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1993年に刊行された同書の新装版です。原発の仕組み、事故はどう起きるのか、被害の影響をわかりやすく解説されていますが、個人的には高校の物理の教科書を併読したほうが、より深い理解が得られると思います。
これは、本人による著作、というわけではなく、筆者が行った公演に加えて、後で解説を付け加えたもの、と解釈したほうがいいでしょう。しかし、これは新装版で、この本の元になったものが1993年に刊行されているということに衝撃を受けました。ここに書かれている段階では、あくまで『予測』という形で描かれているのですが、破局的な大事故が『すでに起こってしまった』という観点からこの本を読んでいくと、その先見性に、改めて恐ろしいなという思いを抱くとともに、
3.11にいたるまでに日本国内で起こってきた事故のほとんどが『想定外』で片付けられてきたという事実や、その他もろもろのことが、この本を読んでいると明るみに出てきて、この人の言っていることをもう少しまじめに聞いてさえいれば、あそこまで破局的なことは起こらなかったのでは?という邪推を抱いてしまうのは、きっと僕だけではないと確信しています。
しかし、この本は物理の知識、少なくとも高校くらいのものがないと専門用語や単位の説明におそらくついていけないのでは?という考えが一方にはあって、僕は高校時代、物理の授業を受けていなかったので、そのときの報いが今頃になって現れてきたのかという後悔をこの本のページをめくりながら痛感してしまいました。この本には『国策』の名の下にこれまで明かされていなかったことが書かれていると思いますが、今、改めて日の目を見ることになったことに、うれしい反面、複雑なものを感じております。
できることなら、高校の物理に関して、やさしく解説されたものを読んでから本書を読むことをお勧めしますが、それなしであたっても得るものは大きいと思います。しかし、ここに書かれているようなことがまさか本当に起きてしまうことになるとは、すでに他界されている筆者にしてみれば、どういった思いで、現在の日本を見つめているのでしょうね。