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「電報」
貧しく学校に行けなかったために自分が苦境から抜け出せなかった。その思いを子供にさせたくないから、息子に学問を、という親の気持ちが、痛いほどわかる。
それでも、村社会における階級の圧力に、心がふさぎ、迷い苦しみ、屈してしまう父親の姿が悲しい。
村の嫌な面が上手く描かれている。
「豚群」
最初は何の話かよくわからなかったけれど、貧しい農家の自衛策だったのだ、と感心した。
賃金も与えない地主は横暴で、金持ちとしての品位が無い。
「馬糞石」
動物の結石が高価なものであるということを、この作品で知った。
本家は確かにずるい。
知識がなく弱いものを最後まで欺こうとしたのだろう。
双方の欲が戦って、三造が勝ったわけだけれども、この後の顛末が書かれていないところが面白い。
この後の、いくつものパターンが想像できて、楽しい。
「泥芝居」
狭い田舎で、よくこれほど堂々と悪いことができるなあ、と感心した。
正三という名前なのに、ちっとも正しさの気配を見せないこともおかしかった。
その正三を上回る汚さ・狡さ・厚顔無恥さを備え持った次郎には、腹立たしい等の否定的な感情よりも驚き感嘆する気持ちが湧いてきた。
これぞ悪人たち。
これぞ強欲。
そんな次郎から金を引き出した和尚。
しかし、なんというか、納得してしまう。
まあ、和尚ってそんなもんだ、と私は思っている。