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■1.「出会い系サイト」と「出会えない系サイト」のビジネスモデルの違い
まず「出会い系サイト」のピジネスモデルは、「本当に出会える」という環境をつくり出すことで、課金ユーザーを増やすというものだ。そのためには、優良なユーザーに長期滞在してもらい、他ユーザーに口コミで宣伝してもらわなくてはならない。もちろん「騙し」はご法度で、風俗店や裏デリなどの「業者」の書き込みを極力削除するための監視体制も必要となる。(中略)
一方の「出会えない系サイト」のビジネスモデルは、サクラを用意し、あるいは自動返信プログラムを用意し、男性ユーザーを釣って、ほいほいと課金させてからしらばっくれるというものだ。
■2.エロ雑誌は中高年向けメディア
――ビデオ情報誌の場合、サンプルが見られなかった時代に、購買者がカタログ代わりに雑誌を買うという、「情報の格差」があったことを前提にしたビジネスだったものが、ネットで簡単にサンプルを見比べられるようになると、その優位性が失われていったと。
まさに情報格差ですよね。それをビジネスに利用していたんだけれど、気づいてみると、デジタルデバイド、情報弱者と言われている人たちが、どんどん高齢化していく一方で、しかも減少していった。エロに限らず、コンビニ誌なんかの購読者年齢を訊くと、みんな平均40歳以上とかなんですよ。(中略)
今は基本的に、エロ雑誌は中高年向け、パソコンが使えなかったり、家族共有だったりする老人向けのメディアになりつつある。
(『オレンジ通信』元編集長・石井始氏)
■3.ビデオ情報誌衰退の理由
それからもうひとつ大きい理由があります。それは、ビデオメーカー自体が雑誌を始め知めちゃったことです。たとえば北都系(CS系)でいえば『DMM』という雑誌。(中略)
それからソフト・オン・デマンドのグループだって『月刊SOD』を、雑誌コードをとってカを入れてつくっている。(中略)
そしてなにより、ビデオメーカーグループ系の雑誌というのは、それ自体の売上で成り立たせようという発想がないのが強みですよね。『DMM』『DMMぺっぴん』は290円、『NAO』は350円。しかもDVD付きです。
(同上)
■4.ネットに力をいれていないエロ本業界
そももそも多くのエロ本は、ウェブ上でのアピールにそれほど関心がないようにも思え、公式サイトすらないものが多い。ウェプでチラ見せして購買させるというような、フリーミアムモデルを採用している出版社がほぼ皆無な状況である。
■5.出版社には工夫が足りない
小売店だって、ウェブに落ちていくお金が大きくなれぱ、売上は当然、落ちる。でもうちは、前年比マイナス20%が当たり前の業界で、前年比100%超を達成できているんです。お客様がより見やすいような棚をつくるといった、当たり前のことしかしていません。「棚ざら」という、見た目を3ヵ月に1回見直すというスキームをつくって、客を飽きさせない工夫をしている。でも雑誌の方は、何年間もスキームを変えてないところが多いですよね。
(芳賀書店社長・芳賀英紀氏)
■6.「動画ファイルナビゲーター」がコンテンツにこだわる理由
「広告を多く見せられますよ」というために、俺らはアクセス数を増やすことに対して、時間と労力とエネルギーを使うわけです。だから、ニュースブログみたいに、一見するとお金に直結しない部分も頑張るわけです。そういう一見無駄な努力でユーザーからの信頼度があがっていく。逆に、PVだけあげようとして、騙しリンクとか増やしたりすると、リピーターもこないし、広告主も離れていきます。そういう労力や関係性の大事さって、新しくアダルトサイトをやろうとする企業さんは、あんまり考えてないんじゃないかなあ。
(「動画ファイルナビゲーター」山田ともき氏)
■7.TENGA誕生の瞬間
自分ならバーコードを付ける。社名、問い合わせ先、HPアドレスも書く。品質も良く、いいデザインのものをつくる。パンフレットをつくって、お客さんとコミュニケーションをとる、と。その瞬間に、やることが山ほど思いついたんです。そして「自分がやればいいじゃん」とも。自分がつくれば、革新的なモノがつくれる、革命的なことが起こせると思った。「これだ!」と。
これがTENGAの始まりです。店に入って、ほんの15分くらいの出来事でした。アイデアがあっという間にめぐり、結論までいけたので、これは間違いないと。自分の感覚を信じようと。そこから会社を辞めるまで、そんなに時間はかかりませんでした。
(株式会社典雅・松本光一社長)
【感想】
◆本書では様々な「セックスメディア」を「オカズ系」「出会い系」「性サービス系」の3つに分類し、その歴史を踏まえて分析。
ただ、今回はこの中の「オカズ系」、特にエロ本業界のお話が「メディア」というものを考える上で非常に興味深かったです。
ネットの普及により、「オカズ」の座を奪われてしまった、ということはもちろんあるのですが、その前から衰退は始まっていた、と。
例えば、よくエロ本がひっそりと置かれている(?)町の小さな本屋さんがどんどんなくなっている、という事実があります。
一方で、アマゾン等のネット書店が、思ったほどエロ本の売上の助けにはならなかったのだとか。
ひとつには、上記の2番目のポイントにもあるように、そもそも多くのエロ本ユーザーが「ネットについていけない世代」に支えられている、ということはあるかもしれません。
◆代わりに販売チャネルとしてコンビニが勢力を伸ばしてきたものの、今度は「慎太郎シール」と一部で呼ばれる立ち読み防止の青いシールが登場。
シール作成のみならず、貼るコストも作り手側が負担しなくてはなりません。
さらに、中がわからなくなってしまったため、週刊誌のつり広告さながらに、表紙に内容を記載する必要もでてきます。
例えばこれは、アダルト雑誌『URECCO』の画像検索ですが、タイトルだけの洗練された表紙は2005年11月以前のもので、やたらと文字が多いのがそれ以降のもの。
URECCO - Google 検索
…って、以降のものがあまりないんで、アマゾンから引っ張りますが、とても同じ雑誌とは思えない装丁ですね、これ…。
urecco (ウレッコ) 2007年 03月号 [雑誌] [アダルト] 「アダルト注意!」
◆こうした出版業界は別として、多くの「性メディア」にありがちなのが、「騙し系」。
そんな中、成功している会社は、ユーザーに対して「誠実な態度」で売上を伸ばしています。
ポイントの初っ端の「出会い系サイト」しかり、6番目の「動画系サイト」しかり…。
とはいえ、「騙し系」でも、騙される人がいる以上、そういった会社がなくならないのは、普通のビジネスでも同じこと。
ネットビジネスでも、悪質なアフィリエイトとかありますもんね。
まさに、セックスメディアにビジネス世界の縮図を見る思いです(←大げさw)。
◆冒頭でも申しあげたように、本書は「ビジネス書」として読むことが可能です。
特にマーケティングがお好きな方なら、読んで損はないかと。
「他の業界なら当たり前のように出来ている事が出来ていないなら、そこにビジネスチャンスがある」というのは、別にセックスメディアに限ったことではありません。
最後のTENGAの会社の社長さんのお話を読んで、強くそう思った次第。
タイトルからは分かりえなかったオススメ本です!
セックスメディア30年史欲望の革命児たち (ちくま新書)
第1章 いかにして出会い系は生まれたか?―電話風俗篇
第2章 変化するウェブ上の出会い―出会い系サイト篇
第3章 何がエロ本を「殺した」か?―エロ雑誌篇
第4章 「エロは無料」の衝撃―アダルト動画篇
第5章 性と快楽のイノベーション―大人のオモチャ篇
第6章 変わり続ける性サービス―性風俗篇
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今の20代後半以降男子向?アダルトトイTENGA開発インタビューのモノづくりへの執念のくだりが秀逸。ポケベル~携帯なんかのコミュニケーションツールの変遷など、実はアダルトメディアって枠にとらわれてないかんじ。
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広告マンの友人に強く推奨され、即購入。
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第1章 いかにして出会い系は生まれたか?―電話風俗篇
第2章 変化するウェブ上の出会い―出会い系サイト篇
第3章 何がエロ本を「殺した」か?―エロ雑誌篇
第4章 「エロは無料」の衝撃―アダルト動画篇
第5章 性と快楽のイノベーション―大人のオモチャ篇
第6章 変わり続ける性サービス―性風俗篇
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・電話、ポケベル、携帯電話、インターネットと、メディアの進化とともにセックスメディアも進化。
・何がエロ本を「殺した」か?
①長期不況への非適応
②インターネットの普及による顧客の移動
③エロ本規制の強化
④「エロ本を読む」という体験の衰退
①インターネットの普及前から、エロ本市場は衰退が始まっていた。マクロ経済の動向が影響。
②若年層はネットへ。年寄りだけが本に残る。
③エロ本専用書店が現象、コンビニでも規制。
④作り手も読者も「高齢化」。すでにユーザーは「エロ本のない社会」に適応し始めてしまっている。
・2005年11月から東京都では青少年健全育成条例の改正により、2ヶ所のテープ止めが義務化され、立ち読みができなくなった。このため表紙で内容をわからせなければならないと、コンビニ売りエロ雑誌は必然的に内容を全て表記するようなゴチャゴチャしたデザインへと変わっていった。
(中略)
おかげで現在のコンビニの成人雑誌コーナーは、ゴチャゴチャした表紙ばかりが並ぶこととなり、かなり下品な光景となってしまった。テープ止め施工による思わぬ副作用だ。
→同じ雑誌でも、2005年以前のものは水着写真一枚で、写真集のように見える。この副作用は盲点だった。
■『じゃマ~ル』と「出会い系」の誕生
1995年創刊の個人情報誌『じゃマ~ル』(リクルートフロムエー)
読者が掲載したい情報をはがきなどで送り、それをそのまま掲載する。
紙面を通じて他人と繋がり、コミュニケーションに繋げる。
ここにあって、いよいよ「出会い系」という言葉が市民権を獲得した。というのも、『じゃマ~ル』誌面のさまざまな「系/族」が並ぶ中の一つに、「出会い系」という項目があったためだ。
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TENGAの社長のインタビューが最高。
イノベーターはモチベーションの置きどころがまず違うな~。
また、
TENGAとラブドールの話題で共通して出ていた、
「障害者の性」という問題は興味のあるトピックなので、
福祉の視点からのものも読んでみたい。
電車で座って読んでいたら、
前の女子高生がギョギョッとしていたので、
セクハラしているような気分で少々ドキドキした。
帯の江古田ちゃんも面白い。
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知らない世界ばっかでした。いや、ちょっとは知ってたかな笑
内容は、事例に基づいた報告と考察といった感じ。
性に関する表と裏のビジネスや世間の考え方、法規制の流れがするするーっとつかめた。
とりあえずTENGA社長の熱意に感動しました。障害者の性問題に関しては、多くのヒトが考えているんだなあと。良心的だからこそ、性に良い循環が生まれている。一方で、情報の非対称性を利用したあくどいサービスも残り、ただそういうものは、これからの時代どんどん駆逐されていくんじゃないかと。スマートフォン利用の拡大とソーシャルの流れを受け、どう変わっていくのか。性に関するビジネス、今後も注目です。
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ある意味自分の歴史を振り返ってるような感があったのだが
風俗店情報サイトの部分で出てくる「お店が持っている情報(この場合女性のプロフィールや出勤スケジュール、金額など)をいかにオープンにしていくか」といった部分は、全くその通りだと感じた
これができるかできないかによって売り上げも変わってくるだろうと思う
ただ商品を良く見せようとするのは自然な考えと思うので多少の水増しは今後も続くのかな、とも感じた
その反面昔ながらの「冒険」のようなお店探しが好きな人も今も確実にいるような気がして、こういう人が意外とコアなユーザー層の一角を担っているんじゃないのかな
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80年代から現在にかけてのセックスメディアの盛衰を追っかけていておもしろい。エロ本からテレクラ、TENGAまで、よくもまあこれだけのセックスメディアがあるものだと感心する。
とくに、TENGAの開発者やオレンジ通信の編集長といった立役者たちへのインタビューがいい。決して表舞台に立つことはないセックスメディアに対する情熱みたいなものが感じられる。
性的快感はもっとも手軽で確実なものだから、お金を払ってでも気持ちよくなりたいという需要は確実に存在する。需要があるならそれを商売にする人がいるわけで…と。セックスとビジネスという、人間の欲望そのものが結びついているわけだから、そのパフォーマンスは凄まじいし、変に外面をつくろう必要はない。だからこそ、彼らの話は、下手な企業経営者の成功談よりはるかに臨場感がある。
男性、かつ、ヘテロセクシャルを対象としたセックスメディアだけなので、女性向けなども興味深い。市場が限定的なぶんだけ、男性向けとは違った歴史が見えると思う。
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さすが荻上チキ、単にエロの歴史を語るだけでは終わらない。
経済、政治、文化などの各側面から適切に分析し、かつユーモラスな語り口で持論を提示してくる。
エロ本を殺したのは単にネットが普及したせいだけではなく、業界としての不況への非対応、規制の強化、さらにはユーザの体験の衰退にもよるのだ。
なんかこれ、ゲーム業界にそのまま当てはまるような。3DSの失策とか。
古いビジネスモデルが廃れようとも、性欲があるかぎり新たなエロメディアが誕生していくと結ぶラストにも好感。
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セックスメディアというと、なんとなく「怪しい」とか「アングラ」なイメージが強いが、そもそもそのインフラをつくっているのはNTTだということ。その点はとても面白い。
技術の発展という観点から見れば、エロはすごい原動力になるのだなと改めて実感した。
プリクラやポケベルなども出会いの道具になっているというのは大変興味深い話。
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典雅社長のインタビューが稲盛和夫ばりにグッとくる内容だった。男でないばっかりに実感できない部分があるのは残念。
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テレクラ、出会い系サイト、エロ本、情報サイト、アダルトグッズにおける時代の変化をアーカイブした本。
始まりから成熟、衰退までがインタビューや統計を交えてまとまっているので、この手のメディアの裏側が気になる人にとっては知識を深められること間違いなしです。
TENGAがEDの治療に使われていることや、オリエント工業のラブドールはもともと足が不自由な人向けに丈夫なダッチワイフを作ったことが起源など、どちらも障害者に関係しているのが特に面白かった。そういえばSODもエイズ予防にかなり力を入れてますね。日の目が当たってないところに着目してブームが起きるのは今後もありそうです。
ひとつだけ残念だったのは、動画撮影の章がなかったこと。VHSからDVD、BDと変わり続けてきたメディア史と、パッケージ販売からネット配信へ面舵を切ったメーカーとのせめぎ合いをチキさんにまとめて欲しかった。企画と単体、ジャンルの細分化、メーカーとレーベル、レンタルからセルへ、モザイク、規制団体など語ることがたくさんありそう。
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肌色産業に関わってる人って怪しさ満点だと思ってたけど、真摯に仕事に取り組んでる人もいるんだなぁと意外だった。
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出会い系の歴史について、書かれています。本書に則ると、出会い系
のツールはおおまかに
テレクラ→伝言ダイヤル→ダイヤルQ2/ツーショットダイヤル→ポケベ
ル・プリクラ→ケータイ
といった具合で遷移してきています。
伝言ダイヤル・ダイヤルQ2・ツーショットダイヤルについては存在すら
知らなかったのですが、こうしてみると出会いのインフラはほぼほぼNTT
がつくってきたのだな、と驚きました。
インフラだからNTTなのは当たり前だろ、というのはあるのかもしれません
が、「出会い」を目的に使う人が多くいたことで普及のスピードを加速させた
のだと思います。
プリクラやポケベルも女子高生中心に遊べるオモチャ、くらいに思っていたの
ですが、「出会い」の道具として使われていたということに衝撃を覚えました。
「技術は戦争とエロで進化する」と言うのを聞いたことがあるのですが、まさに
そのエロパワーを感じたところでした。
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「出会いたい人」にとってのコミュニケーションツールとしての、固定電話→ポケベル→携帯電話の変遷か非常に興味深かった。
また、男性用のアダルトグッズを開発した株式会社典雅の松本光一社長と、ラブドールを生産するオリエント工業の林拓郎氏のインタビューでは、ものづくりに対する徹底したこだわりと誇りを感じた。
また、医療現場で使用されたり、障がい者のセックスライフの一助となるなど、両社とも企業の社会的責任を全うしていることにも注目。河合香織『セックスボランティア』への導入となった。
本書では、主に男性向けのセックスメディアについて述べられているが、このような世界では女性向けの市場も開拓されているのだろうか?女性にも、もちろん性欲はあるはずだが、男性に比べて表沙汰にならないから、よりアングラな世界なのかもしれない。
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日本のスティーブン・D・レヴィットこと、萩上チキのライフワーク的な活動の概説書。面白いのは、時代時代ごとのキーマンの証言が載っているということ。これって、かなり資料的な価値が高いと思う。セックスメディアは、「売春」か「オナニー補助」のどちらかだと思うけれど、それをバブル期から現在に至るまでの流れで追っているところに、萩上チキの研究者としての真価がある。他の誰がこういう仕事をするだろうか、的な。
でも、やはり面白いのは証言集で、時代の波に乗った人たちの話には輝きと栄枯盛衰の侘びしさがあるなぁと。セックスメディアの一つのサービスはモラルのたがが外れたときに隆盛し、新しいサービスが登場したときに廃れていく……というサイクルの繰り返し。でも、TENGAは生き残るような気がする。