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改行もなしに延々続く異様な文体は主語を「われわれ」としてしかも語り手が時折錯綜する。しかしその語りの直線的な複数性、とでもいうべきものがエピソードを展開する様がすごい。あるいは複数的なものをすべて直線のうちに包摂してしまっているからなのかもしれないけれど、それぞれのエピソードが爆発しながら次の起爆剤になっていくこの感覚は、絶対に一度体験しておきたい未知の面白さである、と思います。
海が持っていかれたり生きながらに腐っていく人間がいたり幽霊のようにさまよう姿で大統領を誘惑する女がいたりと超現実的なエピソードが混在する中で、極悪非道な大統領が翻弄されているように見えてくる、その巧みさ。大統領に感情移入させるという倫理意識にもしびれますけど、その倫理意識をこうやって表現することができたのか、というのにもまたしびれます。やっぱり最大公約数をうまくつかむっていうのは大切なことで、そのつかみ方も一つの面白さ足りうるのだなあと。
それにしてもすさまじいまでの自由。
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本の帯から推測して、自分はこの本を、独裁者自身の傲慢さによってもたらされた孤独、哀れさとかを予想して読み始めましたが、予想を上回る孤独で哀れさがあって恐怖しました。
大統領は元々、民の一人ひとりを知っていたりと「大統領」というより、よき「族長」という感じだったようです。それが、仕方ない理由、運命に流されて、民に憎まれるようになり、信用できない部下たちと権力に守られるしかなかった、というより、囚われています。
唯一信用できる母も死に、惨めな様を晒す大統領の姿は見ていられません。
ただ、マジックリアリズム?の表現と大統領の妄想の区別がつかないのが残念です。
例を出すと、大統領は民の一人ひとりを記憶していたり、最期のシーンで
病人を治したりとありえない事が起きました。が、自分が気になるのは大統領の友、ロドリゴ将軍が裏切っていたと分かったシーンです。
疑心暗鬼、妄想にとらわれた大統領が無実の人間、友を殺したシーンとも思えますが、終盤の方に、
大統領に媚びていた(違う表現だったと思います)ロドリゴ将軍 という文が出てきます。読了した後も、本当に裏切っていたのか、裏切っていないのか今でも分かりません。
しかし、孤独に沈んでいく大統領の姿、見事に表現されたラテンアメリカ、もっと読まれるべき面白い小説と言うほかありません。
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権力の破綻、独裁者の孤独。
舞台は南米、軍事力にまかせた独裁政権のもとにある、とある架空の国。
視点というか、語り手のいったりきたりする、独特の文体です。主人公である独裁者本人の言葉によってその場面が語られたかと思ったら、突然その続きをそのままほかのキャラクターが語りだしたりするんですけど、そのときに章立てや場面転換を示す空行などはありません。というか、改行さえなく、なんの前触れもなく語り手がつぎつぎにスイッチ……というより、錯綜している。話の時系列的にも行きつ戻りつ。過去と現在、願望と現実のあいだをめまぐるしく行き交って。
独特の文体です。かろうじていくつかの章にわかれているけれど、段落変えというものが、いっさい存在しません。ページをひらくと文字がぎゅぎゅぎゅっと詰まり、そのあいだを読点が小刻みに分割しています。
そのうえに文脈もめまぐるしく移り変わり、一文のなかの語順さえ倒置されていて、読んでいてとまどう箇所は多数。人はどんどん死ぬし、悲惨な事件はばんばん起きるし、主人公は絶えず不安と孤独にさいなまれているし、とっつきやすい小説とはいえません。
が、美しい。
独善、虚栄、猜疑、欲望……。見たいものだけを見つめ、己を鏡に映すことをしらず、奪うことしか知らない、子どもじみた、独裁者。孤独に怯え続け、醜く老いた哀れなひとりの男の物語です。
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南米のとある国の独裁者の盛衰。ハゲタカが大統領府の建物へ飛び込んだのをきっかけに、人々が足を踏み入れたが、そこは廃墟と化していた。そして大統領と思われる男の死体が。ヨーロッパの占拠から独立し独裁者となった男とそれを取り巻く人間達、様々な視点、時間軸を交差して大統領の姿が描かれます。
大統領と影武者、親友の将軍や本妻、母親。大統領の名前は最後まで出てきません。傀儡としての孤独な独裁者。
終わりから終わりへ。誰も信用できない、自分ではどうにもならない、なのに言った事は全て命令として実行され、次々と死者の山が築かれてく。
色彩のイメージも強烈で、なかなかどっしりお腹いっぱいな作品でした。
時間をおいて、また読みたい。
補足。大統領府とは大統領官邸みたいなものかな。政治機能のある施設とは別になっているようです。
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百年の孤独よりも,もっと湿気が高くて空気が濃い感じがする.読むのにはかなり我慢が必要だったが,一見,互いに関係ないように見える過去の出来事の羅列から,ぼんやりと,そして段々はっきりと,孤独な独裁者の姿が浮かび上がる.全然関係ないが,昔読んだ猪瀬直樹の「ミカドの肖像」を思い出した.
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まとまった読書の時間が取れなかったといえ、読み終えるのに一カ月弱かかってしまった。
まず驚くのは、300ページ以上の本でありながら、改行がたったの6回しかないこと。
そして連なる怒涛の破天荒エピソード。
本の帯の宣伝文にはまるで大統領が悪逆非道であるかのように書かれていたが、全然そんなことはなくて、むしろ大統領がカワイソウになってくる…
本当に心を許すことのできた唯一の人物である母親が亡くなり、生き返ったと思ったら剝製だったなんて… マジックレアリスムだから人が生き返るのも別に不思議じゃない、なんて思ってたら剝製かよ!酷いよ!
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初めてのガルシア=マルケス作品だった。独裁者とその周辺の人物が織り成す摩訶不思議な物語。周辺の人物は、配下の将軍などの兵卒を始め、市民、正妻、影武者そして母親。いずれも一筋縄ではいかない性格と印象的なエピソードの持ち主たちだった。特に、ある部下のひとりが謀反の疑いをかけられた末、こんがりと焼き上がった宴会料理として供されるシーンは印象的だった。
みながみな独裁者を恐れ服従しているのではなく、むしろ彼の権力を利用しおこぼれを頂戴しているのはショックだった。が、絶対的な権力は存在しないというメッセージもなるほどという感じだった。
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作者は現実とは隔絶された完全なファンタジー(例としてディズニーが挙げられていた)は書かないスタンスらしく、そうであるなら風変わりな登場人物達も理解できそう。
大統領も、その部下も、母親も、特定の個人というより抽象化されたもので、ラテンアメリカの現実と作品とを見比べることでその意味がより深く感じられると思う。
知識が足りず消化不良なので改めて読みたい。
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独裁者小説。起きてることがいちいち凄まじい(あまりにも酷いのでブラックジョークとしても楽しめる)。推定年齢100~200歳以上、政敵をワニに食わせて、側近をディナーのメインディッシュにしてしまう大統領とは何者か?本書の最後数ページは何度でも読み返したい。
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とてつもなく長いのに、そして内容も分かり辛いに、文章が綺麗だと感じた。例えがなるほどなと感じるものも多い。
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所詮彼は奸智蠢く「大統領」の器ではなかった。
むしろ「部族長」の器だった。
残忍で甘えん坊な人間臭い人。
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2012年11月の課題本です。
開催日 : 11月18日(日)受付開始16:00 読書会16:30~18:30
ドレスコード : エスニック
お申し込みは下記HPからお願い致します。
http://www.nekomachi-club.com/
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南米文学らしい頭がぐるぐるする感じ。あんまり細かく読まずに勢いで読む方がよい。遠いときを見通すようなそんな感覚を抱く。百年の孤独より登場人物は多くないが、しょっちゅう視点が変わるため、読みにくい。
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GUEST 037/作家・筒井康隆:スミスの本棚:ワールドビジネスサテライト:テレビ東京 http://www.tv-tokyo.co.jp/wbs/blog/smith/2011/07/post115282.html
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魔術的リアリズムって要は噂に背びれ尾びれのついた世間話をいかに小説として読ませるかだよな、というのが読了直後の感想。滅多に姿を見せない年齢不詳の独裁者とくれば、そりゃ民衆の噂話の格好の的だろう。影武者が亡くなった後の大統領のエピソードは全て民衆の妄想話だったとしても何もおかしくはない。それにしても睾丸のヘルニアといいやたらと出てくる糞や小便の話といい、ラテンアメリカの気候と合間って、一切の改行を廃した文章からむせ返るような強烈な匂いが立ち込めている。最後の1頁を読み終えた時、ようやく夏が終わるのを感じた。