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建築家の視点から、エネルギーミニマムなデザインを光・熱・水・風・音という視点から捉えた本。
これまで快適な住環境というものを外界と遮断しその閉空間のなかで内側をテクノロジーで変えてきた。しかし環境負荷を低減、すなわちエネルギーミニマムという視点に立つとこれを開いた空間にしてどう自然と調和させて快適にしていくかという視点が欠かせないと説いている。
我々は外界からの膨大な情報を減衰させて絞って感受しているが、閉じた環境での生活によって自然への感度を失っているのではないか。
以下メモ
◯序章
・環境に合ったパッシブなデザインでエネルギーミニマムな建物を目指してきた。
・湿度が高い状態を維持するために土を湿度調整につかったり、低い状態を維持するために気が膨張して湿度が上がると遮断されるような構造をとったりした。
◯光
・建築や空間に生命をもたらす、経済成長に伴いどんどん明るくなってきた。
・暗さは想像力を働かせる、これからは心地良い暗さという視点が大事ではないか
・ピレネー山脈を隔て南はカラッと晴れて光と影がはっきりして直裁的、北は曇りがちでもやもや、抽象的な発想が強いゴシック様式や交響曲は北側で生まれている。気候は考え方に大きく影響する。
・夕暮れ時と日中で照度は10の7乗倍も変わる、瞳孔は2〜8mmまで変化するがこれでは16倍までしか調整できないため、残りは脳内処理
・ヒトラーの演出や9.11メモリアルイベントのように光は人の心を揺さぶる力があり、光は使い方によっては危険にもなる。
・熱帯モンスーンの日本では暖かさや湿気、雑菌との戦いを考えると方位が大事。
◯熱
・床の高さを70cmくらいにすることで地面からの湿気を逃すための風を通せる。日射で屋根が高温になるため、天井を張って裏で熱い空気を抜く。熱を伝えすぎない工夫
・三州瓦は800度と低い温度で焼かれるぎ、湿度が高いときに湿気を含める、そこに陽が当たると水が蒸発し気化熱で冷える。
・人が暑い寒いと思うのは、温度、湿度、風速、輻射熱の4つが関係する。木造は輻射熱に強いがコンクリートや石造りは熱を溜め込む。具体的にこの4つの指標がどの値を示しているときに体感的に気持ちいいか知っておくといい。
・こたつは全てが完結した、省エネのシステム。ゲルは-40〜40の幅を許容でき、30分でたためて250kgしかない優れた家。
・空気で温度環境を整えること自体が非効率、うまく輻射熱を使えないか。
◯水
・時間のメタファー、時に死も暗示
・最短ルートで水が流れる屋根の形は切妻、寄棟、入母屋(お金かかるからあまりやらない)の3つだけ
・自然から外れた複雑な形をするほどコーキングに頼ることになり雨漏りしやすくなる。コーキングは3〜10年しか持たない
・我々が惹かれる水の姿はコントロールされた水ではないか、その際たるものが美しい水田。コントロールし切れない水は恐怖の対象。
◯風
・建築の構造には重力系と風系の二つのパラダイムしかない。スティール造が出てきて構造体がどんどん軽くなっているため、より風の影響が大きくなってき��いる。均一な重力と違いは風は局所的に荷重がかかること
・風に対処するように木が植えられている、松本の辺りは北上していくとだんだん住居の北側に木の配置が変わっていく、これは南風から抑えたい風が来る方向によるから。まさに風景は風の景
・風はつながっている。建物だけを考えるのではなく、都市全体として風をどう使い防ぐかと言う設計をしていくことが最適化につながるのではないか。
・風力発電は風光明媚なところに置きやすいら今後景観とのバランスが問題になるのではないか。
◯音
・知識人は危ないところに立って発言するものだ by EHサイード
・音は空間に最終的な質を与えるもの、体験しないと絶対にわからないもの。
・遮音は壁の厚さを変えて音を減衰させる、吸音は残響をどれくらいにするか、反射しすぎると聞きにくい。
・吸音性を良くしておくと、周りの音が気になりにくく、ちょっと混み入った話がしやすい
・コンサートホールは残業がなくなるまで(60dBの減衰)の時間が2秒だと良いと言われているようだが、必ずしもそうではない。モーツァルトは6秒でいい曲を作ったりもした