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20世紀の雇用を総括した大著。企業内諸階層の雇用のあり方を学校や職安、企業家団体との相克のなかで検討し、我々が自明としている日本の新規学卒定期採用が確立した時期を1960年代としている。細かな事例を検討しつつも、大極的な歴史の流れをなかにうまく位置づけている。
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著者の論文を再編纂した著作。
表現が洗練されていないし、誤植も何箇所かあったような気がするが、全体としてはいい。
いままで自分は、労働市場のほうからの労作を読んだことがないので新鮮であった。
とても読むのに時間が掛かったが・・・。
戦後の新卒一括採用は、戦時中の雇用の需給調整に端を欲するものであり、戦後も長らく中卒・高卒の需給調整に一役買ったのは労働官僚であった。
また産別労組ではなく、企業別労組というのは、至って自然なことであり、欧州の産別労組がむしろ伝統として存在したギルドの影響が大きいということである。
なかなか読み応えがある内容だった。出版も最近である。ただもう少し推敲の余地があるのかな・・・とも思えた。また大卒採用についても、触れてほしいとも思った。
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大作である。高価である。それでも雇用問題や日本型企業システム、コーポレート・ガバナンスに興味がある人にはお薦めの一冊と言える。
事業会社管理部門に長く勤める評者は、日本的経営とそのサブシステムとしての日本的雇用について、変えたくても変わらない理由すなわち(一見不合理に見えても実は合理的な)誘因の配置と他サブシステムとの補完性が存在すると考えており、歴史的経緯に原因を求める考え方とは距離を置く、、、はずだった。
ところが本書は丹念に資料をひも解きつつ、しかもウィリアムソンの取引コスト概念が日本的経営論証に有用であることも踏まえた上で、改めて江戸時代を射程に含む経路依存性(path dependence)を認識して結論に組み込むものであって、筆者の浅薄な思い込みを一蹴してくれたのである。
大事なのは以下の結びだろう。
「いま、もとめられているのは、原理的な矛盾の存在に自覚的でありながら、なおかつ、「伝統」の最も優れた部分を活かしていくという視点に立つ、制度改革へのアプローチなのではないだろうか。」
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「就社」社会と呼ばれるにふさわしい現代日本社会の雇用制度について、学歴主義の浸透や学校との制度的リンケージの形成など、歴史的背景について解説。