紙の本
よくあるファンタジーかと思ったら
2016/08/02 18:55
4人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:ケロン - この投稿者のレビュー一覧を見る
表紙のイラストのファンタジックさにひかれて読みましたが、一切甘さのないお話でした。
切なく、悲しく、苦しく、それでいて希望に満ち溢れた物語。
どんな場合でも救いはあるのだと信じたくなるのです。
挿絵も素敵で、いつでも手に取れる場所に置いておきたい本です。
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主人公の叫びに、ココロが呼応して泣きました。
本を読んでて声あげて泣いたの、ひさしぶり。
離すの、こわくてたまんないのに。
離したくないっ。と思ってるのに。
おしつぶされそうになって、じぶんから離してしまった手。
のみこまれる、じぶんの内なる暗闇に。炎に。
……。
むむぅ。
わたしのなかの怪物が、この本をひきよせたのだろうか……。
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(2012/01/01購入)(2012/01/09読了)
正月早々、えらく暗い本を買ってしもうた。
━━物語は凶暴だ。野生の獣みたいなものだ。ときとして、だれも予想していなかった方角へ、とんでもない勢いで走りだす。(144頁)
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コナーの罰を求める気持ちの辛さ、大事な人を失いつつある状況の行き詰まった感じが怪物との出会いで乱暴ながらも癒されていく様子が圧巻。
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両親が離婚して母親と二人暮らしの少年・コナー。父親は、再婚して米国に住んでいる。母は、病気(癌?)で闘病中。いろいろな治療を受けるが、そのたびに体調が悪くなり、近くに住む祖母が手伝いにやってくる。コナーは祖母とうまくやっていけない。
学校でも病気で苦しむ母親のいるかわいそうな少年と見られ、教師たちからは特別な配慮をされ、クラスメイト達からは完全に孤立し、いじめの対象にもなっている。
そんなコナーは、イチイの木の巨人の訪問を受ける。その怪物が4つの物語をし、そのあとコナーがその続きの話をしろと言う。
悪夢のような怪物の登場、母親の闘病、学校でのいじめ、祖母や父親との葛藤…。
怪物の物語のなかから、自分の心の中の矛盾や恐怖、死との対峙を受け入れていくコナーを描く。
イラストとともに迫ってくる怪物の圧迫感。サイコスリラーかファンタジーものかと思わせる導入でありながら、死と向き合う少年の心理を深く印象的につづっている。
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13歳の少年、コナー・オマリー。
ある時、彼のもとにイチイの木の怪物がやってくるようになる。
怪物がやってくる時間は、いつも12時7分ぴったり。
夢とも現実とも定かでない世界で、怪物はコナーにこう語りかける。
「これから、おまえに3つの物語を話して聞かせる。そして、その後、おまえが4つめの物語を私に話すのだ。ただの物語ではない”おまえの真実”の物語を」
一体、何が目的か、と問うコナーに対し、怪物は
「質問を間違えているぞ。問題は、私が何を求めているかではない。おまえが私に何を求めているかだ」
と答える。
怪物を呼んだのはコナー自身だという。
コナーの中の何かが、怪物を呼んでしまったのだ。
ちなみに怪物は決まった名前を持っていない。イチイの木の姿をしているのも「この姿が一番ラク」だから。
ただ、最初の方で自ら
「狩人ハーン」
であり
「樹木神ケルヌンノス」
でもあり
「森の番人グリーンマン」
でもある、と名乗っている。
少し調べてみると、それぞれ元が一緒だったりと関係がある神々。
その中の「ケルヌンノス」は冥府の神とされている。
実のところ、怪物は「コナーの真実」を最初から(ある程度まで)知っているような節がある。
怪物=摩訶不思議な技を使う未知の存在、なので「コナーの真実」を知っていても不思議はない、とも考えられるが、「冥府の神」だから、というのも理由の一つとして考えられそうだ。
(「コナーの真実」はこの辺りに関わる内容)
怪物の目的は「コナーの真実」を知る事ではなく「コナーに真実を語らせる事」
怪物のセリフからも想像できるかもしれないが、「3つの物語」は「4つめの物語」を引き出すための「枕」にすぎない。
怪物が語る物語は、どれも一癖ある物語ばかり。相反する気持ちを同時に抱えた者たちの物語、という点では共通している。
ただ怪物自身も相反する心を抱えているという点では一緒。
毒でもあり、薬でもあるイチイの木の姿をしている事がそれを象徴しているのかもしれない。
挿絵も豊富だが、すべて白黒。怪物も含めた「人物」はシルエットのみのため、不気味な雰囲気を醸し出す。
怪物に”おまえの真実”の物語、と言われた時、コナーは心の奥底で、思い当たるものを感じる。
それはコナーにとって、とてつもなく怖ろしい物語。それを語るくらいなら死んだ方がまし、とさえ思えるほどのもの。
ただ、その物語の底には「3つの物語」と共通するものが流れている。ある意味、「3つの物語」は形を変えた「コナーの物語」でもある。
恐怖を乗り越えるために、恐怖と向き合う。
ごもっとも、と思うが、実際にやってみろ、と言われたら、こう即答するだろう。
「謹んでお断りします」
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ジュブナイルとは思えないほど深く考えさせられる作品。
今だから理解できるけど、10代で読んだら理解できたかどうか。
後半はもうぼろぼろ泣きながら読み終えました。レビューも泣きながら書いてます…
感動した所(本文引用)
物語にかならず善玉がいるとはかぎらん。悪玉についても同じだ。たいがいの人間は、善と悪のあいだのどこかに位置してるものだ。p74
物語は大事な意味を持っている。怪物が言う。ときには、この世の何より力を持つこともある。そこに真実がふくまれているならば。
p151
人間とは実に複雑な生き物だからね。怪物が言った。女王は善良な魔女であり、同時に邪悪な魔女でもあった。そんなことがありえるだろうか。王子は殺人者であり、同時に救世主でもあった。アポセカリーは欲深い人間であり、同時に正しい考えの持ち主だった。司祭は身勝手な男であり、同時に思いやりのある人物だった。そんなことがどうしてありえる?だれからも見えなかった男の孤独は、見えるようになったことでかえって深まった。なぜだ?・・・おまえが何を考えようと関係ないのだよ。人間の心は、毎日、矛盾したことを幾度となく考えるものだ・・・人の心は、都合のよい嘘を信じようとするものだ。しかし同時に、自分を慰めるための嘘が必要になるような痛ましい真実もちゃんと理解している。そして人の心は、嘘と真実を同時に信じた自分に罰を与えようとするのだ。p201
コナーは母さんを抱きしめた・・・そうすることで、今度こそ本当に母さんの手を放すことができた。
人の心は怪物なのだと思った。
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朝のラジオで紹介されていたのがきっかけでした。
コナーを取り巻く状況は暗いです。
学校での孤独に閉塞していき、病床に付く母を慕いながらも、自分の心の内に怯え、罰を受けたいと感じているコナー。
コナーの心の動きが怪物との交流で明かされた時には、泣きました。
挿絵も迫力あり。
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ごつごつとして一筋縄ではいかない荒々しい現実。それに立ち向かう術を、少年に与えるものは何か?
荒削りで、容易には乗りこなせない荒馬のような、強烈な魅力のある物語である。
主人公は母と暮らす13歳の少年。母は死病を得ている。父と母とは離婚した。母方の祖母が母の看病と少年の世話に来てくれるが、少年は祖母が好きではない。学校ではいじめっ子集団に嫌がらせを受けている。それも発端は母の病気が皆に知られたためだ。
ままならぬ日々。鬱屈する思い。
そんな少年の元を怪物が夜な夜な訪れるようになる。怪物は少年に呼ばれたという。そして怪物が3つの物語をした後、少年に第四の物語を語れと告げる。自分自身の、真実の物語を。
制御することのできない現実。その現実を渡っていく力を与える物語。それは調和の取れたおとなしやかなものではないかもしれない。自分の思うとおりにもなってくれないだろう。だが最後まで寄り添い、証人となってくれる、誠実さを持っている。
現代の現実を描いていながら同時にファンタジックでもある。
迸る咆哮のような挿絵もまたすばらしい。
*2012年中学生向けの課題図書となっている。
うーん。この本で読書感想文を、というのも分かる気もするが、なかなかハードルが高そうだなぁ・・・。「感想文書けって言われて、わけわかんないの読まされた」って思う子が出そうで、そうだったらちょっともったいない気もするが。
*作中のイチイは、ヨーロッパイチイ(セイヨウイチイ)。タキソールの原料、10-デアセチルバッカチンIIIが取れることで知られる。
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怪物が3つの物語をコナーに聞かせる。
物事は、人は、善・悪、正・誤とそれほど簡単に割り切れるものなのだろうか。
名君と慕われた王の過去に犯した罪。
聖人と言われながら信じる心を捨ててしまった司祭。
金の亡者アポセカリーが人々のためになる薬を残そうと心をくだく。
○×方式ですぐ答の出る問題ばかり解きたがる現代っ子たちに
人間の持つ相反する感情、性癖、善と悪の間で揺れ動く心が
自分の中にもある存在することを洗い出してくれる。
「真実を語る」難しさは、自分と向き合う難しさであったのだ。
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コナーは母さんを抱きしめた。二度と放してなるものかと抱き締めた。
そうすることで、今度こそ本当に母さんの手を放すことができた。
コナー・オマリー イチイの木 12時7分 真実のなかの真実
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これは児童書なのか、大人向けの本なのか・・・。
読み終わって、何だかドヨヨ~ンとする感じ。
挿絵も黒で迫力があり、これまた不思議と引き込まれる。
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13歳のコナー両親は離婚、おまけに母親は重病、学校ではいじめられ、一緒に住もうと言ってくれる祖母は好きになれない。
そんなコナーのもとにイチイの木が怪物となって現れる。
怪物は3つの話を日をおいて話をする。そして3つ目の話を語り終えたらコナーが自分の話をしないといけないという。
自分の話とは何なのか、怪物は母親も病気を癒してくれるのか、不思議な話に引き込まれる。
自分で自分を悲劇の主人公にまつりあげてしまし、て物事に対処しないでうっちゃっておくとどうなるか、物事に対処するにはどうするべきか。
世の中の矛盾、心の葛藤との闘い。挿絵もストーリーテリングもよくできている。
このようなファンタジーであっても心のありようのあるべき姿を書いてしまういかにもアメリカ文学である。嵐に立ち向かうための勇気とは何か問いかける本である。
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読み終わって、はぁっと息をついた。
知らないうちに力が入っていたみたいだ。
イチイの木の姿をした怪物。
怪物が語る3つの物語。
そして少年が語る4ばんめの物語。
心がぎゅうっと苦しくなる。
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おもしろかったww深い・・。どこに落ち着くかわかりながらも意外な展開でした☆ちょっと急いで読んでしまいましたが、じっくり時間をかけて読むべき本ですね・・。是非、読んでいただきたい・・。人間とは複雑なもの。そしてどう行動するかが大切。まだまだ真理を読み込めてないかなww