紙の本
「ヨーロッパから見た「世界史」」だけでなく
2024/02/24 22:58
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投稿者:ichikawan - この投稿者のレビュー一覧を見る
日本においても「世界史」はどうしても「ヨーロッパから見た「世界史」」になりがちである。イスラームから見ればそれが違ったものに映るのは当然のことであり、日本からもその視点を学ぶ必要がある。
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新聞の書評などにのっていたため、購入。
著者のタミム・アンサーリーは、アメリカの高校の世界史の教科書ライターであり、かつ、アフガニスタンからの移住者。
イスラムからみた世界史を書くにはうってつけ。とてもやさしく、違う視点の世界史が理解できる。
全体を通して、西洋の近代化にイスラムは遅れたが、その違いはほんのわずかなこと。西洋の近代化が宗教改革を通じて、宗教と科学の分離、そしてプロテスタントを通じた資本主義、産業革命の発展につながったが、その宗教改革の動きがイスラムではちょっと遅かったということ。
それが近代での科学技術の大きな差になった。(p204)
日本はどうだったか。明治維新ののちの近代化技術の導入にあまり宗教は妨げにならなかったようにも思えるが、それは幸いだったのかもしれない。
その他のおもしろい情報。
①日本人にはシーア派とスンニー派の違いがわかりにくいが、マホメッドの娘婿のアリーまでの間の世俗的なカリフを認めるのがスンニー派で、認めないのがシーア派。よりシーア派の方が宗教に純粋。(p154)
②第一次世界大戦のあとのフランスとイギリスの中東での国境ひきは、シリアをフランスに、あとはフランスにまず分けた。フランスは、シリアのうち大事にしていたマロン派のキリスト教徒が多数になるようレバノンの国境をひいた。イギリスは、オスマントルコを裏側から攻撃するのに協力したハーシム家の二人の兄弟に対して、イラクとヨルダンを分離して渡した。(p565)
③第二次世界大戦中に、ルーズベルトとサウジのサウード家は口頭で、アメリカに石油の利権を自由にするかわりに、サウード家をアメリカは守るために兵器と軍事技術を提供すると約束した。(p572)
イスラムの視点からみると、植民地時代は、英仏が、第二次世界大戦以降は米国が、政権と癒着して、イスラムを腐敗させたと読める。
この意識を西洋諸国が理解することが大事だと思う。
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これは面白い。
イスラムが抱える問題がわかったような気になる。
イスラムが基本的には共同体であることと戦勝によって
信仰が強化されていった過程が興味深い。
ムハンマドは商人だったが、イスラムには資本主義エートスを
育む余地は狭いようだ。
今、アラブに起きているのは世上いわれる性質のものではないことも・・・
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日本にいると、なかなかイスラムの現状が伝わって来ず、怖い、治安が悪い、原理主義といったイメージが先行してしまう。しかし本当にそうなら、イスラム教の信者がここまで増えることはなかっただろう。ということで、ずっとイスラム側から見た歴史や現状を知りたかった。
イスラムの暮らしは宗教に根付いている。というより生活習慣を含めてイスラム教であるという。「こうならこう」という型が決まっているせいか、うつ病になる人が非常に少ないという話を聞いたことがある。カウンセリング大国のキリスト教国アメリカとは大きな違いだ。
自分たちがイスラムであることを誇りに思う反面、西洋から遅れているという意識も文章から垣間見れた。「遅れているから西洋化」対「自由で乱れた暮らしになったから原理主義」の狭間に立たされているイスラム圏。これは現在の姿かと思いきや、昔からこの波に揺れ動かされてきた歴史があったことが分かった。
今まで読んだ中で最もイスラムに近づけるような気がした一冊。
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イスラームの歴史の物語です。イスラームの誕生から、興隆・分裂・発展、ヨーロッパ世界との出会い、そして近代へと大きなスケールでストーリーが語られます。学校で習った世界史とは異なる世界史が展開されていきます。例えば、イスラーム世界へ与えた影響は十字軍よりもモンゴル軍の方が大きかったとか。
普段あまりなじみのないイスラームを知ることができます。イスラームとは、宗教であると同時に、正しい共同体を築くための社会事業でした。現在アラブ諸国で起きていることについて複眼的な見方ができるようになったと思います。
イスラームの世界史観に触れることで、自分の世界史観や文化観を見直すきっかけに使えます。
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レビューはブログにて
http://ameblo.jp/w92-3/entry-11163349812.html
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図書館で借りてきたが、半分まで読んだところでタイムアップ。
次の予約があったので延長不可。残念。
続きを読みたいので、また借りたい。
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私たちが学校で習う世界史とは、ヨーロッパ中心、キリスト教中心の世界史であり、ミドルワールドであるイスラム文化から見ると、世界史も違った見方ができるのではないか。
とともに、イスラム教がどういう宗教・共同体であるかが分かるのではないかと思いつつ読んだけど、
とりあえず、いったん図書館に返却します・・・。
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世界史に興味がある方にオススメです。
日本人の視点が西洋の影響を強く受けていることを実感できます。何だが良く分からなかった中東諸国のアイデンティティを理解する一助になります。
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中東/中央アジアの歴史を、イスラームの文化の成り立ちと発展の視点から追っており、古代から現代まで(アラブの春まで言及している)一気通貫で読ませる。
なにより作者の物語の力量が高く、面白い。それでいて、発展の文化、経済、地理、歴史的背景もよくわかるという好著。
現代地政学の良書を探していたのだが、こんなところにあるとはという嬉しい発見。
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もっとも新しい世界宗教としてのイスラームの歴史と生活。平板な認識を更新する一書
日本と西洋社会に共通している問題とは何か。それはその両者の間に広く・深く息づくイスラーム世界に対する認識だ。本書は、南アジアからトルコ・エジプトに至るイスラーム世界を、その勃興の歴史と西洋社会との交渉史をひとつの「物語」として描写する一冊だ。筆者は、欧米中心の歴史認識に由来する「中東」という名称を避け、それら舞台の地域を「ミドルワールド」と呼ぶ。まさに、地中海世界と中華世界の中間に位置する世界だ。
著者はアフガニスタンで生まれ育ったイスラーム教徒、現在はサンフランシスコで作家として生活しながら、アメリカの世界史教科書の執筆者としても活躍しているという。
世界史で思い出したついでに、日本で教授される高等学校の世界史でも、筆者は、ムハンマド以後のイスラーム世界が、西洋社会に比べると、「大都市の発展」、「にぎわう市場」、そして「寛容な政策」と多彩な「文化的活動」の社会であると習ったと記憶する。このキーワードは、同時代の世界文明と比べても最も挑発的かつ挑戦的に躍動したのがイスラームだったのではないだろうか、ということだ。
イスラームが躍動するのは、そもそもそれが最も新しい世界宗教だったからでもある。その歩みは、たえず西洋や東洋……説くに騎馬民族との挑戦と応答のなかで、展開していったことをどこかで僕達は失念したのではないか……そんなことを考えさせられた。平板なイメージと、ためにするように脚色されたイスラーム感を小気味よく一新してくれる。
CNNの報道が世界のスタンダードと錯覚するのが現在の日本人だろう。本書は日本人の歴史観を多面的なものへとスライドさせるうえで刺激に満ちた一冊である。
最後に著者の史観についてひとつだけ紹介しておこう。著者は、個人と社会の関係について、キリスト教との対比から、キリスト教は基本的に個々人の救済にかかわるものであり、イスラームは共同体形成に重きを置くという視座をはっきりさせている。これは教科書的な記述といってもよい。しかしそこに筆者は留まらない。
話題は昨年春の「アラブの春」まで及ぶ。しかし筆者は聖戦と暴力の関係についても教条的な議論は新調に退ける。このバランス感覚にはおどろくばかりである。
想像力を少しだけたくましくしよう。
筆者はイデオロギーにも慣習にも本来的には無縁であったバザールの光景を幼い頃、アフガニスタンで眺めていたのかも知れない。生きた人間のまなざしから人間の営為を振り返る素晴らしい一冊だ。
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ミドルワールド
ヒジュラ
カリフ制の誕生
分裂
ウマイヤ朝
アッバース朝の時代
学者・哲学者・スーフィー
トルコ系王朝の出現
災厄
再生
ヨーロッパの状況
西ヨーロッパの東方進出
改革運動
産業・憲法・ナショナリズム
世俗的近代主義の隆盛
近代化の危機
潮流の変化
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著者はパシュトゥーン族のアフガニスタン人の父とフィンランド系アメリカ人の母の間に生まれ、アメリカの高校に留学するまでアフガニスタンで人生を過ごしました。
その為、イスラームと西欧の2つの考えに通じている人物です。
この様な著者によって執筆された本書。
題名からも分かる様に西欧視点で語られる事が圧倒的に多い世界史を、イスラームの視点から見つめ直してみる一冊で、本書を読む事によりイスラームの歴史を鳥瞰的に見ることが出来、またそれによってサウジアラビアとワッハーブ派の関係、トルコとアルメニア人の対立、イランとその他アラブ諸国との対立等、様々な諸問題の根源を知る事が出来ます。
またそれ以外にも、イランはなぜシーア派の国になったのか、ナショナリズムがイスラームに与えた影響、スンニ派(本書ではスンナ派と記述)とシーア派の誕生の経緯等、十字軍がイスラームに与えた影響等、はるかな過去と現代との繋がりが理解出来る内容でもあります。
取り上げている歴史は、本文中ではメソポタミア文明から9.11までであり、邦書版である本書ではその後、著者が2011年5月に書いた日本の読者向けの解説でアラブの春についても解説が行われています。
加えて上記で記した他に、イスラーム教の各宗派がそれぞれどの様な経緯で誕生したのか、イスラームの様々な用語が持つ意味とその言葉が指し示す概念や出来事、存在がどの様な経緯で起きたのか、誕生したのかと言った歴史も解説がなされています。
とにかく、内容が盛り沢山であり、イスラームについて知りたければ(少なくとも邦書において現時点では)本書を越えるものは無いのではないでしょうか。
イスラーム入門書としては間違いなしの一押しです。
(本書を読んだ後では誰であれ)ニュースやNHKスペシャルと言ったテレビ番組で目にする表層的な(本書を読んだ今となってはこの言葉すら適切か否か、疑問を感じていますが・・・)イスラーム解説などでは、一時的に分かった様な気持ちになりこそすれ、全く分かっていないのだと言う事は間違いなく理解できる内容でした。
イスラームについて理解したければ必読の一冊。
興味をお感じになられれば一読されては如何でしょうか。
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マルチサイトのゲームをプレイする感覚を、実世界の、しかも悠久の世界史の流れを漂いながら感じることができるとは。
600P超のボリュームも読み飛ばしを許さない、随所で感じる「あの時こちらの登場人物はこうだったのか」という鳥瞰の快感。
別の視点の歴史がある、という真理は日本人には受け入れやすいというか自明。
片側の言い分しか聞いてこなかった不明を恥じ、その上で中道を進みたい。
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イスラームが生まれてから今に至るまでのもう一つの世界史。教科書で読んで知ってたような事実も丁寧に語られててイメージも湧くし、実態はどんなだったかなってのがわかる。だから頭にも大まかに流れが残るし。
これを読めば初期のイスラーム、拡大の背景、モンゴルや西洋との接触、スンニ派とシーア派、アラブの国民国家、王制と共和制、イスラーム思想史と大事なことを一通り把握できる超優良な本。
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全660㌻超の大作。西洋中心主義になりがちな世界史をイスラーム側から描いた作品。イスラーム入門、世界史入門にピッタリの作品。