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エドワードの夫人が出てきておもしろくなってきた。
何故6章はこんなに短いのだろう。この6章、許可をとるくだりが面白い。話の運び方が上手い。子供視線で、客観的な事実だけを書き、そこから大人の関係性を読者にそれとなく匂わせる手法は鮮やかだ。おこずかいをもらった怒りが、消えていき、自分自身を納得させる描写、礼状を送らない事で自分の傷ついたプライドを和らげる。この描写が好きだ。「君はナイフみたいに切れる人だから用心しないと自分のことをきってしまうよ」「エリートは人気というものを軽蔑する。凡庸の証というのだ」筆者の美への感想が面白い。美とは退屈なものだ。「ライバルとなる恐れの無い人を褒めるのはライバルとして恐れる人を牽制することになる」作者は皮肉屋という評判は作家にとってマイナスだ」と言ってるがどうゆうことか。構成が上手い。
で、結局最後まで読み切ったが、俄然後半になるほど面白くなっていく。なるほど名作として後世に残り、未だにファンがいるのも頷ける。この書き方、小説家を目指す作家の卵には絶対おすすめの作家さんだと、改めて思った
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56歳のモームが、自分の人生を振り返りながら書いたもののようです。他の作品と同様にここでも、モームの鋭い人間観察に基づく皮肉たっぷりで手厳しい人物評が繰り広げられていきます。みんな俗物ばかりで、聖人君子なんて一人も登場しません。そんな登場人物たちの中にあって、とりわけ奔放で不道徳な女性であるロウジーだけが、ひときわ魅力的に描かれています。
多くの男たちがロウジーを愛し、ロウジーから安らぎを得た。その中にはかつての「僕」も含まれていたが、若く潔癖だったその頃の「僕」は、何人もの男と平気で関係を持つロウジーのことが我慢ならなかった。そこには嫉妬の感情も混ざっていたのだけれど……
それからずっと時を隔てて、人生の後半を迎えた今となっては、ロウジーのことが「僕」の大切な思い出になっているようです。だから、階級社会の古い道徳観からしか物事を見ることができないロイやエイミがロウジーの悪口をいえば、「僕」は思わず反発してしまうのでしょう。
語り手の「僕」にせよ読者である私にせよ、ロウジーには何の悪意もなかったのだと信じたいのだけれど、実のところとても理解しがたいロウジーの行為にすっきりしない気分のまま小説が終わってしまうのかと思いました。ところが、エドワード・ドリッフィールドのもとをロウジーが突然に去った事情の全てを最後の章で明らかにすることで、やはりロウジーは素敵な女性だったのだなあと読者に思わせて小説は終わります。さすがモーム、上手いです。
ところでこの小説のタイトル「お菓子とビール(Cakes and ale)」の意味が気になって、ネットで少し調べてみました。この言葉は「人生の快楽」、「浮き世の楽しみ」といった意味で、シェイクスピアの「十二夜」の中の「Dost thou think, because thou art virtuous, there shall be no more cakes and ale?(あなたが高潔ぶりたいからって、浮世の楽しみまであっちゃいけないというのかい?)」という台詞に由来するもののようです。古い価値観に囚われて他者の生き方にまで口をはさもうとする人たちに対する皮肉を込めて、作者はこのタイトルを選んだのかもしれません。
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最初に読んだ頃―当時は21才だった―はローズの魅力や、繰り返し何度も現れる「誠実」というキーワードについて深く悩んでいたような記録が残っているのですが、今読み返すと、ローズにとって女性であるってことはどのようなことだったのかな?とか、ドリッフィールドの2度の結婚生活はそれぞれ、彼にとってどのような意味を持っていたのだろうか?とかそういう事を考えた。こうやって再読したりなんかすると特にそうだけど、本って再読するたびに違った感想になるから面白いし、こうやって記録に残すことで、当時の自分の考え方を見返せるのも楽しいですね。
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モームによる人物の描写や造形は冷徹で暖かい.
いつものように主人公(アシェンデン)はモーム自身であり,彼が友人の作家から,つい最近逝去した文壇の大御所ドリッフィールドの若い頃についての情報提供を依頼されたことをきっかけとして,若き日のドリッフィールド,その年下の妻であるロウジーとの交流を回想する.
主人公に言わせれば「それほど文才がないにもかかわらず,周囲から大御所に祭り上げられた」ドリッフィールド,天衣無縫なロウジーが魅力的に描かれており,それは訳者の解説によれば「周りの人間を卑小に,風刺して描くことによって」欠点の多い彼らを相対的に浮き上がらせているということだ.
同じモームの「人間の絆」は大部であったが,本書のストーリー運びには無駄がなく,人物の造形のみで読ませるのではない巧みさもある.
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モームが自作の中で一番好きだと言っている作品。文豪無名時代との接点を思い出しながら語っているようで、モーム自身の体験が物語のあちこちに出てくるところが愛おしいのかな? 近所の人の思い出話って誰にでもあるから話にどんどん引き込まれていく。うわさ話の主人公になってしまう人は品行方正でないところが逆に魅力的だったり惹かれてしまう。登場人物が生き生きしているところがなにより素晴らしかった。
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他界した文豪の伝記執筆を託された主人公
その蘇る若き日の告白
形式的な政治・文学論を読むより
主人公に代弁させる本作の体裁が良かった
文豪がウィンクをして少年に愛嬌を振りまくシーンが印象的。お茶目な作者を彷彿とさせる。
その意味合いも少し考えさせられた。
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初モーム。日本では人間の絆や月と六ペンスの方が知られている気がするけど、本作はモーム自身が1番お気に入りの作品らしい。
冷徹に文壇や作家や人々の美や小説への賛美を批評している文章が多いのだけど、通奏低音として素直で朗らかなヒロイン・ロウジーへの愛があるからなのか、全体にどことなくユーモラスで暖かい。
古典と呼ばれる文学では、(書かれた時代もあるのだろうけど)不貞を働いた人妻はだいたい死ぬか精神を読むかという「罰」が与えられることが多いように思うけど、本作ではロウジーが悪びれず幸せになっている結末になっていて、好きな作品だった。
時系列をいったりきたりするのに(なんとなく映画のワンスアポンアタイムインアメリカを思い出した)、混乱なくストーリーに引き込まれた点にも、モームの筆力を感じる。
年始から当たりを読めた!
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あらすじも何も読まずに読み進めたが、一体どこが本題なのか気づくまでかなりページを要した。
語り手の斜に構えたような、周りを冷笑する言葉に乗せられ、ジョージ殿や叔父やロイへの印象が操作される。基本的には語り手の記憶の旅のようなもので、心象描写は細かく、地元に久しぶりに帰ってきた時の描写は刺さるものがあった。貴族制度廃止後の見解や、時折出てくる(私にとっては)難易度の高い引用(ロウジーの夜逃げを語るシーンなど)があり、語り手、アシェンデンの考えたに寄せられていく。
知らずのうちにロイは社交術があるだけの気取ったやつで、ロウジーは美しく魅力的で肯定してくれる人で、ジョージ殿は事業に失敗し借金し、貴族ぶってるどうしようもないやつだと思わされる。
それがロウジーを語るアシェンデンの姿に、そして最後のロウジーの言葉によって、ハッとさせられる。
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この本の作者モームの『月と6ペンス』を読んで、読みたいと思った本。
語り手の僕アシェンデンよりも、話の中心になってるはずの文豪ドリッフィールドよりも、その元妻ロウジーのキャラクターの描写に惹かれてしまう。
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モームが考える愛は出てくるキャラクター個人の尺度や感性で描かれていて、芯がある。だけど美化されているわけでもなく、物語に愛があることが心地良くなる。
お菓子とビールの中でのメインキャラクターであるロウジーという女性はまるでモーム自身が恋しているかのように絶えず描写され続ける。こういう人のことみんな好きだよね〜という気持ちになる。魅力あるキャラクターで、この人のための小説だとすぐわかった。
貴族文化とか差別とか色々あるし、読みにくい部分もあるけど、面白い本だと思う!!でも私はモームを贔屓しているからあまり参考にしないでほしい 好きな人はとことんハマるぞ!!!!!!
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タイトル的に、エッセイかと思って読んだけど、主人公の青年期の既婚女性との禁断の恋がふんわり描かれていた。表現も、直接的ではなくて文学!って感じで読んでいて気持ち悪くならなかった。タイトルのお菓子とビールが直接的にはほぼ出てこないけど、これは甘酸っぱいみたいなことを意味しているのかなーと個人的に思った。
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お菓子や麦酒みたいなロウジー。
翻弄される二人とその中に入り込むロウジーの影響。
楽しいのに離れられずけど体に影響があり翻弄されるお菓子と麦酒みたい。
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亡くなった文豪との回想記。人間として非常に魅力的であった文豪の前妻を中心しとして描かれている。語り手はこの彼女に禁断の恋をするわけだが、階級や規律に厳しかった当時のイギリスの時代の中で、自由闊達、破天荒に生きた彼女の姿が伸び伸びと描かれている。彼女に対しては当然不誠実な面もあるのだが、こうゆう女性に出会ったとしたら、誰もが彼女に惹かれていくのだろう、と思えるくらい一人の女性を魅力的に描いている。歳をとり過去を偲ぶ際には、こうした出会いによって生き生きした過去の自分を思い描けるのは幸せな気がする。