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紀元前525年ごろ、サモア島からの亡命者たちがスパルタ人へ助けを求める。祖国への帰還を手助けしてもらおうと、必死で自分たちの不遇と困窮をまくしたてた。スパルタ人の反応。話が長い。最初の方は忘れ、後半は理解できなかった…。サモア人のリベンジ。スパルタ人の性格を慮り、長広舌を撤回。からっぽの袋を指し示し、「この袋には大麦粉が入っていない」とつぶやく。これでスパルタからの軍事的援助を勝ち取ることに成功。よかったなサモア人。だが、スパルタ人はサモア人の起死回生の無言劇にダメを出す。「この袋には」は必要ないと…。
という逸話はヘロドトスにある。歴史家カートリッジはトゥキュディデスよりもヘロドトスと仲が良い。スパルタ人の冗長ぎらいは有名で、言葉は短ければ短いほどよいと考え、当意即妙の達人でもあった。
英語のlaconicは、簡潔な、という意味で、ルーツはスパルタ人の古名にある。ラコネス。カートリッジは、スパルタ人はほかのどの都市よりもごく手短に紹介されることを喜んだに違いない、と第7章冒頭で語る(p.70)。本書全体も簡潔な仕上がり。電車やバスや飛行機のなかで気軽に読める爽やかな書。