。道路工事に使役させられている男たちの群像劇『築路』。どちらも読みやすく魅力的な作品。
『築路』は途中から時間と場所の区切りがあやふやになっていき、文章の間を一行あけるだけで過去と現在が入り乱れちょっと気を抜くと現在地を見失う。ただ、これが読みにくいかというと全く逆で、その人物の歴史が一気に頭に流れ込んでくるような感覚で下手に説明を入れられるよりも読みやすい。
〈老劉がこの世の最後となる日〉というところとか『百年の孤独』の書きだしみたいでかっこよかった。
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著者莫言氏のことは知りませんでしたし、小説も初めて読みました。強烈な印象を受けました。他の作品も読みたいと思います。
ただ・・・・。
136pに「「ぼくは同じこと送り返す」とありますが、文脈から言うと「ぼくは同じことを繰り返す」だと思います。これって、ミス変換ですよね。その他にも助詞が抜けていたり・・・・・。
訳者が悪いのか、出版社が悪いのか・・・・・。
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文革時代の中国の農村を舞台にした作品2編。個人的には、「肉」に対する願望が浮かんでくるような気がした。
ノーベル文学賞作家が書いた作品だから上品な内容かと思っていたが、それは違った。
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鼻の奥底を針で刺し、
皮膚の裏側を撫でまわすような、
ぞわっとする表現、あるいはストーリーが好きな人は嵌るでしょうし、
小説を読むことでそういう感覚を得ることを嫌がる人は嫌うでしょう。
汚い物、そして人の汚い部分が上手いこと描かれていますが、
かといって、これ見よがしにかざしもせず、
様々な誘惑と一緒にまぜこぜになって流れていく話の作りが、
個人的には大好きです。
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「牛」を読み出してすぐに作家魯人みたい、と思った。愚かまで悲哀を帯びた無知な民衆が、口うるさく騒ぎありきところにいる僕のポンポン飛び足す会話で輪郭がみえてくる。この少年がおが世話している牛の虚勢から話が始まる。貧農が革命の主役などど大見得きっている人々が、人民公社の財産である牛を死なせまいと苦慮する。ついに死んでしまった牛の肉は村に戻らず、横流しで食中毒になる悲喜劇。
「築路」でノーベル文学賞が納得。土くさいというより、人間が犬に近い立ち位置に至ってしまた経緯を道路工事に携わる男達の回想を含め描かれ、ついに破滅へと進んでいく。この小説内では魅力ある女に書かれている豆腐売りの女ですら、油のしみた十銭札を指につばをつけて数える。人が犬と対峙し、犬を捕らえ食べ、犬も捨てられた嬰児を食べる。辺見庸氏のような食べることの原点とは思うがエグイ。民族の違いを意識させられる。
スカーフを巻いた頭がカンナの花か、雄鶏のトサカの様であったり冷たい雨滴はニワトリの硬い嘴のように、心臓をつついて穴だらけのダイコンにするなどといった表現が興味深い。
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莫言と言う作家は知っていたが読んだことはなかった。
ノーベル賞受賞したので読んでみた。
文革を背景に貧困にあえぐ農民を描いているが、表現が日本人の感性にそぐわないように思った。
生々しすぎるのだ。美しくないのだ。
中国に詳しくない読者には特に理解しがたい思う。
ハルキファンではないが、村上春樹が落ちて莫言が文学賞受賞したのはどうなのか?疑問におもった。
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あまりに生々しく、強烈な印象を残す。
赤い高粱の映画も、忘れられない映画。読後、心にトゲが刺さったかのような感覚になる。文体の美しさ、表現力の素晴らしさというより、未知の世界を垣間見た、見てしまった、でも、見たくなかったという感じ。
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牛は全編、牛のキンタマの話。
壮大なスケールで時代を戯画する。自分の出自に対する愛と、それゆえの皮肉と批判。クリストツァのアンダーグラウンドみたいです。
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莫言作品の中では、暴力的な描写が比較的多く、赤い高粱に似た味わいがある。
牛はやや寓話的、教訓的な話。築路は群像劇でこちらの方が面白い。生と性、そして死が強烈なコントラストで描かれる。その中にも不思議なユーモアがあるのが、莫言の真骨頂と言えるだろう。傑作の一つだと思う。
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ノーベル賞作家は面白い。
短篇集なので、
莫言を読んだ事ない方にはオススメ。
「牛」は短篇ながら莫言ワールドが集約された名著
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孫巴と犬との格闘。彼は勝利したものの、生まれた双子の娘を一人っ子政策の罰金のために手放し、その娘は犬によって食い殺される。とても見事だった。
神話的物語と、その舞台になる血生臭く、常に蝿や蛆が湧く土地で立ち昇る暴力や死、欲望の匂い。
所々で共産党に対し疑いの目が向けられるが、作品の世界を崩すことなく調和している。