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教育格差が富裕層/貧困層の格差を招き、そしてその貧困層が不景気になって職を失った場合のセーフティネットが不十分なため、失業率が政治を動かし過剰な景気対策をとってしまうとの連鎖がとても納得感があります。
今回の金融危機は住宅という資産を貧困層に与え、資産形成させようとの試みが、金融機関の強欲に政府のお墨付きを与えた形になり、暴走させてしまったようだ。
金融機関のコントロール、社会保障、教育機会の格差是正が対策のようです。貿易の不均衡も問題視されとりわけ日本の内需拡大には相当な圧力を感じます。さすがに米国の過剰消費は影を潜めると思いつつも、金融機関の統制がまたもや骨抜きになって次のバブルに踊るような気がします。でその後に...歴史は繰り返すでしょうかw
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起こった出来事というものは一義的に説明するのは難しい。目に見える出来事の裏には、目に見えないいくつもの諸要因があり、それが複雑に絡まりひとつの出来事へと収斂されていく。それを筆者は「フォールト・ラインズ(断層線)」と呼び、金融、経済、政治の複雑な絡みを本書において指摘している。具体的な対処法というよりも、全体の流れと現状認識を述べており、金融本の中では比較的苦にならないものだと言えそうである。地震が再発するように、活断層においては次なる危機を誘発することも十分考えられる。それを未然に知り、そのために備えておくだけでも、本書が果たす役割は大きいのではないかと思っている。
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要約だけでもよむべき良書。一章は住宅政策の負担を海外に求めるべきでないと批判したい。金融改革は破綻を促す方法に疑問(リーマンショックコンフィデンシャルや世紀の空売り参照)。その他は概ね同意。翻訳者の脚注の扱いはダメ。
翻訳がぼろくそ言われてるので、語学が堪能な方はぜひとも原著を。
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米国の金融危機を事前に警告した著者が、現在の経済にひそむ「断層線」が危機を再び招くとしているが、包括的な問題点の羅列の印象を受ける。経済のグローバル化とIT化により、多くのアメリカ国民の収入が伸びず、その不満や不安を解消するために、借りやすいローンで住宅を保有させる政策をとったのが、前回の経済危機の原因と分析しているのは面白い。
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戦後以降の経済システムを俯瞰した本。米国、日独、台韓、中国、インド等それぞれの特性を述べている。また、ここまで肥大した金融システムに対しての解説と世界金融危機への今後の対策を述べている。
数式の類いは一切無く、内容は難しいところもあるが平易な文章で述べられている。金融危機対策についての提言はかなりシンプルなものであった。金融工学が私にとってはかなり複雑なものに思えているのであるが、提言された対策って結構シンプルなルールに思える。案外、金融は複雑怪奇に思わされているが、キモだけみれば結構シンプルなのかもしれないと思った。
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リーマン・ショックから2年の時を経て刊行された書籍。米国ではビジネス部門ベストセラーになったほど。実際に内容はリーマン破綻の原因を鋭い切り口で分析しており、著者が与えた結論も興味深い一冊。
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著者のラジャン氏はシカゴ大学経済大学院教授でIMFのチーフエコノミストやFRB顧問を務めるなど、金融関係の豊富なキャリアを持った人物です。
本書はそのラジャン氏が、リーマンショックに端を発する金融危機を引き起こした背景を分析し、混迷の度合いを深めて行っているアメリカと世界経済に対する処方箋の提案を行っている本です。
本書の中でラジャン氏は、サブプライムローンの破綻などアメリカの住宅バブルの崩壊の背景として、学歴格差による収入格差を指摘しています。
つまり、
低所得者層は高等教育を受ける事が出来ず、また、グローバル化が進み高度な知的労働者しか職にありつけない傾向が高まっているアメリカ社会では、低学歴がそのまま低収入に直結。
高まる低所得者層の不満と高い失業率を憂慮したアメリカ議会の主導による住宅取得促進策。
そして、その促進策により住宅市場に膨大な資金が流れ込み、バブル発生。
当時のFRB議長、グリーンスパンがバブル崩壊後の政府による救済を示唆した為、ウォール街の面々が積極的にテールリスク(滅多に起こらないが起こると大きな被害が出るリスク)を取り、しかもリスクに備えた引当金を利益に組み込み、自分の業績をかさ上げてボーナスアップを謀る。
著者は、本書の中でこの様な過程を経て今回の金融危機が引き起こされたと述べています。
また、今後、世界経済に強い影響力を発揮する中国が取っている人民元安の政策についても述べられており、
それによると、
(少し長くなりますが)
・人民元安に基づく対米輸出の増加により中国企業が保有するドルが増加
・中国の中央銀行に当たる中国人民銀行が、中国企業が保有するドルを人民元に両替するが、その結果、中国国内に人民元があふれ、インフレ発生。
・インフレによる物価高、そしてその事による社会不満を押さえる為、人民銀行は国債を売って人民元の回収を図る。
・また人民銀行は両替で得たドルでアメリカ国債を買うが、これにより人民銀行はアメリカから利子を受け取り、中国の国債を買った相手に利子を払う事になる。
・この様な中、人民銀行が損をしない為には、中国の国債の利率をアメリカ国債のそれよりも低くしないといけないが、そうなると中国の金利がアメリカの低金利政策の影響を受け、低くなる。
・中国国内の金利が低くなると中国でバブルが発生しやすくなるが、中国政府はバブルを防ぐ為に融資自体に制限をかけ、(融資を受けられない)中国の民間企業の発展が阻害される。
・加えて、低金利により中国の一般人が受け取る利子も少なくなり、その結果、中国国内経済の発展も停滞気味。
・低金利により(融資に制限をかけられている中でも融資を受けられる)中国国営企業の設備投資が促進されるが、国内経済の規模拡大が停滞したままでは中国経済の外需依存が強まる。
しかし、最大の消費国であったアメリカは、その消費を抑えつつある・・・・
と言う大きな問���があるとの事。
そして、著者はこれらの諸問題に対する処方箋として
・アメリカの教育制度改革
・医療制度改革などアメリカのセーフティネットの整備
・問題があってもつぶせない金融機関には、リスクに備えた引当金の積み立てを義務化
・万が一の場合に備えた金融機関解体案を金融機関自体に作成させ、インターネットなどで広く公開
・ドイツ、日本など輸出主導型経済の先進国は国内需要の喚起をはかる
・IMFはNPOみたいに(政府首脳相手ではなく)各国の国民一人一人に向けてメッセージを発し、世界経済の問題解決へ国際世論を主導すべき。
・インターネットを通じて、一人一人の中国人に対して人民元安政策のデメリットを伝え、その停止と中国国内市場の拡大を訴える。
等が提案されていました。
これらの提案、例え実現出来ても効果が出てくるまで時間がかかりそうな物や実効性が不透明な物もありますが、根本的な解決を図る為にはこの様な解決策をとるしか無いのかも知れません。
本書を読んで思った事は、著者のラジャン氏は、ただ経済問題を解決するのではなく、それよりももっと広い問題、アメリカ社会や国際社会全体に対する問題意識に基づき、本書を書いたのではないかと言う事でした。
「経済は社会の血管、お金は社会の血液みたいな物」
この様に考えると、経済問題の解決には社会の問題を解決しなければいけないと言うのは理にかなっており、そうなると、経済問題は金融のプロにお任せと言うのではなく、一般人一人一人も当事者として解決に取り組まなければいけない問題かも知れませんね。
本書には専門用語が沢山出てきますが、それらの用語の解説もされており、丁寧に文字を追って読めば(日頃経済ニュースなどに目を通している人ならば)十分理解出来る内容です。
お時間のある時にでも一読をおすすめします。
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サブプライム問題の原因や過程について解説された本。近代国際社会の経済の特徴等についても書かれており、経済の流れも学べる。しかし、理解しながら読み進めるには少し時間がかかりました。
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世界同時金融危機の発生を、そのメカニズムまで含めて正確に予測していたラグラム・ラジャン教授の世界的なベストセラー。金融危機は自由市場の暴走というよりも、政府と市場の狭間の断層線で起こっていることをするどく指摘する。
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ラジャンの著作を初めて読んだ。
世界経済のバブル生成から、アメリカ経済の問題点まで幅広くて勉強になったが、何がどうだったか既に放念した。
いずれにせよ、ラジャン頭いいなーという感じ。
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元IFMのチーフ・エコノミスト・・・
リーマンショック前に、金融危機が起こるだろうと・・・
どういう危機が起こるかを予測していた方の本・・・
何で今回の危機が起こったのか・・・
世界経済にはいくつも断層線が走っている・・・
主なものでは・・・
一つはアメリカ国内の政治的問題・・・
もう一つは多国間の貿易不均衡・・・
これらの断層線が世界経済に危機を招く・・・
どれか一つが原因ということはない・・・
一つずつ丁寧に紐解いていく・・・
改めて今回の金融危機を確認にするにはもってこいの本・・・
断層線はいくつもあるし、まだまだ残っているので・・・
この先・・・
再び危機が・・・
起きないとも限らない・・・
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2005年IMFのチーフエコノミストであったラグラム・ラジャンはグリーンスパンが最後のFRB議長として参加するシンポジウムに金融セクターがどのように発展したかの論文提出を要求されたが、「金融の発展は世界をよりリスキーにしたか?」と言う題名でプレゼンを行った。
その内容はWSJに2009年に以下のように紹介されている。
金融セクターを動かす誘因は、恐ろしいまでにゆがめられていた。金融関係者は利益をだしたときにはたんまりと褒美をもらい、損失を出したときにはほとんど罰を受けなかった、とラジャン氏は述べている。それにより金融機関は、大きな儲けにつながる可能性のある複雑な商品への投資にいそしんだが、そういう商品は得てして派手な失敗をもたらすおそれがある。
ラジャン氏は、デフォルトに対する保険であるクレジット・デフォルト・スワップについて、保険会社その他はリスクが小さいように見せかけてこの商品を売って大きなリターンを得ていたが、実際にはデフォルトが起きた場合、被害はきわめて大きくなる可能性があった、と指摘している。
ラジャン氏はまた、銀行は自らの帳簿から生み出した証券化された債券の一部を保有しているので、その証券に問題が起きた場合には、金融システムそのものが危機にさらされると論じている。銀行同士の新任が失われ、「銀行間の市場がフリーズし、それが全面的な金融危機を招きかねない」と。
ほぼその通りのことが、2年後に起きた。
アメリカの問題は所得格差の拡大であり、所得の再分配の手段として住宅ローンが拡大した一面がある。これを支えたのが過剰貯蓄の日本他の金で貿易赤字を通じて集めた金の過剰消費が見た目の経済発展を支えたがサブプライムローンの破綻、CDSによる金融機関の損失拡大などが引き金を引いた。
日本の例で示されているのは低賃金の輸出国から製造業は技術集約的な製品への移行で競争力を保った(今はそれも怪しくなりつつあるが・・・)が、競争にさらされないサービス業の生産性が低いままのこと。一つの例として今は必要なくなったエレベーターガールが残り続けたことが象徴としてあげられている。また1000円ヘアカットが現れた際には理容組合の全国組織は洗髪をせずに髪を切るのは非衛生的だとして全ての店に高価な洗髪設備の設置を義務づけるよう条例を策定させた。
輸出による経済発展を国内需要の拡大につなげられなかったのが日本の断層線であり、対策としては規制緩和と競争を増やすこと。後のは足で出てきている大き過ぎてつぶせない銀行と言うものをなくすことなど。中国が日本の失敗を学習できるかどうかはまだわからない。
なかなかタフな内容で一読しただけでは飲み込めない。時間をあけてもう一度読むとします。