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数々の名著の装幀を手がけてきた著者による「本の裏面史」とでも呼ぶべき1冊。文中にて紹介される鶴岡政男という画家の挿話が本書の言わんとしているところを最も簡潔に表わしている。
鶴岡さんは、昔読んだ泉鏡花の初版本「草迷宮」を高い金で買ったと、自慢して見せてくれた。若いころに読んだ感触や、岡田三郎助の装画がその本になければならないのだった。「草迷宮」を読むだけだったら、文庫本で十分なのに、装幀や口絵がそこになければ「草迷宮」にならないところが本なのだ。
電子書籍時代における「本」のあり方を考えさせられる1冊。装幀を通して親交を深めた作家のエピソードも興味深い。
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本にとって、装幀は重要だ。とてもとても重要だ。
いい本は、いい顔をしている。
いい顔と言っても、中身と外身が釣り合わなければ、いい装幀とは言えない。
装幀だけが目立って一人歩きしてしまっては失敗で、中身の雰囲気や豊かさとうまく噛み合い、出来得るならばさらにもっともっと高めて伝えてくれるのが、いい装幀なのだろうと思う。
そうして、中身をくるんで、あくまでそっと差し出す。
そのせいかどうか、いい装幀を手がける人は、よく読む人が多いような気がする。
この司さんしかり、坂川さんしかり、菊地さんしかり。
だから、彼らの手がけた本は、さっと表紙をなでただけで、なにかもう伝わってくるような気がするのかもしれない。
「杳子・妻隠」「岬」「富士」「月山」などなど。どれも1970年代以降の日本文学にとって、はずすことの出来ない作品ばかり。
昨今の、どちらかというとゆったりさっくりめの雰囲気のほうが受ける風潮の中でつくられた装幀とはまた違う、ずっしりと持ち重りのする中身を受け止めた装幀になっている。
それぞれを語る裏話的なエッセイが、やはりしっかり受け止めていたことを裏付ける。
それらの作品にとって彼の装幀が欠かすことの出来ないピースであったように、彼にとってもそれらが大きな存在であったことを知る。
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いったいいつから司修の装丁に縄縛されたのか、いったいいつから司修の小説に呪縛されたのか。
今では猫も杓子も、例えばお馬鹿なお笑い芸人や軽薄短小な大根役者や12歳の小学生までもが書くようになってしまった可哀そうな小説ですが、彼の手になる小説は、ひと味もふた味も違うことはもちろんのこと、その可哀そうな小説が救われる感じがしてならないものです。
絵を書くためのアルバイトとして始まった装丁の仕事が、いつしか彼自身が本の魔法に引っかかってしまって、虜になって、その本の文学的資質をエッセンスとして引き出すというような、途方もない他の誰も真似のできない境地にまで至ったのです。
もちろんそれは彼の才能に違いありませんが、もうひとつ忘れてはいけない大事なものがあります。
それは、だって彼は魔法にかかっているんですもの。
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この本を読むと、お酒を飲まない作家や編集者はいないのかしらと思う。装丁する人と著者の関係を想う時、青山二郎と中原中也や、埴谷雄高「闇の中の黒い馬」の挿画:駒井哲郎、装本:杉浦康平が思い浮かぶ。
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装幀家が、自分が手掛けた本やその作者にまつわる思い出を語っている。少し前の時代に活躍した作家たちの思い出。なんだかいい香りがする。素敵だと思う。懐古的。ロマンチック。
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◆本の装幀家の真摯な仕事ぶり◆
今から20年以上前になりますが、仕事帰りに書店の新刊本コーナーに立ち寄ると、平積みされている多くの本の中に、一枚の絵画のような、凛として魅力的な表紙を発見!思わず手に取って装幀家の名前を探すと「司修」さんの名前が記されていました。
…数多くの文学作品の装幀を手掛ける第一人者の、真摯な仕事ぶりがわかるエッセイです。
第38回(2011年度)大佛次郎賞受賞。
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行間より装幀の仕事を通して作家たちと深い関係を築いていることがうかがわれる。とりあげられているのは超有名作家との仕事がほとんどだが、改めて作品を読み返してみたくなった。
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司修さんは画家なのかと思ったら、作家でもあるので文章がうまい。作家との交流から出てくる珍しい話や司さんの生き方が興味深かった。絵を描く方は勉強になる点も多いのでは。しかし、この人の装丁する本は(著作内容が)素晴らしい作品ばかりで、さらに装丁が作品に磨きをかけている。
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画家で絵本作家で装丁家である著者の、装丁へのおもいを綴った本。おもいという簡単な言葉では到底あらわせないほど、それは深く本と著者と一体化している。
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装丁家でもある司修さんの本にまつわるエッセイ。
本に関する本が大好きで、表紙もとてもよくて気になる一冊です。
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OPがよいアニメが名作である可能性が高いのと同様、装飾の装丁がエレガントで、持った際にしっくりくる重量感がある本は名著である可能性が高い。
しかし、装丁に惹かれて本を買ったのは初めてだった。敢えて中身は見ずに買った。
まだ読んでいないが気合の入った本であるとみている、
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著者が装丁をした本とその著者についての想い出などを綴ったエッセイです。好きな作家のところから一章づつでも、ゆっくりと読むのが良いでしょう。