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秋谷と源吉の潔さや揺るぎない心とは対照的に、人間臭さのある庄三郎や郁太郎の言動が物語のバランスをうまくとっていたように思う。淡々と綴られていく文章は読みやすく、人物の心象を推しながら進んでいった。最後の秋谷の命を絶つことへ実の思いや、松吟尼との会話で秋谷の心を少し見ることができた。兵右衛門の改心もアフターストーリーに希望を持たせてくれた。燃えるほど感動までは行かなかったけれど、この時代の粛々と天命を真っ当しようとする心根は潔くて好きだ。
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広告の上手さで読まされた。
プロットそのものが上等でない上に、文章や運びにかっちりとしたものが無い。
<10年後に死ぬと決められた侍>という設定は素晴らしい。
これで直木賞満票(広告によれば)というのでは直木賞もくだらない。
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前藩主側室との不義密通の廉で十年後の切腹を命じられた戸田秋谷の元に城内で刃傷沙汰を起こした檀野庄三郎が家老の密命を受け送られてくる。主人公戸田秋谷の生き様。家族の思い。庄三郎の苦悩。人としてこうありたいと思う。非常に良かった。
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中年・悲哀・地味しか書かないと筆者は語っていたが、居合の達人で怜悧かつ情に深く、しかも女にモテると来た。普通にカッコいい男の好きな時代小説ではないか。それにしても『ベロ出しチョンマ』の背景を藩屋敷にまで押し広げたような話。話の全景をまず見せてから、尾根を下る魅せ方は安心感がある。
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関ヶ原から200年下ったこの時代、武士たちは先祖の遺産で生きている。家老の子は家老、50石の子は50石。そしてその50石という扶持は、武士が農民から巻き上げるもの。商品経済が発達する中で租税は農民にだけ課すという歪さの中、武士と農民は長年の緊張関係を生きている。
武士も農民も、この本の登場人物たちはそういう閉塞感の中で呼吸している。時代の息苦しさをきっちり描くから際立つ、主人公の凛とした生き方。しかも切腹が宿命付けられてるから閉塞感は余計に募る。そういう作者の心憎い配慮に乗せられて、最後まで一気に読むことができた。
そして美しい描写と熱の籠った筆致。戸田秋谷がカッコよすぎじゃないかとか、他の登場人物の深堀りがとか、言い出せばキリがない。でも明らかに、直木賞にふさわしい快作だと思う。
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10年後に切腹を命ぜられた武士とその家族の話。主人公も家族も潔過ぎ、立派すぎる一方理不尽なことが多すぎて…泣けます。
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読み終わって、悲しくも清々しい気持ち。風景や人物、時代背景が細かく丁寧に書かれていて、いつも読むのが早い私もじっくりと読ませてもらった。登場人物たちの凛とした生き方に我が身を振り返らされる。直木賞受賞作品。
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p210
源吉はつよいなぁ
源吉は嫌な事があっても、すぐに笑い飛ばしてしまう。わたしはいつまでもくよくよと考え込んでしまう。
それは郁太郎が頭がいいからじゃろ
おれは頭が悪いから覚えてねぇだけだ。それになぁ、世の中には覚えてなくちゃいけない事なんてそんなに多くはないような気がするんよ。
p289
男子がいったん思い立った事です。さように気を使うものではありません。口に出せば愚痴になりましょう。志を果たしたと言うなら源吉のように笑っておれば良いのです。
何が起ころうとも落ち着いて対処できるだけの覚悟が郁太郎には定まったようだ。そし、自分にも、相応の覚悟があると思える事が庄三郎には嬉しかった。
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幽閉の身、元郡奉行・戸田秋谷の静謐さと村に住む人々のたたずまい、たくましさがとてもよく伝わって来る。あの時代の人たちは覚悟を持って生きている。
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豊後の小藩で戸田秋谷は藩主側室との不義密通の疑で家譜編纂後10年で切腹の沙汰を受け幽閉の身である。その秋谷の家譜編纂の手伝い並びに見張り訳で檀野少三郎が秋谷の家に同居する。秋谷の精錬な生き様に少三郎は徐々に感化されていく。この秋谷が不義密通など有り得ないと思うようになっていく。家譜を纏めていく中で藩内を二分する御家騒動が原因でこれに深く家老の中根家が関わっている事が判明する。そこへ息子の友人源吉が役人に責め殺される。
息子郁太朗は家老に責任追求を行う。
秋谷は息子を助けるが自信は粛々と切腹する。
秋谷が最後、自害していくのは農民、藩の為としているところ、また家老が戸田家へエールを贈るところはもう少し突っ込んでほしかった。貧農の息子源吉もなんであんなすばらいい子かというところも背景があってもいいのでは。
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権謀術数渦巻く藩の御家騒動に巻き込まれ、死を待つ身に置かれた主人公。武士の矜持、そして家族をはじめ彼に関わる人々の様々な生きざまを描き、爽やかな読後感が残る贅沢な時代小説である。やや込み入った人物相関による中盤のもたつきと地味すぎる装丁が惜しまれるが、映画化が待たれる作品。
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結局何のために秋谷は死なねばならなかったのか。
実は読み終えた後も、よく分からなかった。
でも、そういう生き方もあるのかと思った。
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ある事件から10年間の幽閉と、家譜編纂、10年後の切腹を定められた人物と周りの人々の物語。
久しぶりにここまで感情移入出来る作品に出会えて嬉しい。
人の尊さと愚かしさに、感動と侮蔑の念を抱きつつも、やはり人は人によって形作られるのだなぁと思った。
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小学校の読書感想文を書く為「宮本武蔵」全数巻を読んだ時、
漢字カタカナ混じり文字 に辟易してから時代劇物は避けてたが
先日戴いて読んだら結構読みやすかった。
武士道、或いは 『 漢 と書いて男』を感じる本だった。
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直木賞受賞作品というので読んでみましたが、文句なしに感動しました。あまり時代劇になじみのない俺にとっての頂点である百田尚樹の「影法師」に勝るとも劣らない佳作です。泣けます。