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反グローバリズムの論客、「反TPP芸人」中野剛志氏の2011年の著作
2020/07/28 14:48
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投稿者:歯職人 - この投稿者のレビュー一覧を見る
動画サイトなどに登場する中野剛志氏は、あえて世間と不調和を招く「おやじギャグ」や「失言」を織り交ぜながら、民主党政権、復帰した自民党政権と常に反グローバリズム、当たり前に考えた独立国としての日本を保つ立場から、学識と論理に裏打ちされた言説を展開している。
本書は、トランプ米大統領の登場によって急激に報道されなくなっている「TPP」を、2011年時点で解明し、警告を発した書です。2020年米大統領選挙の結果によっては、「TPP」が頻発する事態も考えられる。
中野剛志氏の著作としては、手に取りやすい一冊と思います。
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日本国民必読の書
2012/03/11 21:36
12人中、8人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:CAM - この投稿者のレビュー一覧を見る
著者は、「おわりに」の冒頭で、「TPPへの参加など、論外です」とし、この本で言いたかったことは、結局のところ、その一言に尽きるとする。そして、著者は、TPP参加という愚行は、国難を呼び込むものでしかなく、「できるだけ多くの日本人が、歴史に想いをはせつつ、TPPへの参加の愚かさを論理的に理解し、その危うさを明確に自覚した上で、きっぱりと拒否するところまでいかなければ、日本は、この先、この厳しい世界情勢を生き抜いていくことができないのです」と主張する。
TPPの是非について、評者は、本書に接するまでは、必ずしも明確な認識を有していなかったが、本書を読んでまさに目から鱗が落ちるような感じで著者の主張に納得した。
著者の主張をまとめると、
第一に、TPP賛成論には、基本的事実認識の誤りがあまりにも多すぎる。日本の平均関税率はアメリカよりも低く、農産物に限っても、決して高いとは言えないレベルであり、穀物自給率はわずかであって、すでに開国している。日本の実質的輸出先はアメリカしかなく、アメリカの実質的輸出先は日本しかない。日本がアジアの成長を取り込むなどというのは不可能である。
第二に、需要不足と供給過剰が持続するデフレ下では、さらなる実質賃金の低下や失業増大を招くような貿易自由化政策を講じるべきではない。デフレこそが、日本経済の長期停滞の最大の原因なのであり、日本にとってはデフレ脱却が最優先課題である。貿易自由化と輸出拡大の推進は、そのデフレをさらに悪化させるものである。
TPP参加によるアメリカからの安価な農産物の流入によって、打撃をこうむるのは農家だけではない。食料品価格が下落することによってデフレが進み、日本経済全体が打撃をこうむることになる。
構造改革は生産性向上を目指すものであるが、生産性向上は物価下落をもたらすので、インフレ時はよいが、デフレ時に行うものではない。要は「政策の順番」であり、まずはデフレ脱却が先決であって、農業の生産性向上はその後に行うべきである。
第三に、アメリカは、国際競争力をもち、今後、高騰すると予想される農産品を武器に、TPPによる輸出拡大を仕掛けてきている。大不況に苦しむアメリカには、アジア太平洋の新たな貿易の枠組みを構築しようなどというつもりはなく、その余裕すらない。
TPP参加というのは、世界の構造変化もアメリカの戦略的意図も読まず、経済運営の基本から逸脱し、その上、経済をめぐる基本的事実関係すらも無視しない限り、とうてい、成り立ち得ない議論である。
農業(食料)問題については、「食料自給率の問題」(184頁以下)、「食料の戦略性」(186頁以下)、「石油より政治的パワーの強い穀物」(189頁以下)なども必読である。
「第6章 真の開国を願う」も示唆に富むもので、必読。
三橋貴明氏は、同氏に対して、元財務官僚が「デフレ、デフレ、うるせいよっ!」と言い放ったこと、元経産官僚が「TPPで物価が下がる(から推進するべきである)」というような発言を行ったことを述べているが(『売国奴に告ぐ!』)、我が国のエリート、マスコミの近年における知的劣化はかなりひどいと言わざるを得ない。
その中で、中野氏のような強力な論客が登場したことを喜びたい。
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流されずに、しっかり本質を視る眼を
2011/09/22 04:13
26人中、20人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:良泉 - この投稿者のレビュー一覧を見る
トロイの木馬。
著者はTPPのことをこう呼ぶ。
『オバマ大統領が「環太平洋で連携しましょうよ、カモーン」と言って、差し出してきたTPPという贈り物は、実は、日本の農業市場の防壁を中から打ち破るための「トロイの木馬」なのです。』
保護主義貿易などというと非常に悪いものという印象が植え付けられている。これを必要と考える者にとってでさえも、せいぜい必要悪とくらいにしかとらえられていないのではないか。
しかし、自国の産業を守る、もしくは自国の労働者を守る。さらに言えば、国家が自国の国民の生活を守る。これを否定してしまえば、では、国家なんてなんのためにある?ってことになる。国家が一部の層にだけ手厚い保護をし、多くの国民を路頭に迷わせた、そんな時代の国家が国家の正しいあり方だったなんて、誰も思わないはず。
国をあげて、世界の中でも貿易戦略を構想し、必要に応じて自国産業を保護する政策をとることは正しい。事実、多くの国でそうしている。
著者は言う。
『戦略的に考えようとする思考回路に、サーキット・ブレーカーが付いていて、あるコードが出ると、それに反応してブレーカーが自動的に落ちて、思考回路を遮断してしまう』
著者は、これらのコードを例示する。
「開国/鎖国」「自由貿易」「農業保護」「日本は遅れている/乗り遅れるな」「内向き」
多くの方に身に覚えのある感覚であろう。開国か鎖国かと問われれば、今の世界情勢の中で鎖国なんてありえない。遅れていると言われていれば、何とか変えていかねばと思うし、乗り遅れるなと言われれば、いまあわてて動こうとする。そうなると、自由貿易の害悪などというところにまで頭が回らない。一斉にTPP擁護に向かう。その中身の詳細な吟味もできないままに。
そして、そこに、つけ込んでくる者たちがいる。
アメリカでは農地価格が高騰しているという。新興国の成長に伴う食糧需要の増大やバイオエネルギーへの注目で、冷え込んだまま停滞している住宅地需要と対照的に大規模農地が投機の対象となってきている。
そして、それにつれて、当然、アメリカの、ひいては世界の穀物物価は高騰することになる。
こんなことは、これからいくらでもあることだろう。急な天候不純や国家間抗争に起因する輸出制限。そんなたびに農産物輸入価格が高騰することになろうとも、食糧自給率の極端に低い我が国では、有り金はたいても、どんなに頭を下げてでも、他国から食料を輸入せざるを得ない。
TPPは、これを加速する。
再度、本書からの引用。
『TPPの交渉に参加したとたん、日本は、アメリカが主導する外需依存国・一次産品輸出国の連合軍に、完全に包囲されるでしょう。』
TPPに賛同しているのは農産物輸出国の集まりである。そんな中に農産物輸入国日本がたった一人で乗り込んでいく。どうぞ、骨の髄まで食い尽くして下さいと言わんばかりに。
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気鋭のTPP評論。ほぼ同時期に出た『TPPが日本を壊す』(廣宮孝信)が国民生活や地方政治の観点からTPPに反対していたのに対し、本書ではマクロ経済や政治(特に外交)の面からTPPを批判しているのが大きな違いと言えると思います。
主要なTPP賛成論を次々に俎上に乗せて検証していく前半も面白いですが、一番の読みどころは後半のTPPをきっかけに食糧安保としての外交政策を考え、日本人の思考法の根っこにある「歪み」をあぶり出していくところでしょう。あまり馴染のない外交戦略について非常に勉強になると同時に、TPP問題の根深さを思わずにいられません。
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著者は経済産業省出身者。TPPが良いとか悪いの前に、総合的な判断もないままTPP加盟という方向で進んでいる現状を危惧している。そもそも、TPP加盟すると関税は撤廃されるが、日本から輸出できるような対象市場は米国のみ。米国は貿易赤字を少しでも減らす政策を打っており、そうすると、米国の輸出対象市場は日本市場ということになる。つまり、日本に加盟のメリットはほとんどないのではないか。そのような分析もなされず、“開国”などのワードで世論を導く手法を批判。また、それにより、世界に対して日本のネガティブな面をキャンペーンすることになってしまう。
世の中のゆがみ、政策の手法に対して再考するよう促すような書籍となっている。
なお、経済学の基本的な仕組みについても記述されており、経済の仕組みやデフレ脱却のためにはどうするべきか、等についても非常に勉強になった。
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マスメディアも今やTPPに大賛成。何か違和感を感じないだろうか?本当に日本のためにTPPはいいのだろうか?賛成論者にも普通の反対論者にも読んで欲しい。日本という国を守ることをしっかり考えた上でのTPP反対論がここにある!
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経済産業省から出向し、現在、京都大学大学院助教の著者が、日本のTPP参加に対する警鐘を鳴らしたもの。
本書を読み、自分でいろいろ考えても、メリットよりも圧倒的にデメリットが多いのがTPPかなと。
是非多くの方に読んでいただきたい本です。
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本の言いたいことはTPPはいらないってこと。
政治主導、外交においてのTPPの意義を考えるべきだと思う。将来のアジアで日本が果たすべき主導力は何かという点を真剣に考える時期なのでは?
アメリカに頼る貿易ではなく、将来台頭して来るアジア諸国に対してより大きな影響力を発揮できるという可能性があるなら、この変化も必要なのではないだろうか。
日本で内需がGDP8割あるのだから、輸出を積極的に進めるべきだろう。米国も輸出拡大で国内雇用の拡充を図ってるのだから、参考にすべき。
ただし最大の障害として、外国に対してプレッシャーを与えられる輸出品(例えば、石油、食料)が日本には無いことだろう。
この問題にこそ、貿易戦略を集中させることが大事だろうと感じた。
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震災のこの時期にあってなんとも問題意識としては別のものを選んでしまったなぁという気はしましたが、TPP亡国論です。
環太平洋戦略的経済連携協定の略なわけですが、戦略的と名のつくかぎり加盟各国には戦略的な意図があるわけです。では、アメリカの戦略は、東アジア各国の戦略は、そして日本の戦略はなにかとみてゆくことになります。
日本でTPPの関連の問題としてテレビで大きく取り上げられているのは農家への戸別保障でしょうか。とにかくそれぐらいであったように思います。それ以外にも外国人労働者雇用の問題は前から議論されていたようにおもいます。
とにかくTPPによって人、モノ、カネの行き来がスムーズになるとどうなるか、日本は加盟国のなかでも中途半端な立ち位置にいると、この本から読み取れるように思います。
アメリカからは、輸出産業振興のための輸出市場として、東南アジア諸国からもとにかくモノかってもらい、割安の賃金で働いてくれる労働者も送り込みたい。という意図があるのに対して日本はなにか輸出するものがあるのだろうか。他国にアピールし、連携の中で強力な価値を持つ輸出商品を持っているのだろうか。
そう考えると、今考えている以上に連携の相手国のほうが2歩3歩先の見通しを持ってこの協定をしかけているように思えます。
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本書を読むまでは、TPPはグローバル経済の象徴として、当然参加すべき、参加しないのは農業保護と選挙のため、と正直なところ考えていました。反省します。あまりにも思考停止でした。
TPPの参加国を見ると実質日米間の契約であり、既存の日本の低関税や現在の円高の状況からみると日本の輸出が拡大することは難しい一方で、アメリカからは大量に農産物が輸入されることになる。それこそ、リーマンショック後の国内経済復興を図るアメリカの意図である。
さらに、日本のデフレの現状において、低価格の商品が輸入されると、デフレがさらに深刻化する恐れがある。
日本が当面とるべき策はTPPではなく、積極的な公共投資によるデフレの克服である。
この主張について、公共投資の有効性以外については同意せざるを得ないと思います。確かにTPPは危なさそうだ。。
では、なぜこれほどまでにTPPを強引に進めようとするのか。ここからは著者の主観も入っているとは思いますが、それは、アメリカの軍事力の傘下で経済成長と繁栄を謳歌した日本の政府、経済人の多くが、変化を望んでおらず、今回もアメリカに追従することで、これまでの繁栄を維持したいという心理の表れだと。
政府、経済界、メディアのほとんどがそこまで同じ考えを持っているのかについては疑問ですが、確かにここまでTPPに同意する論調が多いと、逆に不安にはなります。同じレベルで、TPP賛成者からもきちんとした論拠をもとにした意見を聞いてみたいです。
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まず結論ありきで書かれた本。というのが第一印象。
TPPは額面通りじゃないよ、日本じゃなくてアメリカが得するように仕組まれているということを論じている。反対の理由は、ある程度論理的に構成されており、そこだけを見ると「TPPけしからん」と言いたくなる。
しかし、TPPの負の面だけでなく、利益の面や外交的インパクトも踏まえ、それらを検証して初めて、日本にとって有益か否かが決定できるはずだが、そこまで深い考察が無いのは残念。
TPPなんてやったら日本の食糧自給率が下がって大変なことになると主張しているが、現代では食料だけでなく、エネルギーも、衣類も他国との相互依存なしに成立なんてしない訳で、説得力に欠ける。
江戸時代のように鎖国して、自給自足を目指すのであればそれでもいいだろう。その先にあるグローバルな世界を見た時、自国に閉じこもる内向きの視点は、時代錯誤と感じた。
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どんな言葉を並べられたとしても、思考回路を停止させるな。
考え続けること、知り続けることを止めるな。
現在世界経済が直面している問題をわかりやすく解説して、その中で日本が果たすべき役割について提案している。
しかもその方法は、どの国にも損をさせることのない、むしろ関係するすべての国にとって望ましい結果になる、健全な方法だ。
TPPが何なのか何故騒がれているのか、新聞で読んでも分からなかったのは、知識不足だからと思っていたけど、そもそも論理が破綻していたのか。
マスコミは報道の自由を盾に個人のプライバシーをよく侵害するのに、国民に本当に必要なことは報道しない。「報道の自由」を一番軽んじているのは、マスコミじゃないか?
過剰なナショナリズムが戦争を引き起こした一因だし、ネット右翼は気味が悪い。だからナショナリズムって倦厭していたけど、安定した社会を守ろうとする程度のナショナリズムを持たなかったら、かえって対外的に攻撃的なナショナリズムを生み出してしまう。
日米関係っていったい何なんだろう。
経済学入門的な本はなんだか退屈で、最後まで読めたためしがない。けど、一般向けに書かれた経済についての本なら読めるっぽい。もっとたくさんのことを知って、この本に書かれていることが本当か確かめたい。
田代洋一『食糧自給率を考える』
『TPP反対の大義』 農文教ブックレット
『対外不均衡の経済学』 須田美矢子:編
『大恐慌の教訓』 ピーター・テミン
『経済幻想』 エマニュエル・トッド
『日本の論点 2011』文藝春秋:編
『さらばデフレ不況』廣宮孝信
『デフレとバランスシート不況の経済学』リチャード・クー
『公共事業が日本を救う』 藤井聡
『デフレ時代の富国論』 三橋貴明
『恐慌の黙示録』 中野剛志
『国富論』 アダム・スミス 自由貿易は互恵的
『食糧自給率100%を目ざさない国に未來はない』 島崎治直
『日本は世界五位の農業大国』 浅川芳祐
『2つの「油」が世界を変える』 薄井寛
『新訂 維新前史の研究』 井野邊茂雄
『学問のすすめ』 『開鎖論』 福沢諭吉
『ウェッジ』2011年1月号
『大転換』カール・ポランニー
『グローバリズムという妄想』 ジョン・グレイ
『自由貿易は民主主義を滅ぼす』 エマニュエル・トッド
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もう自由貿易反対論(+貿易差額主義)はおなかいっぱいです。
スティグリッツを持ち出してくればまだ良かったかも。
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反対本を何冊か読んだがこれが一番納得できた。
単に国内農業がだめになるー、時給率がー、安全がー、、といったことではなくて、経済の理論をわかりやすく説明し、過去の例、アメリカの戦略、政治的影響などなどを含めてTPPを反対している。
これまでは、なるようになるんだなーという感覚で、まぁ参加せざるをえないんだろうなーと思っていたけど、反対にまわりたくなった。
メモ:
デフレのときは自由貿易を推進すべきじゃない。まずはデフレを解決しておけばTPPは逆にチャンス
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TPPや世界経済に詳しくないので、筆者の論理が正しいように感じた。
この本で主張されているTPP参加に反対する根拠に反論できるTPP賛成派の主張を読んでみたい。