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この居眠り紋蔵シリーズも単行本で買い読んだのだが文庫版が出たので再購入したもの。単行本が2008年刊だから既に三年も経ってしまっているので流石に内容は忘れていたために、まるで初見のように楽しめた。読んでいて気が付いたのだが、紋蔵の娘や息子が通う手習所の名前は、佐藤雅義のもう一つの作品・縮尻シリーズで娘がやっている手習所「知新堂」と同じ名前ではないか。此れまで随分と読んでいて全く気が付かなかった。こんなところで佐藤な遊び心を出していたのか。
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今回もトトーンと読んでしまった。主人公家族の状況が一変しているので一冊くらい飛ばしてしまったかもしれないが、それも関係なく楽しませてくれます。
人の執念というか煩悩が、まったく関係無いと思われる事件を意外な形で結びついて収束します。毎回唸ってしまうのです。
著者の時代の知識と盛り込み方が、実際にこの時代の耳袋的な資料から拾っておるのではないかというリアリティを持たせるのです。しかも著者特有のちょっと突き放したような筆致が、ドロドロになりそうな事件を軽妙に読ませているのですね。
今回、江戸時代の出版事情に興味有る方はより一層面白く読めるかも知れません。
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江戸後期、居眠りの持病を抱える物書同心の事件帳
相変わらず面白い。
判例係に道を定めた紋蔵の家族はどの家を継ぐかでそれぞれに道を見つけ、結局紋蔵の後を継ぐのは養子になりそうだ。
時代的に感覚は違うかもしれないが、それを問題にしないのは器の大きいことだと思う。
好きだったのは、お奉行の手柄と、タイトルの筆禍の話か。
資料性豊かなこの筆者のスタイルが良く出ている噺だったと思う。
あとは、天網恢恢の終盤の怒涛の展開が、珍しい超展開を見るようで面白かった。
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文吉もすっかり大人っぽくなっちゃって…
「それをなんとかしてこられたのが父上ではないのですか」と息子に詰め寄られてムムムと唸る紋蔵さんが愛おしいです。
それにしても紋蔵さんと大竹金吾は仲良すぎですね。奥さん公認か。
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女心と妙の決心
江戸相撲八百長崩れ殺し一件
御奉行御手柄の鼻息
文吉の初恋
天網恢恢疎にして漏らさず
一心斎不覚の筆禍
糞尿ばらまき一件始末
十四の娘を救ったお化け
時代考証に定評がある作者だが、小説というよりどんどん歴史解説書に近くなってきて、説明文が長くなってしまった。この確かな史実に基づいた知識の中から生み出される事件が、他の小説と違ってこの作者の面白いところなのだが、こう説明が長いと読む進めるのが辛い。
文吉と勘太が戻ってきて、どうやら文吉は紋蔵の跡取りとなり同心の道を進む決心をしたらしいというのが、この9巻の抑えどころか。
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目次
・女心と妙の決心
・江戸相撲八百長崩れ殺し一件
・御奉行御手柄の鼻息
・文吉の初恋
・天網恢恢(てんもうかいかい)疎にして漏らさず
・一心斎(いっしんさい)不覚の筆禍
・糞尿ばらまき一件始末
・十四の娘を救ったお化け
二人の息子を養子に出し、娘二人も嫁に行き、残る末娘の行く先を悩む紋蔵。婿を取って跡を継いでもらうか、貧乏同心の跡を継ぐよりそこそこの商家に嫁がせるか。
そこへ、侠客の親分の元へ出て行った、預かり子の文吉と勘太が、親分の死により紋蔵のところへ帰って来る。
ついに観念した文吉は紋蔵の跡を継ぐ決心をし、心を入れ替え学問に打ち込むことにし、妙は心置きなく嫁に行く…ことになるのかな。
紋蔵一家のストーリーとは別に、今回は表題作が白眉であった。
いくつもの古文書を読みくらべて事実を読み解くだけではなく、実際に現地へ足を運び、記述に齟齬はないか確認し、歴史の真実を見てきたように講釈する。
ああ、何とすばらしい仕事だろう。
と思ったのに、彼の本業に仰天してしまう。
「天網恢恢疎にして漏らさず」も、40年前に殺された妹の仇をとるために、家業の傍らずっと犯人を捜し続けた執念。
40年、市井の人として生きてきた犯人が見つかってしまったのは、自分勝手な行いのせいで自業自得。
とはいえ、40年。その長さにめまいがしそうだ。