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訳あって現在出版されているLTspice関係の書籍を調べました。と言っても非常にマイナーな領域なので、LTspiceを全面に押し出しているのは、現時点では本書とCQ出版社から出ている2冊だけです(たぶん)。その中で本書は最も詳細に書かれており、シミュレーションって何?というレベルの人には難しいと思いますが、ある程度わかっている人ならば本書が一番役に立つのではないでしょうか。ごくごく簡単に言えば、CQ出版社の2冊はこういう回路があって、こういう操作をしてシミュレーションしたらこういう結果になりましたというものですが、本書はもっと使い方に重点を置いた説明になっているので、LTspiceを使い方という意味ではいまいちです。
と言っても本書にも問題はあります。まずひとつは書き方がいわゆる「文章」として書いているので、技術書籍としては読みにくいということ。目次はそれなりには充実していますがいまいちで、何がどこに書いているのかがよくわからない、特に細かな操作、些細な操作は文中に出てくるだけなので、後になるとどこに書いてあるのか探すのに苦労します。
もう一つはシミュレーションとは関係のない電子回路の説明に必要以上にページを割いていること、これはあきらかに不要です。それと著者がSWレギュレータが専門のようで、そちらに比重が置かれすぎているということです。
と書いてきましたが、著者がLTspiceの開発者と会ったりしていて、単なる詳しいユーザーというレベルとは違うことはわかり、それは本書を読んでいてもところどころ普通のユーザーではわからないと思われることも書かれています。それなりに電子回路を知っていてシミュレーションの経験もある方におすすめです。