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マイケル・サンデルの読みやすい主著である。上巻は憲政史であったが、下巻はアメリカ史を哲学の観点から検討している。読んだ感想としては、概ねにおいてその政策が「政治哲学において」や「公共哲学において」正しいかどうかという観点である。
日本でもTPPが騒がれているが、これはアメリカ建国のときにも、自由貿易にするか否かで騒がれた。日本では経済学的損失などで語られているが、そもそも哲学の観点から、その国家の伝統や考え方と照らし合わせて語られるべきであるだろう。
共同体の喪失は、都市化をすすめることによってもたらされる。国家があまりに中立すぎるがために行われているのであろうとも、考えた。犯罪の増加もそれによるし、公民性も生まれない。これを克服するのに、結局新自由主義や新保守主義に回帰したが、国家がある観念を植えつけようとして現れ、ファッショ的になってしまった。
国家を共同体とみなすあたりが、コミュニタリアニズムの特徴である。既存の国家観は階級闘争であり、憲法も国家に対する契約書である。既成左翼はこれをファッショ的であるとみなすのであろうが、自由民主主義の体制は守られる。これはファッショとはいえないではないであろうか。
但し国家がこれを行えるとは思えない。結局、我々の手に掛かっているのだろうか。