紙の本
坂の上の雲を目指した時とその後
2016/08/29 23:59
0人中、0人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:親譲りの無鉄砲 - この投稿者のレビュー一覧を見る
本書は、内村鑑三の異なる時期における講演録をまとめたものである。
「後世への最大遺物」は明治27年の日清戦争時のもので、内村といえども若い頃は、そこはかとなく時代の帝国主義的な社会的価値観に染まっていた様子がうかがえる。後世に何か残さなければいけない、という功名心或いは焦燥感は、まさに青年内村の明るさを感じる。ただし、残すべきは、重厚な事業的業績や文学的業績といった直接一般人にわかりやすいものではなく、「高尚なる生涯」なのだという。形になっていなくても、その人の生き様が後世の人間に及ぼす影響は恒久的なのである。
一方、「デンマルク国の話」は、韓国併合頃のものという。明らかに、拡張主義の日本帝国に対する批判的な精神を垣間見ることができる。内村の社会を見る目はそれだけ成熟していた。ドイツ・オーストリア連合に敗れたデンマークを引き合いに出すことによって、目線が明らかに、植民地化された韓国及び韓国の人々に注がれている。版図を大幅に失ったデンマークは帝国主義の物差しにおいては、明らかな負け組であった。しかし、内村は、大幅に領土を失っても、残った土地において戦争前の緑地以上の樅の森林を蘇生させたダルカスを、負けたままでは終わらなかった気高いデンマーク国民として高く称揚している。そのおかげで、(今でいう)一人あたりのGDPとでもいうべき経済指標は、他の欧米大国に比べ遜色ないどころか秀でていた(当時)という。戦争には負けたが、戦前よりも却って経済的には興隆した。もちろん、経済的な成功のみが評価されるべきものなのではない。内村は、戦争に敗れたときに、気落ちすることなく、誇りを高くもって、新たな道を模索したその気高さこそが称揚されるべきもの、と言っているのだろう。彼の言葉は、宗主国にありながら、植民地化された韓国へのエールとなっていた。 そこには、デンマーク人の生き様があり、内村自身が遺したいと思っていた「後世への最大遺物」と深く共振している。その点において内村はぶれることがなかった。
投稿元:
レビューを見る
ホリエモンの事件があってまず読み返したくなった一冊
「後世への最大遺物」
人は何を残して死んでいけるのか?
そして
お金を稼ぐのが上手な人が
必ずしもお金を上手に使えるとは限らない
なかなかユニークで深遠な内容
十代二十代の若者にぜひ読んでもらいたい
投稿元:
レビューを見る
この世の中を、私が死ぬときに生まれてたときよりも少しだけよくしたい。その心がけに心打たれました。なにか、次の世代へ残せるよう生きていきます。
投稿元:
レビューを見る
大学の授業、課題図書で読んだ。己の命が尽きるまでに果たしてこの世界に残せる最高の遺物とはなにか?を問う。気持ちがいい。
投稿元:
レビューを見る
キリシタンのくせに金カネ言ってるから最初びっくりしたんだけど(笑)私利私欲のためでなく、世界のために遺す金ですか。ははー
投稿元:
レビューを見る
手元に置いて何度も読みたい本。著者の言うように、真面目な生涯を送りたいものです。
他の人の行くことを嫌うところへ行け
他の人の嫌がることをなせ
メリー・ライオン
投稿元:
レビューを見る
働く目的は、それこそこの本のタイトルなのである。そして、生まれてきたからには、少しでも地球を良くして死のうと。
私達が生まれてきて、豊かな生活を享受できるのも祖先のおかげである。このまま産業の発展に突き進めばかならず世界は崩壊する。
だからこそ今必要なのは、環境技術であり、相手を思いやる心であり、地球を良くしようという思いだ。そしてそれを胸に秘め働くことなのである。
投稿元:
レビューを見る
内村鑑三の講演を速記し文章に起こしたもの。時代は明治時代。
「後世への最大遺物」では人間がその人生を通して後の世の人々や社会のために残すべきものは何かという問いから話は始まる。お金、事業、文学などは後世への大きな遺物であるが、誰もがそれを成せるわけではない。誰もができる最大の遺物は何か。それは「勇ましい高尚なる生涯」を生きることだという。つまり、一人一人が一生懸命に生き切るその生き様が後世への大きな贈り物となるのだという。「デンマルク国の話」ではデンマークの敗戦後の復興の仕方や植林事業の話などをもとに、自然の生産力や国家のあり方に目を向ける。二つの話を通して、時代を超え明治の雰囲気に触れられるところが素晴らしい。 cf.『仕事の思想』
投稿元:
レビューを見る
ガツンと来る人にはガツンと来そうな本(来た一人)。
読んだ時期が若ければ若いほど影響を受けそうな気もします。
でもやっぱり、メッセージ性が強いだけに人を選ぶかも…。
歴史的に内村鑑三はあまり好きとも言えない人だったのですが、
この本を読んで、内村鑑三の人間性が好きになりました。
死ぬとき、何を残して死ぬか?と言う話です。
投稿元:
レビューを見る
小説ではなく、明治27年7月に箱根で行なわれた夏季学校の中で行なわれた講演を速記で収めたものらしい。
この話、当時に生きて生で聞きたかったなぁ。
投稿元:
レビューを見る
「我が愛する友よ,我々が死ぬときには,われわれが生まれたときより世の中を少しなりともよくして往こうではないか」
「……最大遺物とは何であるか。私が考えてみますに人間が後世に遺すことのできる,ソウしてこれは誰にも遺すことのできるところの遺物で,利益ばかりあって害のない遺物がある。それは何であるかならば勇ましい高尚なる生涯であると思います。……この世の中は悲嘆の世の中でなくして,歓喜の世の中であるという考えをわれわれの生涯に実行して,その生涯を世の中への贈物としてこの世を去るということであります。」
投稿元:
レビューを見る
後世に何を遺せるか。
20ちょいの私がこんなこと考えるのはまだ早い気はしますが、死んでから世界を変えた人間はたくさんいるんよな。
金とか事業とか文学とか、遺す方法は色々あるけど、生涯が一番やと。二宮金次郎とかな。
色々あるなー、世界を変える方法は。
一緒に収録されてたんが、デンマークの話。
戦敗してから蘇ったこの資源も人口もなき小さな国。
内発的開発のいい例ちゃうかな。人工的に荒廃した土地を根気よく植林することで豊かに蘇らせた。
苦難の時代に滅亡しないかどうかが国のほんまの強さを決める。
深かった!
投稿元:
レビューを見る
すごく薄くて読みやすい本。
でも人生を前向きに生きれるようになると思う。
1897年に内村鑑三氏が学生に向かって述べた講演。
一番驚き、かつ感動したのは、100年後の人々が我々の生き方をみたら勇気づけられるような生き方をしよう!と言っていた点であった。つまり、困難に打ち勝つ人生を送ろうと。
内村鑑三氏は当時にしては珍しく敬虔なクリスチャンであった。
おそらく、相当な迫害も経験したであろうし、若くして娘を亡くされている。
そんな経験をしながらも、困難を乗り越えてその人生の足跡を残すことが後世に残せる最大の遺物である、と学生にむかって述べている。
当時は1897年であり、まさに100年後にその最大遺物が私のもとにも届いた思いがした。
投稿元:
レビューを見る
中村哲さんがペシャワール会にやってくる若者たちに読ませている本であるらしい。
内村鑑三が1894年7月に講演したものが書かれているので、その当時のしゃべり言葉で書かれている。笑いが起こった場面では「(大笑い)」と文末に書かれていたりする。
中村哲さんがよく言う「他の人の行くことを嫌うところへ行け。他の人の嫌がることをなせ。」の話も出ている。
内村鑑三がいう「後世への最大遺物」とは「勇ましい高尚なる生涯」であると書かれている。中村哲さんの生き方は、まさにこの本の書かれている通りだなと思った。
投稿元:
レビューを見る
星野リゾートの教科書で紹介されたいた本です。後世に残せるものは、金か、事業か、思想か、最大遺物は・・・高尚なる生涯である。二宮金次郎像は、一時期全国の小学校にあったような気がします・・・。今はあまり見ない・・・