投稿元:
レビューを見る
大好きな三浦哲郎さんが愛読していたという上林暁氏。
本書が、最近新しく編まれ発刊されたというのを知って、図書館にリクエストしてみた。
七つの短編がおさめられているが、なんといっても冒頭の「花の精」が素晴らしく良い。撰者の山本善行氏も「本作だけは外せないお気に入り」とおっしゃっている。
訥々とした語り口、淡々とつづられる文章は、さり気ないのにすーっと引き込まれてしまうまさに名文。著者のいる世界の中に、今一緒に入り込んでいるような錯覚に陥る。
三浦氏も私小説作家と呼ばれていたが、やっぱり上林氏の影響を受けているということなのかな?
今度は代表作と言われる「聖ヨハネ病院にて」「薔薇盗人」「白い屋形船」なんかも読んでみよう。
投稿元:
レビューを見る
夏葉社の本。
これもまた、美しい。
佇まいが静か。
「上林暁」など、名前は知ってても(ふりがな無しで読めますか?)入手し難いもののひとつだった。
今般出版されたこれが、星が撒かれるように散らばって、そして「30年後」、それぞれしかるべき人の手の中にあることを思う。
きっとそのはずだ、と信じることができる。
投稿元:
レビューを見る
いちばん最初に収められている『花の精』というのが良かった。
悪くないし、いいのだと思うけど、
私には、それほど衝撃も感激もなかった。
たぶん、並行して読んでいた本(洲之内徹『気まぐれ美術館/帰りたい風景』)が好きすぎて良すぎて薄れてしまったのだと思う。
投稿元:
レビューを見る
ガケ書房の平積みから手にとった一冊。
私小説というジャンルの本はあまり好きではないと思っていたけれど、この人の私小説はとてもよい。「私」小説だけに、作家との相性が肝になるということか(つまり、誰にでもおススメしようとは思わない)。書く人の息づかいや暮らしの色合いが目に映る文章に、肌のぬくもりのようなものを感じるここちよい読書でした。
投稿元:
レビューを見る
上林暁はじゅわっと心に染み入ってくる。私の中に上林暁ブームが起きそうな予感。とりあえず、出ている文庫買うべし。
投稿元:
レビューを見る
恭子ちゃんの本棚で発見。タイトルと装丁に魅せられて「読みたい」リストに入れていたもの。
とある小説を読了後、ふんわり考え事をしていたらこのタイトルがふと思い浮かんで読み出すことに。
(直接的な関連性は全然なかったんだけど、描かれている光景がどことなく被るっていう不思議さはあったんだよね。それがなんだかちょっとうれしい。)
文学少女でもなんでもなかったので、上林暁氏は知らず、もちろん初めて読んだ。
純文学っぽい?
とてもおだやかでやさしい感じを受ける。
普段手に取らないようなジャンルで、読み続けるのは困難かなと思えたのに、するりと進んで、すっかりこの世界観が心地よくなっていた。
タイトルになっている「星を撒いた街」以外は、本人の目線の内容。「星を撒いた街」もどこかご自身に関連するものなのかもね。
全体的に細かな描写が、特に感情面で記述されている。その描写がするっと入ってくる。だから引き込まれるのだろうね。
月見草が咲き乱れる光景の部分が特にすごかった。読みつつ思い描くけど、本当にその光景を見てみたいなぁと思った。あの沸き立つ感情の記述はすごいね。激しく書いているわけではないのに、ちゃんと読み手に残る。
タイトルの光景も気になるけど、こっちがイチバンかな。
#「星を撒いた街」のあとがきなるものをいつか読みたい。
投稿元:
レビューを見る
上林暁初めてですが、凄く良いです。柔らかく心にすっと入ってくる私小説で他の作品も是非読みます。また、夏葉社は現在迄3点刊行してますが装丁が渋く私は気に入ってます。
投稿元:
レビューを見る
上林暁という作家は(恥ずかしながら)初めて知ったのですが、
穏やかで繊細な文章を書く作家さんですね。
もっと他の作品も読みたいと思いました。
奥様への愛とか、
花への愛情とか、
とっても素敵だなーと。
最近はピース又吉関連の本をよく読んでますが、
彼自身の本はともかく、
彼が薦める本は良いのが多いですね。
信頼できる指針があると助かります。
投稿元:
レビューを見る
上林暁を読むのは初めて。エッセイとの区別がつかない小説集。代表的な病妻物は、作品によって描写は事なるが、妻のその精一杯生きようとする姿は元気付けられる気がしたり、余計に悲しくなったり。文体は非常にさっぱりと上品な感じで好み。撰者解説に紹介のある代表作なども読んでみたい。
投稿元:
レビューを見る
上林暁(かんばやしあかつき)さんの作品は初めて読みました。昭和初期の小説家さんです。7編の作品が収録されています。特にご自身の奥様の病を取り上げた「病妻もの」と呼ばれる私小説は淡々と語られる中にも、妻への愛情がとても繊細に描かれています。個人的には「花の精」と表題作でもある「星を撒いた街」の2作が心地良いため息が漏れるような読後感を味わえました。
投稿元:
レビューを見る
石段の下で白河は叫んだ。
「抛って下さい。」
「抛るわよ。」妻君は力まかせにステッキを抛った。ステッキは一旦石段の途中で引っかかり、それからがらがらと音を立てて辷り落ちて来た。
「御免なさい。」と妻君はおどけて叫んだ。
「ありがとう。」白河は拾い上げて、埃を払った。
「また、いらっしゃいね。」
「また来ます。左様なら。」
「左様なら。」
白河は手で「失敬」の真似をしてから、坂を降りはじめた。坂の途中で振り返ると、妻君はまだ立っていた。
「左様なら。」白河は大きく叫んで、手を挙げた。
「左様なら。」向こうでも手を挙げた。
白河は涙が出そうになり、酒に酔ったような気持ちで、少し足許をふらふらさせながら、ポストのある角を曲がった。そこでは、夜業の印刷機の音があちらからもこちらからも湧き起っていた。
『星を撒いた街』
投稿元:
レビューを見る
上林暁の作品は初めてだったけれど、曲線のように柔らかで繊細な文章は、ゆっくりとゆっくりと心に染みいる。とくに巻頭の作品「花の精」での景色の描写はたまらなく美しかった。
投稿元:
レビューを見る
久々に私小説を読みました。文章が本当に美しい。
上林さん初めて読んだのですが、読みやすくてすらすら進むんですけど表現の美しさに立ち止まることも多くて、独特の空気感がありますよね。
タイトルにもなっている「星を撒いた街」の、時間とともに表情を変える富士山の描写がとても好きです。風景をこんなふうに切り取って文章にできるんだ、って、美しさにびっくりしてしまった。
他の本も読みたくなってしまったので、手に取れそうなものから読んでいきたいなと思います。
投稿元:
レビューを見る
作者の周囲に暮らし、あるいは通り過ぎていった、とうの昔にこの世を去っている人々の街での暮らしぶりが、夜空の星々を慈しむような文体で描かれています。
投稿元:
レビューを見る
表題作の他に「花の精」・「和日庵」・「青春自画像」・「病める魂」・「晩春日記」・「諷詠詩人」を収録。
いずれも妻の闘病・己や周囲の生活苦・文学界における交遊を素材とした私小説。劇的なエンターテイメント要素や社会に訴えるテーマといった“華”は無いが、ずっと読んでいたい、終わってほしくないと思わせる何かを湛えている。ささやかだが、夢中にさせ感嘆させる美しさ、とでも言うべきものか。
上林曉という作家だけでなく撰者の山本善行さんや、素敵な装釘で世に送り出してくれた夏葉社さんまでも一気に好きになった。純粋に小説を読みたい、文学を味わいたいという願望が形になった一冊。