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ヒュペルボレオス極北神怪譚 みんなのレビュー
- クラーク・アシュトン・スミス (著), 大瀧 啓裕 (訳)
- 税込価格:1,320円(12pt)
- 出版社:東京創元社
- 発行年月:2011.5
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文庫
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紙の本
非ユークリッド的幻想
2014/10/28 23:54
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投稿者:SlowBird - この投稿者のレビュー一覧を見る
現代の人類文明とは異なるらしいヒュペルボルオスなる世界は、魔術が幅を利かせるアナザーワールド風だが、作品を追っていくうちに、現代世界と氷河期をはさんだ過去に存在した世界であったことが分かってくる。そこには古い人類と、古い文明と、古い神々がいる。そしてまた、人類以前の知的生物と文明と神々が残っている。その古さはどんどん遡っていくことができて、ついには人間には耐えられない混沌が口を開けて待っている。
魔術師や、王や盗賊たちも、魔的なものを利用しようとしながら、人間の目には見えずに世界に遍在する、得体の知れない魔物たちの世界に引きずり込まれていく。おそらくそれらの一つ一つは、理論的根拠も物理的実態も備えているのだが、ただ我々の感覚や魔法、科学を超越しているところにあるが故に恐怖を感じるのだ。
ことにそれらの存在する空間、支配する力学自体の異質さは、非ユークリッド幾何学的世界であることも暗示されているところに現れている。この発想は斬新であるとともに、世界の始源まで遡る幾時代もが並存するとしたら、必然であるのかもしれない。そしてこれらの物語の発する非日常性の根源も、踏みしめるべき大地が不安定でどこへ向かっているか分からないところかもしれない。
アトランティスを舞台にした作品でも、その失われた文明は、太古の文明と現代を繋ぐ位置付けにあり、その記憶を受け継ぐための足跡を残してくれている。ただ一作、沈み行く大陸から脱出するために宇宙船を作って、金星に向かう話が意表を突く。異世界を描くインスピレーションはウェルズ風でもあり、その世界に人間が変えられていくところはレムや眉村卓のようにも思えて、人間中心の世界感から早くも離れてしまっていることに独自性がありはしないだろうか。
異なる文明の神々、異なる種族の神々、多重化された世界創世と造物主の物語、そこから生まれる価値観や道徳律もまた、人間世界を相対化していく作者の営みであろう。人物達がいつも魔術なり科学なりの限界に挑み続ける禁欲的な姿勢でいるのも、その作者の厳しい決意の現れではないかとさえ思えてくる。
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