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紙の本
極めて王道な展開故のヒーロー&ヒロインの面白さ
2011/06/24 18:00
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:DSK - この投稿者のレビュー一覧を見る
4月に出版(おそらく3月には脱稿)しているせいか、岐路に立つ若者の“選択”が描かれている。提示された選択肢を受け入れるか否か、あるいは選択肢の無い提示への諦念と葛藤。ある意味では実に本シリーズらしい青春っぽさを感じた第13巻である。
どちらかというと前半は前向きな選択肢についての話なので、読んでいても気楽さがある。新たな旅立ちは仲間との別れを伴うもの。しかし、誰もがいつまでもその場にいる訳もなく、誰もがどこかへ旅立っていく。失うものもあるけれど、新しい世界では新たな出会いもある。そんな普遍的な選択肢の中で自らの進路という未来を迷う理刀が描かれている。しかし、これは選択の余地もなく絶望的な未来を示されたキュートとの対比である。
キュートの素性が与える要因によって無理矢理に仲間との距離を変えられてしまう後半は哀しみに彩られている。これがまた実に王道中の王道と言う他ないほどベタなメロドラマの様相を呈していくのだが、これにより理刀というヒーローとキュートというヒロインがお互いの役どころを引き立てることとなる。まぁ、よくよく考えれば、過去に魔族の姫君が宿した使命を何故にその眷属が今になって請け負わねばならないのか、という素朴な疑問も発生するのだが、このシリーズもようやくクライマックスへ差し掛かってきたとの感慨も芽生えるアツい展開とも言えよう。毒舌丸の本当の正体も明かされている。
しかし、絶望的でやるせなく哀しい宿命から逃れようとの意気込みを打ち砕く、まさに一難去ってまた一難という究極の“選択”が最後に提示される。どちらに転んでも同じ結果を招く理不尽な選択肢からも逃れる術はあるのだろうか。
余談だが、後半に出てきた自称“上流竜属”が面白い。いつの間にか定着した決まり文句が実にナイスなタイミングで発せられて笑いを誘う。哀しい局面を1人(1頭?)で和ませてくれたお茶目さんの今後の動向にも注目したい。
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