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昔から大好きだったドラえもん。この映画も何度も見返したもの。ドラえもんを見てるからこそわかる事、懐かしくあの時の事だ!と思い出される小説ならではのそれぞれの登場人物の心情まで楽しく読めた。次作もでてくれる事を期待!
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小説を読んで「絵」や「漫画」という表現手法のすごさを知る、そんな体験をすることになるとは思いませんでした。ドラえもんを文字で読むと言うのは斬新です。
本作、ワシの覚えている限り、ワシが最後に漫画で買い劇場まで見に行った、そして最も好きな大長編ドラえもんの「のび太と鉄人兵団」のノベライズです。
すなわち、特に漫画は小学生の当時かなり読み込んでいて、ワリと細かいコマや描写まで記憶にすり込まれています。それを文字で追体験することで、「文字だから表現できること」「絵(漫画)だから表現できること」それぞれを感じます。
もちろん、映像や漫画から知って小説を読んだ作品なんて山ほどあるのですが、それが「ドラえもん」という作品になった時、「漫画」であることが当然という刷り込みに対して、文字が新たな局面を提示してくれる。その結果、冒頭にも書いたように「漫画」のすごさに回帰するのです。
この体験だけでも貴重な読書でした。
作品そのものについて。筆者の筆致は巧みにドラえもんの世界を表現していますが、惜しむらくは「ドラえもん」というコンテクストありきで成立している、すなわち本作だけで切り取ると説明不足だったり理解困難に陥る可能性もあるな、ということ。
でもこれは言っても詮無いことでしょう。「ドラえもん」の世界観そのものを一から説明するのは、それこそ枚数に限りがないでしょうし、そんなところに「小説的リアリティ」を追求するのはナンセンスでもあります。
このノベライズは難しかったろうな、なんて感想は余計なお世話でしょうが、自分にとっても新感覚の読書でした。
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そもそも面白い話だし、プラス若干の理系要素・星野スミレとにんきひとしが絡む話。ジュドが自動修復するというオリジナル要素。
面白かった。
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北極で巨大ロボットのパーツを拾ったのび太。ドラえもんと共に巨大ロボット・ザンダクロスを組み立てるが、それは恐るべき破壊力を秘めた兵器であった。謎の少女・リルルと出逢ったのび太は、人間を奴隷にすると言う機械社会の星・メカトピアの恐ろしい野望を知ってしまう。地球侵略の危機に、大人は誰も取り合わない。ぼくたちがやるしかない! ―ー鏡面世界と言う閉ざされた孤独の世界。対峙するは幾万のロボットたち、鉄人兵団。世界の命運は、のび太、ドラえもん、ジャイアン、スネ夫の四人に、そして、傷付いたリルルを介抱するしずかに託された! 大長編ドラえもん屈指の名作を、自身も大ファンのSF作家・瀬名秀明氏が新たに紡ぎだす。ドラファンは勿論、全ての人が唸ること間違いなしの大傑作。
もう!もう!もう!文句なしの☆5です。もともと自分がドラえもんオタク(軽度の)なのも大きいのですが、やはり瀬名氏のドラ愛溢れる文章と構成と小ネタの詰め込みぶりに読めば読むほど幸せが溢れてきてたまらなかったです。
とにかく、この愛の溢れっぷりはもう二次創作か!?ってくらい。いやまあノベライズだから確かに「二次」創作の一つだとは思うけど、あっでもノベライズとはちょっと違うんだな、あくまで“小説版”だし。でもでも私が言うのは作品が好き過ぎて自分も何か作りたい! っていう同人活動的な二次創作のことで、これは多分公式の二次創作って感じだと思うのです。そもそもキャスト変更以降からのドラえもん自体がドラファンが結集してめちゃくちゃいいものを作ってる、公式による二次創作って感じがすごくするので、瀬名氏のこれもその一つでそして最高峰のものだと思います。(特にリメイクもの全般がそう言えます。勿論オリジナルもいいと思う!といっても新作はひみつ道具博物館しかまだ見たことないんだよね…汗) 恐竜や宇宙開拓史、大魔境など他の大長編のエピソードなども引用しているのでその辺もニヤッとできます。
また、ドラえもんも立派なSF作品の一つなんだなと思わせる道具の解説のところも本作の特色かも。鏡面世界でいきなりx軸y軸z軸の専門的な話とか出てきてびびったw ほか何故ドラえもんは慌てていると四次元ポケットから関係ないものを出してしまうのかと言う解説や(多分瀬名氏の考察? すごく納得したw)翻訳コンニャクを作ったのは日本人だろうと言う考察やいろいろ盛りだくさんなのですが、一つ面白かったのは、「のび太たちがいなくなった世界はパラレルワールドになってしまってそのまま残り続ける」と言う考察。なかったことにされるけど、のび太の両親が心配した時間は何らかの形で残るのではないか、っていう考察は今まで考えたこともなかったなあ… 今まで大長編でスルーしてた、誰も触れなかったことに真正面から触れ、のび太たちが鉄人兵団と戦っていた間の両親たちについても描いたのはまさに英断とも言えるのでは。これがあるのとないのとでは作品の説得力が違いますね。
読んでいて何故自分が漫画より小説を好むのかなあと言うことが何となくわかってきたのですが、漫画は絵や1コマで表現できるようなことを小説では活字で表す都合上、その分キャラクターが何したどうしたって一つ一つ頭に入っていくので、キャラクターと一緒に過ごす時間が長くなる。一緒に物語世界を旅する時間が長くなって、より密接に作品を楽しむことが出来るってことがわかったのですよ。だから私は小説が好きなのかな、って。風景描写も心理描写もとにかく秀逸なんです。のび太がどんな想いでいたのか、スネ夫がどう悔しさや劣等感を感じていたのか、ジャイアンがどういう気持ちでみんなを叱っていたのか、しずかちゃんがリルルをどう思っていたのか……それはF先生の原作でも、アニメでもどうしても伝わりきれないところですよね。それをこの小説版は全部瀬名氏の文章で書き上げてるんです。いわば瀬名氏の解釈ってことなんですが、それが全然違和感が無くて、深い考察と愛で紡ぎあげられてるんだなーって。そういう作品に触れると本当に嬉しくなりますよね。こんな作品が読みたかったんだ! って喝采したくなります。ということでここで喝采してるわけです。もう、ホント二次創作ですよ! 瀬名氏によるハイクオリティ同人誌ですよw!
原作はいま手元にないのでこないだ注文して、あとで比較してみるつもりなんですが、しずかちゃんのママが鏡面世界オイルを張ったお湯を流したり、ドラえもんが鏡面世界の入り口にした湖の湖面を燃やしてオイルを消そうとした展開は確か無かったはずなのでオリジナルですね。またオリジナルといえばまさかの星野スミレと任紀高志w スミレはまだわかるとして任紀高志が出てくるとは思わなかったw てか任紀高志はドラじゃなくてエスパー魔美だよねw ググって思い出したけどw
スネ夫がリルルの容姿について触れるところとか、人工知能学会的にはピンとくるところだったのでは。原作よりスネ夫に結構スポットが当てられてるのもいいと思いました。ジャイアンが一回だけかあちゃーーん!って泣くところも好き。あそこほんと(´;ω;`)ブワッときました。ジャイアンやっぱリーダーだなあ。それと、小説にして改めて戦闘描写を見ると、毎回地球や別世界の危機を救ってるのび太達だけど鉄人兵団は結構ヤバめの戦いだったんだなあと改めて思いました。何せ四人とザンダクロスしかいないわけだしね。圧倒的不利。ミクロスのあの思いつきがなかったら完全に負けてましたよ……それ考えると怖い。大魔境の先取り約束機の機転にも言えることだけど、この展開はさすがF先生と唸らざるを得ませんわ。あ、あとしずかちゃん助けにきた時ののび太の描写が(贔屓目かもだけど)かっこいいんだー。これは惚れますね。
なんか内容のことにあんまり触れてなくてアレなのですが、「思いやりの心」などを始めとして原作のテーマを大切に描いていて特に後半、クライマックス、リルルが消える辺りなんかはもう涙が溢れてきましたね……てか随所で涙ちょちょ切れまくりだったんですけどもうもう! 引用したいところも多すぎて何が何だかわからなくなってきたのでこの辺で切ります。ブクログレビューでも伝わりきらないこの作品への絶賛ってことで。これ読んでないドラファンはすごうく損してると思いますのでぜひぜひ! 厚さなんて全く気になりません!むしろもっと厚くてもよかった! 小説版がこれだけなんてもったいないので他のも瀬名氏に書いてもらいたいです! 別���作家さんでもいいけど出来れば瀬名さんに!
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瀬名さんの想いが伝わる「ドラえもん」オマージュ作品。いつまでもどこまでも、瀬名さんは少年期のロマンチストだ。
「八月の博物館」を思い出した。
そして、「ドラえもん」はやはり日本の誇りだ。
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コミックの版の完全なノベライズです。
瀬名英明がところどころでドラえもんトリビアを入れてくるし、秘密道具に科学的な根拠を与えようと、小難しい科学話を挿んでくるしで、結構楽しいです。
はっきりしているのは、これはマンガを知らない人が読んでも全く面白くないということ。
『のび太と鉄人兵団』が大好きな人は、その魅力を記憶から掘り起こしながら、新たな魅力を発見できると思います。とてもオススメです。
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131:瀬名秀明さんがドラえもん映画のノベライズをなさったらしい。そう口にした私に対し、事もなげに「持ってるよ」と言った友人の頼もしいこと。こころのともよーー!!
というのはさておき、旧バージョンしか見ておらず、そしてろくにその内容も覚えていないという私にも十分楽しめる出来でした。喋り言葉に多少違和感はあるものの、ドラえもん世界が熱く真摯に描かれています。映画版のジャイアンのカッコよさ、のび太のナイスガイっぷりも健在です! ジャイアンに泣かされたというのは公然の秘密。
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大の藤子ファンでもある小説家の瀬名氏が力を振り絞って執筆したことがよくわかる労作。藤子ファンでも安心して読める……というよりファン必読。号泣必至。
ノベライズの鑑。元の作品をよく知りもしないで書かれたノベライズにありがちな「なにもわかってない感」や「違うキャラになっちゃってる感」も皆無で「細部の設定の整合性がとれなくなってミモフタもなくなっちゃう」心配もない。
原作漫画では省略されていた部分や、映画では描ききれない各人の心情、科学技術や鉄人兵団に対する考察などがとても詳しく描かれている。『のび太と鉄人兵団』という作品は、原作漫画を核として、アニメ映画にこの小説を加えた三位一体で完全形となったのではと思えるほど。
前半だけを読んで長く続く情景描写に退屈してしまった人にも、とりあえず154ページ目までがんばって読むことをお勧めしたい。そこから先は緊迫していく展開も相まって最後までぐいぐいと読めてしまうのではと思う。
意図的に難しい漢字や表現を使っている部分もあるが、ふりがながあるので子供が読んでも勉強になっていい。
以下、気になった箇所の覚え書きや感想を列記する(ネタバレ注意)。
P.14 のびドラの関係性を1ページで説明。未来に帰ったくだりですでに涙する僕。
P.28 のびドラがママ達が食べ終わるまでテーブルについていたり、食器洗いを手伝ったりするくだり、裏庭を見られないためにはとても自然な上にほのぼのとするのでとてもいい。
P.53 のび太のママが昔「癇癪玉の玉子」と呼ばれていたというくだりはダイヤの話の描写からすれば納得。「小動物の愛らしさが理解」という描写は実際にペットに愛情を示すようになる短編があるのでそのくだりを取り入れているのだろう。芸が細かい。
P.56 22世紀の技術でもこんなに大型な機械の水平制御はできないという話、疑問が残る。コックピットだけ水平に制御することはできそうだし、そもそも4次元ポケットのように次元を操る技術があるのだから重力を一定に保つことくらいできそうなものだ。しかし、かべ紙の中で新年会をしたときのトイレでのスネ夫の惨状を見るにつけ、重力制御ができていないのは確かなような気もする。コーヤコーヤが出てくるのが嬉しい。
P.66 「五人がばらばらになるときがやってくるなど、誰も思いはしなかった」の一文だけで号泣。皆が大人になったときにドラえもんがいないことは確かなのだ。
P.98 こちら側の世界を雨にしたことでシーンの緊迫感が増してよかった。
P.110 次元震の迫力はやはり原作漫画が一番。大げさに怖がらせるための描写を増やしてしまうと、シーン特有のスピード感が失われてしまうし、小説だと難しいところ。
P.117 「ママが昼ごはんを呼びに来たような」という描写。描かれることはないが、ドラえもんは普段、毎日のようにママと2人で昼ご飯を食べているのだなぁ。食事の回数で言ったら、のび太よりもママとのほうが多いのだなぁといったことに気づかせてくれる。2人でいつも何の話しながら食べてるんだろう?
P.119 ジュドの頭脳が��マ、のび太、悪人、ドラえもんの声色で喋る設定が上手い。カタカナで長文を喋らせるとどうしても読みにくくなるし、このほうが不気味さも増す。おそらく、もともとはこのシーンの最後のドラえもんのバカ笑いだと勘違いさせるくだりにもっと説得力を持たせる意図で取り入れられた手法なのだろうが、それも見事に成功している。
P.123 「マジだぜ!」のセリフもそのままあってうれしい。だが、これがCMのパロディだと知らない人は、いきなり毛色の違う喋り方をされて戸惑ったり、誰のセリフだかわからなくなったりしたのではないかとちょっと心配。
P.127 ジャイスネに相談しにいくことを話すくだりは、もっと「どうせだめだろうけど一応」感を出す描写にしないと、ジャイスネが信じてくれたときの感動が薄れてしまうのでもったいない。
P.137 「いつも静香が使っているであろうハンドシャワーの先端部が、小首を傾げてのび太たちを見下ろしていた」という描写が素晴らしい。原作漫画は記号的な絵で描かれていることもあり、お風呂のシーンであってもわりとさらっと描かれているのだが、こういう色艶を感じさせる描写ができるのも小説ならではだと思う。思春期の少年というものは、好きな女の子がいつも入っているお風呂に足を踏み入れただけで色々と妄想が膨らんでドキドキするものなのだ。原作漫画の同シーンは枠の外からあくまでも演劇を見ている感覚だが、このシャワーの小首を傾げた描写を読んだだけで、実際に浴室に足を踏み入れてシャワーをちらと見たような気分が味わえる。
P.154 なんとスミレ登場! 今までがかなり原作に忠実な描かれ方だっただけに意表をつかれて驚いた。大人はわかってくれないという描写を出したあとでの「わかってくれる大人」の代表としてのスミレの登場はとても心が踊る仕掛け。
P.166 本作の見せ場のひとつであるのび太と静香の抱擁シーンが実にドラマチックに描かれている。原作漫画を読み返すと意外とあっさりした印象なのだが、僕自身も小説で描写されている「ふだんは頼りないと思っている同級生の少年に頼もしい男を感じる」というしずちゃんの心情を自分の心の中で大いに想像していたので、まさにそれを文字にしてくださったという印象。素晴らしい。原作漫画にあったのび太がちょっとしたエロさを見せる描写は割愛されているが、それはそれでいいのではないかと思う。おそらく、瀬名氏はその要素もうまく盛り込めないものか試行錯誤はされたのではないかと思うが、きっと文字だけで入れるのには無理があって、せっかくのいいムードがどうしてもぶち壊しになってしまったのではないだろうか。
P.172 源家の浴槽の湯をママが抜くシーン。その後お風呂がどうなったのかは昔から気になっていたので、はっきりとした形で描写されたのはうれしい。そして、これもラストへの伏線になっているわけだ。
P.175 リルルを壊せと主張するスネ夫と皆の議論が詳細に描かれていて素晴らしい。「ほかのロボットは壊すのに」「かわいい女の子の姿だからそう思うだけ」「そうしなきゃぼくらは死ぬ」「奴らはリルルを作るために人間を解剖したのかも」というスネ夫の主張はどれも鋭く、ドラが言うように「筋が通って」いて見事。
P.178 そこで、「ドラえもん、おまえが決めろよ」というジャイアンもカッコいい。今対立しているのは静香とスネ夫の意見。おれはバカ、のび太もバカだし情にもろいから冷静な判断は無理、だからドラえもんが決めるのが一番いい……という、こちらも筋が通った考え方。組織のボスとは「誰に決定権を与えるかを決める人物」であるならば、やはりジャイアンこそ真のボスたる素養を持っているのかもしれない。
P.183 鏡面世界では分子構造も逆になって味がなくなったり毒になったりするという話が面白い。それは未来科学によって解決されているという話だが、分子構造が逆になっても成立し続けられる世界が出来上がる(鏡面世界人がいたとすれば、彼らはそれらの食物をおいしく食べられる)という考えにした方が未来人の操作が加わっていない世界といえるのでロマンがある。ただ、そこにのび太たちを行かせて安全に食事をさせるためには、鏡をくぐるたびにのび太たちの分子構造も逆になる(鏡面世界の秩序に属した構造になる)といったしくみにしないといけないのでややこしいのが難点。しかし、鏡面世界では自動運転されている機械はそのまま……とのことだが原発などはどうなっているのだろう。鏡面世界を作って数日後には、原発が次々と爆発して目も当てられないような酷い世界になってしまうのだろうか。そうならないための安全装置として原子炉をゆるやかに自動停止させるしくみがはいりこみミラーなどには付いているのだろうか。
P.185 ドラえもんの映画主題歌が100年後にも歌い継がれているという設定。だからみんなで、心をゆらしてなど、各映画の主題歌名がさりげなく(?)散りばめられているファンサービス。
P.198 「機械の考えることなんてわからないよ」ともっともらしく語るドラ。「あんたも機械だ!」「わかんなきゃダメ!」と一斉にツッこむ読者たちを想定して書かれたものだろうか。
P.209 深夜にミクロスの整備をするスネ夫のシーンが泣ける。ミクロスが現代技術でも作れる自作パソコンのような感覚で描写されてるのもいい。
P.210 家を空けてもタイムマシンで5分後に戻れば大丈夫……という方法について、それがよい解決策でないと思索するドラ。タイムマシンでもどったときに並行世界が生まれてなかったことに……と語られているが、実際は鉄人兵団のオチは並行世界方式を採用していない。この矛盾点を解決するためにわざわざ並行世界の話題を出した(小説版ではオチで並行世界になるようにする。クライマックスで4人は1人ずつ死んでいくか、無様に生け捕りになっていき、このような悲惨な結末に終わった並行世界も確実に存在するのだということを見せるという手法にした)のかと想像していたが実際はそうでもなかった。ラストで生まれ変わったリルルが「なぜか」地球旅行にやってくる理由を「残像のような形で記憶が残っていたから」という理由で説明したくて入れたくだりということだろうか。
P.212 押し入れで一緒に寝るのびドラ。ベタなシーンだが泣ける。ドラえもんは実はリルル側のロボット……という点をもっとクローズアップしても面白い話になるとは思うのだが、それでは鉄人兵団vs地球という図式がぼやけてしまうので、このように一言触��る程度でいいのだろう。
P.214 皆は誰かと一緒にいるのに自分だけが孤独……と気づくジャイアンのシーンがいい。ここで巨神像やペコが出てくるのもうれしい。
P.216 改造されたザンダクロスの脳の自動修復機能が働くようにした設定追加。緊迫感が増していい。
P.230 自分がふしぎ! ファンサービスになるうえ、リルルの心情描写として取り入れるのに最適な言葉。
P.232 鉄人兵団という話を映画原作として考えたときに不満なのは、ザンダクロスが結局あまり活躍しない点。「巨大ロボットものをドラえもんで」というのであれば、ぜひともクライマックスで巨大ロボット同士の格闘を見たかったと思うのだ。大スクリーンにも映えるし。もちろんそれがドラえもんという作品の本質ではないことはわかっているのだが、そういった派手な要素もおさえたうえで本質を描ききることができたほうがより面白い作品になることは確か。そんな皆の思いを見透かしたかのように、敵ロボットがそれほど巨大ではない理由がドラの口から語られる。曰く、あまり巨大なものはワープさせられないからだそうだが、ザンダクロスの組み立ての簡単さから考えれば、もう数体の「戦闘用」巨大ロボットをワープで送り込んで組み立てるくらいはわけなさそうに思えるのだがどうだろう。ちなみに、巨大敵ロボットが原作に登場しないのは残りページ数の都合か、カッコいい悪役ロボットをデザインする暇がなかったからかどうなんだろう。
P.240 破壊される皇居(宮殿)。ゴジラでも破壊したことのない皇居を燃やしてしまうこの豪放さ。これはゴジラ映画批判を汲み取ったからかもしれないし、タブーへの挑戦という面もあるのかもしれないが、これも鏡面世界という素晴らしい設定だからこそできたのかもしれない。さらに、皇居まで破壊しておけば、後で破壊される世界各国から文句を言われることもないでしょう。
P.245 三角錐のタワーってなんだろう?と思ったがスカイツリーのことだった。昭和人間まるだし^^;
P.260 しずちゃんの部屋が鉄人兵団に襲われるシーン。原作には影も形もないわけだが、なんとも大迫力でこの作品で一番のハラハラドキドキする見せ場になっている。(まさかそんなことはないわけだが)皆がもしかしたら死んでしまうのではないかと思うほどの迫力。鳥籠の中にいる小さくなったリルルがよりはかなく、それを守るための動きがより緊迫感をあおっている。鳥籠をキャッチして「ドラえもん! キャッチしろ!」と叫ぶジャイアンが頼もしすぎる。しずちゃんの家が破壊されてしまう虚しさもいい。
P.272 しずちゃんの家に置いてきてしまった靴をドラえもんが新調してくれたというシーンがいい。作品全体で靴の所在にこだわっているのがうれしい。漫画だといつの間にか履いているだけだったりするわけだが、靴にこだわることでより現実感が増している。
P.277 結局僕は弱虫だからといった内容のミクロスのセリフは、大魔境の主題歌「だからみんなで」からか。
P.282 スペアポケットをリルルしずかの連携で見つけるようにしたくだり、より緊迫感が増していい。
P.291 タイムマシンを静香ではなくリルルが運転するようにした変更は、より無��をなくすためかと思いきや、ラストシーンで博士の機械を操縦することの伏線だったとは。とても色々と考えて執筆されているのだなぁとつくづく。
P.293 スミレの映画オールナイト! これはドラえもん映画オールナイトにかけたうれしいファンサービス。
P.296 メカトピアが虫の楽園だったという設定は目から鱗。原作にも取り入れればよかったのにと思うほど。
P.299 ジャイアン〜〜〜〜! 全作品を通じて一番のジャイアン名場面じゃないかというシーンの誕生。「少しは考えろよ!」とジャイアンに詰め寄るスネ夫もとてもいいが、「おれが、何も考えてないっつうのかよ!」「おれだってな、スネ夫、おまえみたいに泣きわめいて、みんなに当たり散らしたいんだよ! おれだって恐いんだぞ! かあちゃんって大声で泣きたいんだぞ! でもな、おれがそうしたら、おまえら全員ばらばらになっちゃうじゃんかよ! 誰かどっしり構えてないと、ひとつになれないじゃんか! だから恐くてもずっと我慢してたんだぞ、それがわからないのか、ばか野郎!」と言った後に「かあちゃーんっ!」と叫びながら号泣するシーンは、思わず長く引用してしまったほど泣ける。この小説版では、スネ夫の存在感も素晴らしく、情けなかったり鋭かったり操縦したりと様々な活躍を見せるが、このシーンは、4人の中で一番の頭脳を誇るスネ夫よりも普段はただのわがままな暴れん坊にしか見えなかったりもするジャイアンの方がずっと大人だったのだということを、読者にこれでもかと言わんばかりに突きつけている。こんな特異な状況に置かれたときに泣きわめくのは誰でもできる。周囲の状況をしっかりと見極めながらただ我慢してどっしりと構える。なんとも昔のガキ大将っぽい大人な姿ではありませんか。
P.307 原作の「競争本能をうえつけたのが間違い」といった話を一歩進めて「競争がないと社会が腐敗する」「理想は人をだめにする」という話にまで踏み込んでいる。これは漫画原作がソ連崩壊前に描かれたのも関係するかもしれない。
P.309 第2のサプライズゲスト任紀高志! エスパー魔美を読んだことのない人にはなんのことやらだろうがファンは嬉しい。
P.325 イエオン、バンダムもファンサービス。うれしい。
P.327 松明を掲げたドラえもんの見せ場痺れる。最後に主人公らしい活躍。松明を投げた先には爆発物でもあるのかと思わせて、湖面の油膜を燃やすためだったという仕掛け。実に見事。
P.342 皆が3日間行方不明だったことにしたのは、ラストをより感動的にしたのでとてもよかったのだが、中でも随一はやはりしずちゃんとパパのこのくだり。のび太の結婚前夜を知っているとより深く楽しめるシーンに仕上がっている。リルルとのつらい別れを経験したまだ幼い静香の心を癒してくれたのは、両親だったのだということがとてもよく想像できる。家を空けていたことすら両親に気づかれず、リルルとのことを1人だけで消化しなければいけなかったとしたらさぞかし辛いことだろう。しかし、この小説版では両親は子供達が何か凄いことをやってきたということだけは理解しているのだ。それだけでどんなに心強いことだろう。
P.353 謝辞に知っている方の名前が出てきて驚いた。今度機会があったら裏話を伺いたいものだ。
*関連リンク
●〈瀬名秀明「ドラえもん」「鉄人兵団」インタビュー〉(エキサイトレビュー)
http://www.excite.co.jp/News/reviewbook/20110328/E1301152398677.html
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この春公開されたドラえもん映画「新・のび太と鉄人兵団」にあわせて、企画された小説です。ノベライズは、「パラサイト・イブ」の瀬名秀明。彼自身ドラえもんマニアということで、映画では説明し足りなかったところを、うまく補足し、さらに自分自身でオリジナルストーリーを作り上げて、原作の世界観を損なわないように、また矛盾点がうまく説明できるように描いています。文字もそれなりに大きく、ふりがな付きなので小学生でも高学年なら問題なく読み進めていけるでしょう。
特に、科学的な部分で時折相当にマニアックな記載があります。例えば、「逆世界入りこみオイル」と「おざしき釣り堀」で作った鏡面世界の記述では、「鏡を境界面として、奥行きだけが逆向きになった世界が果てしなく続いているのだ。すなわち鏡の平面に垂直なベクトルだけがあべこべになった世界である。慣性質量と重力質量を持つ知性体は、そうした鏡面に向かい合ったとき、奥行きではなく左右が逆向きにあった世界と錯覚して周囲を認識する普遍的特徴がある。地表に立つ知性体は天体の重力を無意識のうちに感じ、天体の中心に至るz軸ベクトルをつねに新体制として確保しており、一方その主体は移動知と感覚知を持つがゆえに、おのれの進行方向を、あるいは視線などで注意を払う方向を、やはり無意識のうちにx軸として捉える傾向があるからだ。よって鏡面世界に入り込んだ知性主体に残された余剰のベクトルはy軸であり、彼らは左右があべこべになったものとして世界を認識する。これは知性主体がどのように設計、制御されていようと、共通して起ち現われる主観である」(p89)などということがさらっと書かれています。だけど不思議と全く違和感なく作品の中に溶け込んでいる。それほど的外れなことが書いてあるとも思われず、わかったような気になり、満足感を覚えます。瀬名秀明の手腕にのせられていると言うべきでしょうか。最後まで映画を見ているようにビジュアルな光景が目に浮かび、わくわく、はらはらしながら最後まで読みました。とても面白かった。満足しています。
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想像していた、SF設定(タイムパラドックス、ロボットの自我?の葛藤など)の詳細化みないなことはなかった。
なので斜め読み。