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不可能だったクロマグロの完全版養殖に挑んだ失敗続きの自伝がここに。苦節三十年、大卒マグロは、なんと九割トロ(天然は一割五分)、これがうまい。
いまでは、40キロのマグロを年間2000本。
サステイナブルの観点からも完全養殖は、興味深い。
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著者は2008年まで近畿大学水産研究所の所長を務めた、熊井英水氏。熊井氏は日本におけるヒラメ、カンパチなど様々な魚介類の完全養殖の第一人者であり、2002年には世界初のクロマグロの完全養殖を成功させました。
日本の一般的なクロマグロ養殖は、マグロの天然幼魚を採捕して商品価値が出る大きさまで生簀の中で育て、出荷するものをいいます。しかしこの方法では毎年毎年、大量のマグロの幼魚を漁獲することになり、クロマグロの資源の枯渇を招いてしまいます。
一方、クロマグロの完全養殖というのは、一度だけ天然マグロの稚魚を海から捕獲し、それを成魚に育て卵を採取し、再び成魚に育てて産卵させるというサイクルを確立する技術です。この方法だと、天然マグロには一切手をつける必要がなく、資源を守ることができます。
1970年はじめにクロマグロの完全養殖の研究がスタートし、2002年に成功するまでに、なんと実に32年もの歳月がかかっています。途中、水産庁からの研究費の打ち切られたり、11年間マグロの産卵がストップしたりと様々な困難に直面しますが、それらを乗り越えながら完全養殖を成功させようと奮闘する研究者達の姿には感銘を受けます。生き物相手の研究というものの大変さが、嫌というほど伝わってきます。
前半はクロマグロの完全養殖成功までの道のりについて書かれていますが、後半は熊井氏の日本のマグロの資源状況に関する意見が書かれており、そちらも参考になります。
文体も平易で前知識無しでもさくさく読めます。読めば養殖魚に対するイメージが変わる一冊。
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“マグロの減少の原因は言うまでもなく乱獲と資源管理の不徹底”
海のダイヤと称されるクロマグロ。世界の漁獲/養殖量のおよそ8割が日本に供給される。ミナミマグロも9割は日本人のおなかに入る。日本人がマグロを食尽すという議論もあながり嘘ではない。そんな日本人である私たちこそ、漁業の未来にもっと自分ごとにならなくてはならない。
本書でも、水産管理技術の問題が指摘されている。一つは、世界に5つある国際管理機関が各国の水産利害が複雑に絡み合う問題について手をこまねいている状態で、過剰な操業状態に歯止めをかけられていないこと。もう一つは、日本が「オリンピック方式(早い者勝ち漁)」を採用しており、「IQ方式(決められた漁獲量を船ごとに割り振る)」を採用しているノルウェーなどと比べ稚魚を含めた乱獲が進み、耕す意識が弱いこと。
近代水産研究所は、ハマチなどの養殖経験をもとに、クロマグロの養殖に挑戦。多々の苦難を乗り越え、大学ベンチャーを軌道にのせている。成魚の養殖は、えさ(マグロの場合はヨコワ)を大量に必要とすることから、向かないという考えもあるが、近代はヨコワの養殖も手がけ、すべての魚種が7割をきらないように配慮しているという。
近代マグロというブランド名もユニーク。大学発食料品ブランドが、漁業の新しいあり方を示してくれるのかもしれない。
http://www.a-marine.co.jp/commodity01/index.html
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クロマグロ完全養殖を成し遂げた近大の先生の本。
面白いけど、少しだけ、『俺凄いだろ』が強いかな。
でも、研究へのエネルギーはやっぱり立派。
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クロマグロの種の保存のためにも、食文化の保護のためにも卵から成魚まで完全養殖が必要。日本だけでなく世界の海の資源に報いる研究は30年を超える時間を要しましたが、結果が出て良かった。目的がはっきりしている研究は長く研究費の支援を受けることさえ出来れば、研究に携わる人たちの経験値やスキルは時間がかかる分、必ず向上しているので結果は出るのだと思いました。
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クロマグロの養殖にかけた男の情熱が伝わります。僕はこういう方を尊敬します。最後の方は魚の食糧事情になっていて、本当に危機感を覚え、海を耕す事を真剣に考えなければならないと思いました。
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☆信州大学附属図書館の所蔵はこちらです☆
http://www-lib.shinshu-u.ac.jp/opc/recordID/catalog.bib/BB06344091
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文章が読みやすく、専門外でも分かりやすいです。ドキュメンタリーを観ているような感じです。
クロマグロの養殖のニュースは覚えていますが、一人の人が人生をかけるほどの長い年月がかかっていたとは知りませんでした。産卵、ヨコワといくつもの壁をひとつひとつ越えていくのは、研究の大変さと面白さを感じました。
大学が利益を上げることについて、批判が多かったと何度も書かれていますが、実学主義、良いじゃない。基礎研究も産業に繋がる学問もどちらも発展していってほしいです。