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紙の本

いまから千年後の世界、現代の本はどれだけ残るだろう?そして千年後の人々が感動する本はあるだろうか?

2011/09/13 15:19

6人中、6人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:辰巳屋カルダモン - この投稿者のレビュー一覧を見る

 『更級日記』を読んで、フト、思った。「なぜ千年前の日記が今、読めるのだろう?」著者の菅原孝標女は身分が高いわけでも有名人でもなく、ごく普通の女性だったのに。
学生のころ、授業で古典を「読まされて」いたころには思い浮かばなかった疑問。自分でもこの思いつきが愉快で調べてみようと思い立った。出会ったのが本書だ。

 和本の歴史は1200年以上に及ぶという。
中国や朝鮮渡来の技術を取り入れつつ、明治の活版印刷が始まるまで、独自の発展をしてきた。
本書は、成り立ち、装訂法や印刷術、扱われる題材の変化、流通と本屋業の歴史など、和本にまつわるあらゆる分野を網羅する。
著者自身が書店経営をされているからか、現代の読者の立場からの和本への尽きない興味、という視点が貫かれており、いたずらに専門性に走ることなく実にわかりやすい。

 冒頭の疑問にもさっそく答えてくれる。
「書物中興の祖」とされる13世紀初頭の藤原定家の業績が大きい。平安期のたくさんの物語、日記の写本の整理を行い原本に近い善本を残そうとした。すべて手書きで写していた当時、中にはいい加減な写本もあったのだ。

「定家の子孫はこれを原本として、内容も装訂もそのままに、何代にもわたって書写することを仕事にしてきた。物語の書名も定家の示した呼称が伝えられ、以後固定化されていく。古典文学の書籍が残るというのは、そういう地道な仕事が継承されたということである。(中略)物語のような草子(冊子)を後世に残すべき「古典」であると認識させたのもこのときであろう。古典が正式に〈書物〉の仲間入りをしたのだ」(69-70頁)

 読んでいて思わず胸が熱くなった。
『更級日記』も、それ以外の古典も、このときに残されるべき良書と認められた。よかった。
内容だけではなく、装訂をそのまま伝えた点も重要だと著者は語る。華美ではないが雅な文化、当時の美意識が丸ごとタイムカプセルのように伝わることとなった。
定家の子孫の冷泉家は、一子相伝で、この伝統を守ったという。

 江戸時代に入ると読書が大衆化し、和本を取り巻く環境は劇的に変化する。
今に残る膨大な和本や京都の本屋の日記から、明らかになる出版、流通、小売りのシステムは高度で複雑だ。そっくり真似た偽物や類似品など悪質なものを排除するため、現在の著作権管理事業と同じようなことをしていたというから驚く。

 16世紀末にもたらされた「活字」が日本では発展しなかった理由が興味深い。
26文字のアルファベット表記に適していた活字は、漢字やひらがな含め数千字を要する日本語には不向きだった。
また当時の仮名書きは一字ずつ独立した字ではなく、文節ごとにつなげる「連綿体」だった。「ごとし」だと「ご」「と」「し」の3字があればよいのではなく「ごとし」の活字を別に作らなくてはならない。膨大な手間である。
技術的な未熟もあり、活字は一時的にしか広まらずページ全部を一枚の木版にする「整版」に戻ったという。
ただ判読できればよいのではなく、当時の人々は字体の美しさ、雅やかさを求めた。
明治になってやっと活字が一般化した日本は西洋より遅れていたと考えてしまいがちだが、そこには活字の利便性をあえて選ばなかった特有の美意識があったのだ。あっぱれ!である。

 全体を通じて印象的なのは、「本はお預かりもの」という意識が時代問わず常にあり、後世に残すことを第一にしていたという点だ。
著者は「読書観」「書物観」ということばで表しているが、日本人と本との深いつながりとそこから立ちのぼる高い精神性が見えてくる。今後は先人の行跡に敬意をいだきつつ、古典を読むことになろう。本書に出会えたことを心から幸せに思う。

現代の本を取り巻く環境はすっかり様変わりした。千年後の読者を魅了する本はあるだろうか?

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2011/06/20 23:14

投稿元:ブクログ

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2013/11/20 23:48

投稿元:ブクログ

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