紙の本
英語となぜ、どのようにつきあうのか
2011/06/14 23:15
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ゆうか - この投稿者のレビュー一覧を見る
英語にはあまり良い思い出がない。ことばを知ることは好きだし、
話すのも楽しいが、私にとって英語はあまりにも強く「試験」や
「勉強」と結びついている。
この本のタイトルを目にした時に、まず思ったのは、「英語に
救われるってどのような状況だろう?仕事があるとか、趣味として
支えとなるとか?」英語と結びつく動詞は、イメージしやすいもので
話す・使える・聴く・書く・楽しむなど。救う/救われるというのは
意外な気がした。
読んでみると、単なる「語学ノススメ」の本ではなかった。
まず「英語」とはそもそも何か。非西洋的な、アメリカで中華系
移民が、イギリスのインド系住民が話す英語を英会話学校で高いお金を
払って習う、という状況を想像できるだろうか。スクールに通って
得たいのはどのような「英語」か。
「女」は誰を指すのか。英語産業に携わる男女比を考えるとき、
そこには見えない権力が働いている。教える/習う女性同士の間にも。
さらにサイードの「オリエンタリズム」を引いて、「英語」の持つ
イメージ、支配についての問題を示す。
本書で36人の女性たちが、インタビューにさまざまに答えている。
それぞれの状況、動機があり、得ている報酬や満足感、抱えている
問題や不満も異なる。とにかく引き込まれるように読めてしまう。
無意識でいた部分に気づかせ、答えが出ない問いを示してくれる。
「英語を勉強しないといけないのだろうなあ」という、なんとなく
流れている「雰囲気」に対して、自分の考えや立場を持つことを
助けてくれる本。もちろん男性にも一読をおすすめします。
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集団の捉え方がオモシロかったです。英語を学習する女性、仕事で英語を使う女性。英語を使えることが女性の人生を何か上向きにさせる要素になるのか。その答えは出たような出ていないような。英語は趣味であるのか、食い扶持であるのか、の違いで生き方の満足度がだいぶ異なるようですし、仕事場で英語が使える人は代替がきく消耗品のようなこき使われようのケースが登場しびっくりすることも。学習にもお金が必要となると、趣味の延長でお金にかなりの余裕がある方と月の収入をやりくりしてステップアップを目指し学習に励む方が混在した教室に、これまたハードなコマ数をこなす教師。この組み合わせの中に、英語があれば人生彩り豊かという空気が生まれるのか?否定的な考察でした。
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英語を武器に働く女性をドアの「あちら側」、「あちら側」を夢見て英会話スクールや留学に勤しむ女性をドアの「こちら側」と二分し、36人のインタビューを通じて双方の実情を詳らかにしようという。
なぜ一部の女性が英語に過剰な思い入れをするのか、彼女たちの背景にどのような共通点があるのか、それは社会のどのような構造に関わるのか、という分析をあらかじめ放棄しているので、社会学者の著作としては切れ味が無い。
「あちら側」も「こちら側」の女性も人生いろいろである、ということを知りたければぜひ。
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なんか、読後にどっと悲しみを感じてしまった。
勉強って、役に立つからするものじゃないと思うからだろうか。
英語を勉強する理由について考えさせられた。
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結論が簡単に導き出せる問題ではないが,英語にこだわる女性の心理がよく分からん.男にとってビジネス上では英語ができるのが当たり前と考えているし,自分の分野で英語の論文が書けるくらいの力が必要だと指導してきたが....
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本書のタイトルへの筆者の答えは「わからない」であり、その回答を導き出す分析にも好感が持てるし、読者には、「救う」、「救わない」の以外の答えが存在することを受け入れる知的な体力が求められている。しかしながら、この本を分析する筆者のバイアスが、客観的に見ようとする中で随所に見られ、インタビュー対象者の声を自らが紡いで自分の意見が変化してきたのか、それとも自分のバイアスがインタビュー対象者の声を塗り替えてしまったのは微妙なところである。また、「英語は女を救うのか」という答えを、「扉のあちら側」の比較的エリート層に限定しているため、この本に共感してくれる人は少ないのではないか、とも考えられる。どちらにしても良書であると思う。英語教育業界では毛嫌いされている本であるようだが、英語を習っている女性には是非読んでもらい。「英語と女性としての自分」を一度距離をおいて考えてみても(そこに不快感を伴ったとしても)良いのかも知れないと思った。
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今の私の悩みにばちっとハマった本。
正解とか結論は無いのだけど、色んな人の意見があり、違う角度からの見方などを知ることが出来る。
英語が出来れば世界が変わるという英語産業のうたい文句を鵜呑みにしているのは危険だと思う。それは以前からそう思っていたが、再度、そんな簡単なことではないと認識した。
どんな世界でも同じだと思うが、上には上がいる。となりの芝は青く見えるのと同じで、実際にやってみないとわからない。
結局、どんな道でも正解は無く、自分が決めた道で精一杯努力する事が大切なんだ。
自分の中で外せないモノや優先順位を明確にして、自分で納得する道を選ばなくちゃ。
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英語は女を救うのかどうかの答えは書いてないが、今まで考えたこともない切り口で女性と英語のイメージについて再認識させられた。
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<参考文献>
・Robert Phillipson.1992. Linguistic Imperialism.Oxford University Press. 三浦信孝・糟谷啓介編『言語帝国主義とは何か』藤原書店 2000・・・少数派言語に対する言語差別、言語殺戮
・津田幸男『英語支配の構造ー日本人と異文化コミュニケーション』第三書館 1990・・・英会話中毒、英会話アレルギー 35
・Sakai Junko.2004. The Clash of Economic Cultures:Japanese Bankers in the City of London. London:Transaction Publishers
・藤田結子『文化移民ー越境する日本の若者とメディア』新曜社 2008
・加藤恵津子『「自分探し」の移民たちーカナダ・バンクーバー、さまよう日本の若者』彩流社 2009
・・・一生懸命英語を身に着け(あるいは身に着けようと)海外に乗り出したものの、そこでもまた夢破れてしまう日本女性の姿
・大石俊一『英語帝国主義に抗する理念ー「思想」論としての「英語」論』明石書店 2005・・・79 英語がわかる人間とわからない人間の間に優劣意識、敵対意識、疎外感情が引き起こされている
<メモ>
・女たちが英語にお金を注ぐのは「あこがれ」の消費だ
英語にまつわるきらびやかなイメージ、イケメン白人男性
・仰ぎ見られるはずの英語の先生が、実は過密スケジュールや低賃金で悩んでいて、英語が使えない上流階級の奥様に「使われている」現状
・経済的・社会的に弱い女性が語学学習に励む・海外移住に夢を抱くのも、個人的なようでいて政治的な力が働いている。そしてそれをあおる英語産業。
・正社員には正社員の、フリーにはフリーでの悩みがある。翻訳は奴隷の、下っ端の仕事・・・
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なんとなく近所の図書館で手にした本。英語とは。英語を身につけると女性は社会的に成功するのか。という、英語産業が白熱する日本の風潮を問い直す一冊。筆者と英語にかかわる女性36人のインタビューがもとになっている。始めのほうの、英語にはロマンティックな響き、白人男性などのおしゃれで洗練されたイメージがあり、同じ公用語のフィリピンやアフリカの国は考慮されていない。という部分にはぎくりとした。私もそういう偏った見方があるのだと思う。それに、今まで漠然と洋楽が好きで英語を勉強してきたけれど、帰国子女でもなんでもない純ジャパの私にいったいどこまで英語を身につける事ができるんだろう...なんてもやもやしてました。でもこの本を読んで、このように考えてる女性がとってもたくさんいるんだって分かった。それは趣味だったり私みたいに大学で勉強してる人だけでなく、通訳とか翻訳とか英語を仕事にしている人たちも多くてとても驚いた。
この本のタイトル、「英語は女を救うのか」という問いには答えが書かれていない。だが、この問いを追求し続けている女性たちの声を聞く事で、わたし自身が英語とどう向き合いたいのか考えるとてもいい契機となった。いつまでもぐずぐず迷ってないで、どんどんやりたいことをやろうと思う。ちょっと哲学的な気分になれる本でした。