紙の本
「戦争をなくすなら世の中をリセットしちゃえば早いよね」、と言われたら、どう答えますか?
2011/11/06 16:02
5人中、5人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:紅葉雪 - この投稿者のレビュー一覧を見る
かつて、シエラレオネ共和国の元少年兵の話「ダイヤモンドより平和が欲しい」の書評を書いたことがある。そのあともさまざまな戦争絡みの本(児童書)を読んできた。
その中で、「近年のヒット作!!!」と(自分の中で)思えたのが本書。
著者の山本さんはジャーナリスト、ノンフィクション作家。本人は「はじめに」の中で戦争ジャーナリストという職業を次のように述べている。
「私は世界の戦場を取材して、テレビや新聞、雑誌で報道するジャーナリストです」(p10より)
さらにはそういう仕事について抱いた葛藤や迷いのようなことも、さらりと触れている。そして何が彼女の中の迷いを克服させたのかを、小学生にも判りやすい言葉で書いている。
それが冒頭である。
続いて話は、世界の戦争の渦中にいた子どもたちについて触れていく。
地雷で足を失ったアデムやアルティン。
かつて少年兵だったターティ。
友人たちを目の前で殺されそのトラウマに苦しむアブドゥヌール。
現在も廃墟地で子どもだけでくらす、ディーマたち。
自分が本書を「ヒット作」と思ったのは、そういった子どもたちの悲劇的な面だけを取り上げるのでなく、「なぜ戦争になるのでしょう?」(第5章)や、『戦争のおわらせ方』(「世界の平和のために」(おわりに))といったことにまで、冷静な視線で、しかも子どもたちにわかりやすい言葉やたとえで語りかけているからである。
冒頭に戻る。
学校司書をやっていると、子ども向けの戦争関連の本には嫌というほど目を通すことになる。そして必ずといっていいほど、ある一定の時期にうんざりするほどの戦争絡みの本・資料を読み返すことにもなる。
「国語で戦争の単元をやるので、導入に「戦争」をテーマのブックトークをお願いしたい」と高学年の先生方から声がかかるからだ。
授業絡みのブックトークは正直に言って骨が折れる。教科書を読み込み、時には先生方が使用している「てびき」までもお借りして読み込み、先生がどのように授業をするのかの流れを伺い、打ち合わせをし、そのうえで本を絞っていくのだから。毎日同じ学校に常勤していられるならともかく、複数校を担当しているため、週に数日入っていく立場でこれをやるのは、かなりの負担となるのも正直なところ。
まして、毎年毎年「これはいい」と思う本が次々と出版されていく。
かつて作ったブックトークを毎年毎年やってしまえばいいのだろうが、新しい本をどうしても組み込みたくて、結果再度ゼロから組み立てなおすなどということも毎年の恒例行事となりつつある。
もっともこれは、自分の「職人気質」のためだと、あきらめてもいるが(笑)。
実は、『戦争もの』のブックトークはかなりの精神力を要する(…と勝手に自分は思っている)。
膨大な数の本を相手にする司書として、本との付き合い方、距離の取り方を他の方々よりは会得している立場であっても、やはり戦争という『大きな負』と直面する本ばかり読んでいると、思わず精神状態が本につられてしまいそうになるからだ。
そんな中で、本書は悲惨な過去をもつ子どもたちに寄り添いながらも、どこか希望を忘れない視点があるように思えてならない。
実は。
この書評のタイトル、「戦争をなくすなら世の中をリセットしちゃえば早いよね」、はある小学生が山本さんに言った言葉だそうである。(本書、P18より)
おそらく言ったのは日本の小学生なのでは? と話の流れから類推できるのだが、それに対する山本さんの視点が素晴らしいと思った。実際、この子に向かって山本さんがどのような言葉をかけてあげたのか、ぜひ知りたいと思ってしまったのは、学校という世界に半分でも浸かっている立場だからだろうか。
やはり肌で戦場を感じ、五感を研ぎ澄まし命がけでその現状を伝えようとしている人ならではの視点だと思った。
最後に。心に残った一文を引用させていただく。
「平和な世界は、たゆまぬ努力をつづけなければ、あっという間に失われてしまいます。私たち大人は、平和な社会を維持し、できるだけ広げていけるように道をつくります。
そして、これから先、平和な国づくりを実行していくのは、いま十代のみんなです。
世界は戦争ばかり、と悲観している時間はありません。」(P190より)
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投稿者:タタ - この投稿者のレビュー一覧を見る
平和な国に生まれてよかったなと心から思います。今も戦争やテロと戦っている子供たちがいると思うと悲しいです。
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戦地を取材してきたジャーナリストのエッセイ(ルポルタージュ?)
完全に今の(2011年時点の)子供に語りかける形をとっているので、子供じゃない私にはちょっと物足りなかったり今の子ってそうなのか?と思ったりしなくもないけれど良書。
著者は「いまどきの子はゲームのように人生もリセットできると思ってる」みたいな単純化した子供像を勝手に作り上げたりはしない。
聞き手である子供や、世界や、未来を信じようとしている。
そういうまっとうなスタンスで子供に語りかけようとする大人がいるってことに安心する。
疑問なのは「ゲームや映画のような絶対的な正義はないんだよ」というメッセージ。
このメッセージを成り立たせるには「今の子供が絶対的な正義を与えられている」という前提が必要なわけだけど、ハリウッド映画はともかく、今の日本製の漫画やおはなしの中に絶対的な正しさはあまり見かけないような気がする。
今の子は「絶対的な正義」という嘘さえも与えられず、不安定な足場しか築けずにいるような・・・でもそのくらいの違和感は大したマイナスじゃない。
様々な立場と感情を持った(しかし不安だけは共有している)イラク国民、
地雷で足を吹き飛ばされる子供、地雷を除去する犬、
さらわれて兵士にされる子供、彼らを保護する施設、
虐げられたイラク民を救うヒーローのつもりで意気揚々とやってきたのに拒絶され敵意を向けられて愕然とするアメリカ兵、
廃墟のような町で身を寄せ合うストリートチルドレン。
著者の他の本で見た写真や内容もあるけれど、この本で初めてこの内容に触れる子供が想定される読者であることを考えればそれでいいんだろうな。
文章は平易。しかし単純化はしない。
事実よりも「わかりやすい」ことを優先させるTV番組なんかを見た後で読むとすごくほっとする。
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内容は本当に読んでいて辛いですが、温かい語り口で最後まで一気に読みました。
小学校高学年向けの本です。社会科の副読本にしてほしいですね。
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小学生高学年~中学生くらいを対象にして書かれています。
国際平和に関して、いろいろな本を読んできましたが、改めて復習させてもらった気持ちになりました。
著者の伝えたいことが絞り込まれているのも良いと思います。
世界はこれから、グローバリゼーションの拡大をつづけるのか、またはローカリゼーションが台頭してくるのか。予測のしにくい現状ではありますが、これからの時代を生きていくときに、他国の状況を知っておくのは大切なことなのは間違いない。
僕が中学生のとき、この本と出会っていたら、人生はどう変わったかな?
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戦争の終わらせ方、というかそもそも戦争をおこさないために、心の距離を縮めること。違っていることを当たり前の事として受け止めること。子どもにも大人にも分かるように書かれていると思う。
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120820 she's shot n died. wept n tears. for Peace, never give it up!!!!!
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山本さんの存在は、シリアの内戦で亡くなられてから初めて知りました。
偶然、山本さんの本書を広告で知り、どんな方だったのかを知りたく、図書館で借りました。
この本は、小学校中高学年向けに書かれているようです。
文字も大きく、文体も優しいので全小学校のクラス文庫として、教室の後ろにおいて欲しい。
子供だけではなく、親も一緒に読んで、あらためて親子で、平和とは?戦争とは?命とは?正義とは?をディスカッションする機会にもして欲しい。
私は幼い頃から、祖母から戦争の話を聞き、戦争を題材にした本を読み、戦争は絶対にやってはいけないもの。と思ってきました。
でも、今は、終戦から長い時間がたち、直接自分の耳で話を聞く機会は少なくなっていると思います。
歴史として、話を聞いてしまうと、それは、戦争の怖さを知るというよりも、昔あった史実としか受け取れないと思います。
だからこそ、親子でディスカッションをする機会が必要なのではないかと思うのです。
あらためて、惜しい方をなくしたと思わずにはいられませんでした。
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先日シリアで銃撃を受け 亡くなられた山本美香さん。
謹んでご冥福をお祈りします。
本書は昨年山本さんが刊行された本です。
読み始めて気付いたのですが
講談社の“世の中への扉”という小学校高学年向けのシリーズの一つで児童書です。
・戦場ジャーナリストという仕事について
・世界各国の戦争の現状
・爆弾が落ちたらどうなるのか?
・地雷とは?難民とは?
・数多くの少年兵の実状
・どうして戦争になるのか?どうやったら平和になるのか?
同僚であり事実婚状態にあったという男性がおっしゃってたけれど
山本さんは優しくて穏やかでそれでいて芯の強い人だったらしいですね。
そういうお人柄がこの本の中にも溢れていて好感がもてます。
読者の子どもたちに優しく語りかけるように
そしてこの日本では考えられない現実がさまざまな国の同年代の子どもたちに降りかかっているということを
日本の子どもたちの身近なことに置き換え例えながら
分かりやすく説明してくれています。
“知らないことは罪に近い”とおっしゃる山本さん。
一人でも多くの日本の子どもたちにも伝わりますように。
わが子にも6年生くらいになったら読んでもらえるかなと思います。
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先日亡くなった山本美香さんの本。
自分が取材先で見た事、感じたことがストレートに書かれていて、読んでいて何度も泣きそうになった。悲しみの連鎖は未だに止まってない。けれども、彼女が見た事、感じたことを共有できたら、確実に世界は平和への道をたどって行けるんじゃないのかな、と思った。難しいけれども、私たちはそうしなきゃいけないんじゃないのかとも。
まず、身近な問題としていじめについて、もっと改善させるように、山本さんの言葉を忘れずにやっていけないだろうか。そうも考えさせる1冊だった。
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山本美香 (著)
『戦争を取材する ― 子どもたちは何を体験したのか』
講談社
2011.7.発行
ISBN:978-4-06-217049-9
どうして同じ人間が憎しみ合ったり殺し合ったりするのか、なぜ戦争がおこってしまうのか、平和のためにはどうしたらよいのか、親子で、友だち同士で話し合うきっかけになる一冊です。
(裏表紙より)
今、地球上で起きている戦争のその現場を取材し、現実を伝えるジャーナリスト 山本美香さんが、講談社の小学生むきノンフィクションシリーズ「世の中への扉」で著された1冊です。
女性ジャーナリストが取材した、世界の戦地で懸命に生きる子どもたちの姿を伝えながら、世界を良い方向にきっと変えられるはず!世界の戦争を知ることで、平和への道を一緒に考えてみましょう。
と、呼びかける かけがえのない1冊です。
読んでみて‥
本書の一文一文に著者の魂のこめられたそのメッセージに「それで自分はどうなんだ」と突き動かされました。
去年の出版でありながらその出版鮮度以上に、著された記述には自分の存在の意味を感じさせられます。
児童書に欠くべからざる大事なノンフィクションの分野から 小学生高学年に届けねばならない1冊。
まず大人が読んでみるべき1冊。
おすすめします。
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約1週間前、山本美香さんの訃報をニュースで知った。
ニュースを見ながら、どこか彼女の名前に見覚えがあったのだが、すぐには思い出せなかった。先月注文した本の著者だと後から知った。これから本で彼女の活動を知ろうと思ったのに、その前にこういうことになってしまうとは・・・。
戦争というものを体験したことがない平和すぎる日本人に、戦地での事実を伝えようとしていた矢先だ。子供兵士の話は読んでいて、子供達の悲惨さに言葉をなくしそうになった。
彼女の伝えたかったことを、私達一人ひとりが受け止めなきゃいけないなと思った。ご冥福お祈りします。
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シリアで銃弾に倒れた山本さんの本。
被害者の目線に立って、取材をするジャーナリストだったことがよくわかる。
子供向けに読者に語りかけるように書かれているため、読みやすいし、生々しい状況も伝わってくる。
もっと取材して、たくさんの本を書いてほしかった。
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命を危険にさらしても伝えたかったことが、本当に命を失ったことで伝わるということ。記者が命を落とすたび、急にトップニュースになること。そしてやがてまた遠い出来事になること。何とも効率の悪い、地道な仕事だと思う。そしてこういう地道な仕事がやはり必要なのだと思った。
2003年、取材拠点としていたホテルが爆撃され、仲間の死を目の当たりにした山本さんが頭を抱えて「ちくしょぉぉぉぉぉ」と振り絞った声の生々しさがずっと耳に残っていた。けれど、それはそれとして私の記憶の片隅に置かれ、やはり外国の戦争は私にとって遠い出来事となった。あれから9年。今回の悲報に接してまた思い出して、すぐに著書を注文した。ニュースからシリア問題が消えた頃、ようやく届いた。
実際に現地で見て聴いて、臭いをかぎ温度を感じた人の言葉。重い内容を優しく、大上段に振りかぶらない温かい視点で投げかけている。どっちが善で悪なのか。暴力では決して得られないものを求めて繰り返される不毛な「戦争」というものの姿を浮き彫りにしている。
違いを理解し合い、乗り越える。心の距離を縮めること。戦争をなくすために必要だと山本さんが呼びかける言葉はとてもシンプル。そして国家間でも、家族や友だち身近な人との間でも必要なこと。
シリアのニュースも山本さんの死の衝撃も薄れ、外国での戦争のことはきっとまた遠いできごとになると思う。そんな仕事に命をかける意味があるのか?山本さんも駆け出しの頃葛藤されたとのことだけれど、たとえ伝えたことが大多数の人にとって遠い出来事になって、そのことを忘れられたとしても、いつか何かの場面で、「違いを理解し合い乗り越える」、受け取ったメッセージは芽を出すことと思う。
まだまだ伝えたかったことはきっとあったでしょう。御冥福をお祈りします。
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シリアで亡くなった山本美香さんが、これまでの命懸けの取材で伝えたかったことを少しでの受け止めたいと思って読んだ。
この本は、小学生とか中学生の、学校の副教材として利用できることを想定して書かれているのですごく読みやすかった。
戦争の悲惨さ、無意味さ、勝ったとされる方も負けたとされる方も、大人も子どもも、男も女も、どれだけの人が不幸になるかが良く伝わってくる。
また、それらのことを通じて、いじめとかもダメだよっていうのも伝わると思う。
子どもが大きくなったら読ませてあげたい1冊。