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命の期限を区切られた男の静かな中にも譲れない武士としての
誇りや生き様が、とても印象的な話しだった。
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前半はちょっとまどろっこしかったが、暗闇祭りのあたりから、怒濤の展開。後半は涙がちょちょぎれた。
高潔な人間のかっこうよさや、友情の深さなど考えさせられるものが多かった。源吉がかわいそうでならない。
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私が本を読み始めて初めて先を読むのが怖くなった。秋谷の生き方、庄三郎や郁太郎の生きる先を知る事が恐ろしくて読む事に怖気を感じた。それ位リアルに哲人の様な芯の有る直線的な生き方の先を知る事が怖かった。素晴らしい小説。
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「命を区切られたとき、人は如何に生きるのか?」命を区切られた男の気高い生きざまを描く。「ひとは心の目指すところに向かって生きている。それが志であり、それが果されるのであれば命が絶たれることも恐ろしくない」
主人公の「秋谷」が、少し話しすぎ感はあるが、葉室麟、さすがの秀作。
文章の美しさもさることがながら、「山々に春霞が薄く棚引き、満開の山桜がはらはらと花びらを舞い散らせている。」「わずかに茜色が残る雲が切れ切れに空を流れ木々の匂いが瑞々しく感じられる。」命の期限を限られたものを描くのに、洗練された端的な文章で季節の移り変わりの情景を浮かび上がらせるのもすばらしい。
葉室麟は何度も直木賞候補になりながらも、受賞を逃してきたが、それは選考委員の単なる感性であり、「秋月記」「川あかり」「橘花妙」他でも受賞しておかしくない作品群をだしてきている。
「星火瞬く」「刀伊入寇」のように、”これ、どうなの?”あれだけの本を書く作家が・・・とギャップがあるものも事実だが。
藤沢周平に近いという意見もあるが、そうとも思わない。 「葉室麟」は間違いなく一平二太郎に匹敵し、その誰とも違う正統派の巨匠と言われる作家だろう。その多くは大きな力・流れに立ち向かい自分らしさを見失わず生きる姿を描く。
坦々というか滔々と流れる川のように静かに描くため、最初はテンポが遅いと感じるが、読んでいくうちに終わって欲しくないと思ってくる。
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第146回直木賞受賞作。
九州のとある藩を舞台に、切腹を命じられ山奥の村に幽閉されている武士とその家族、そして彼らを監視するために派遣された若き武士の交流を描く。
藩の権力争いや、武士と農民の対立なども描かれていますが、期限が決めれていて、3年後に切腹しなければならない戸田秋谷(とだしゅうこく)とその家族の生き方が鮮烈に印象に残る作品。
家族を想い、懸命に生きる人々に涙しました。
対して己のためだけに生きる人間のなんと浅はかで醜いことか。
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葉室作品の真骨頂だな~。己の命の期限を定められ幽閉された元奉行と監視役の武士との心のふれあいがテーマ。武士道と家族愛、隣人愛を移り行く四季の風景と共に丁寧に描くことで生命の尊さを見事に描く。「蜩の鳴く声は命の燃える音に似て‥」一気に引き込まれそしてふか~い余韻。
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歩むべき道を見いだせないこの国のすべての人に読んでほしい―この覚悟を見よ。幽閉先での家譜編纂と十年後の切腹を命じられた男。何を思い、その日に向かって生きるのか?
穏やかな山間の風景の中に気高く凄絶な生き様を謳いあげた渾身力作。
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人間ドラマとしても、歴史小説としても楽しめました。最後の展開でどうにもできないもどかしさなどはどうしても感じてしまいましたが、登場人物たちが前向きな気持ちに向かった状態で物語が終わったので、少し救われた気分になりました。
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定めのある命の生き方と、それを見届ける役割を命ぜられる。
取るべくして直木賞を取ったのかなと思われる作品。
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帯に「心ふるわす、感涙の傑作」とありますが
本当に、心がふるえて、つらくて、でもやさしくて、あたたかくて
後半は涙が止まりません
たくさんの付箋をつけた箇所があって、紹介したいけれど
これから読む人の楽しみを取ることになりそうなので、
とても素晴らしい本だと思うので、ぜひぜひ読んでみて
そして、語り合いたいなぁと思います
読みごたえのある、素晴らしい本にまた出会えてよかった
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切腹を命じられても武士の誇りを忘れずに生きていく男と家族の話。夢中になるような感じではないですが、読了後のすがすがしさはあります。さすが直木賞受賞作。
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第146回直木賞受賞作品。
読み終わったいま格調高く期待以上の作品だったと満足している。
戸田秋谷は人としてかくあるべきと言うような素晴らしい人物。
その秋谷の元へ遣わせられた若き庄三郎が秋谷に感化されていく描写も納得できる。
これぞ武士と思う清廉な秋谷、涙が止まらない場面もいくつかあった。
「柚子は九年で花が咲く」 葉室氏のエッセーで知ったこの言葉、いかにも氏らしい。
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直木賞受賞作。
「小説NON」に「秋蜩」と題して連載されたものの改題、単行本化。
小さな藩の権力闘争に運命を翻弄されながらも、信念を持って真摯に生きる武士の姿を描いている秀作。
5年前に『銀漢の賦』を読んで、この人は直木賞作家になると予感した。
豊後羽根(うね)藩の奥右筆壇野庄三郎は、家老の甥でもある同僚の親友と城中で諍いを起こして抜刀し、相手の足に傷を負わせて死罪となるべきところを、甥を救うために事件をもみ消そうとする家老から、切腹を待つ咎人の監視という役目を与えられて向山村に向かった。
咎人とは若くして名郡(こおり)奉行に抜擢され、青筵を特産物として奨励して農民と藩財政を豊かにした功績があり、江戸詰の中老となった戸田秋谷(順右衛門)であり、前藩主の側室が襲撃された際に、かつて自分の家の家士の娘であった側室と二人で逃げて翌日出てきたところを密通の罪に問われたもので、秋谷は十年後の切腹と藩主三浦家の家譜の編纂が命じられて、七年が過ぎていた。
庄三郎は、執筆された家譜を清書し、「蜩ノ記」と題された編纂業務日誌を見ながら秋谷と接するうち、その人格に打たれてなんとか秋谷を救おうとし、かつての側室松吟尼を訪ねると、松吟尼から秋谷を助ける手段になるのではないかと、かつて対立する立場にあった側室で現藩主の母であるお由の方の由緒書を手渡される。その謎解きによって過去から現在に続く権力闘争と家老を頂点とする現政権の悪辣さが見えてくる。
一方向山村では、賄賂で取り入って青筵の利益を独占しようとする播磨屋と藩の圧政に抗する動きがあり、かつての知行主秋谷の説得で事なきを得たが、新任の郡奉行が殺されて、疑われた百姓を逃がしたとして、その息子で秋谷の息子郁之助の親友でもある源吉が捕らえられ拷問の末に殺された。郁之助は覚悟を決めて家老の屋敷に押しかけ、その非を糾弾して一太刀浴びせようとして、見届けに来た庄三郎とともに捕らえられる。
家老は、お由の方の由緒書と引き替えに二人を返し、秋谷の助命を藩主に嘆願すると秋谷に交渉するが、秋谷は禁足を破って城下へ行き家老と直談判に及んで、由緒書きを渡して二人を引き取るが、由緒書きが抹消されないように写しを藩主の尊崇の厚い長久寺に保管してもらっていると告げる。
庄三郎は秋谷の娘薫と祝言を挙げ、郁之助は元服し、秋谷は家譜の編纂を終えて、定められた日に慫慂として切腹する。
「ひとは心の目指すところに向かって生きているのだ、と思うようになった。心の向かうところが志であり、それが果たされるのであれば、命を絶たれることも恐ろしくない。」と庄三郎は思う。
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直木賞受賞作。
この著者の作品は波長が合う時と外れるときの落差が大きいが、今回は久しぶりに波長が合った。
ただし、「秋月記」と同じ系列のもの。「秋月記」の後半3分の一があるため(あの部分は酷い。なければ★5)こちらがやや上か。
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直木賞受賞ということで、初めて読んだ葉室作品。
これぞ、武士のなかの武士!戸田秋谷のように、ここまで清廉な生き方を通すことができる人がいるのだろうか?心洗われるようだ。秋谷の在り方に接して、子息郁太郎や、檀野庄三郎の成長も目覚ましく、気持ちがいい。また、幼いながらにして真っ直ぐな源吉と、郁太郎の友情にも心打たれた。深みのある良い作品だった。