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自らの心に背くことなく生きることが死によってのみ達せられるとしても、いささも志のぶれないその潔さに思わず背筋を伸ばさずにはおられない。
お前の生き方はどうだ、と、咽元に切っ先を突きつけられているようで。
正しく生きることは美しく生きることなのだと、葉室小説はいつも私に教えてくれる。
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内容紹介
鳴く声は、命の燃える音に似て―― 命を区切られたとき、人は何を思い、いかに生きるのか? 豊後・羽根藩の奥祐筆・檀野庄三郎は、城内で刃傷沙汰に及んだ末、からくも切腹を免れ、家老により向山村に幽閉中の元郡奉行・戸田秋谷の元へ遣わされる。秋谷は七年前、前藩主の側室と不義密通を犯した廉で、家譜編纂と十年後の切腹を命じられていた。庄三郎には編纂補助と監視、七年前の事件の真相探求の命が課される。だが、向山村に入った庄三郎は秋谷の清廉さに触れ、その無実を信じるようになり……。命を区切られた男の気高く凄絶な覚悟を穏やかな山間の風景の中に謳い上げる、感涙の時代小説!
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2011年直木賞受賞作。
13歳となった郁太郎ですら、既に武士としての心意気を持っている。
農民も武士も皆が一生懸命生きている姿が美しい。
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奥祐筆の若侍、檀野庄三郎はちょっとしたことから友と刃傷沙汰に。その咎めで、山の村に幽閉中で家譜編纂の任務に励む元郡奉行・戸田秋谷の監視に赴く・・・。
出だしから、山の爽やかな空気が感じられる中で、気持ちのいい人物たちが登場し、これは気持ちのいい作品では・・と期待を持たせられる。
戸田秋谷は、殿の愛妾との不義密通の容疑で、10年後には切腹を申しつけられている身。妻と2人の子どもを伴い、山の中の一軒屋に蟄居中でありながら、穏やかに日々を送っている。
秋谷の妻、娘、息子とも、みな、好ましく、特に長男である郁太郎はわずか10歳であるにも関わらず、思慮深く、父を敬いつつ、村の子どもたちとも隔てなく付き合っている。
郁太郎の村の友だちの源吉がいいんですよ。(*^_^*)
幼い妹・お春を可愛がり、自然や武士による災厄をもおおらかに受け止める。
まだ子どもであり、武家でもない彼を人格者にしたところが面白いところですね。
秋谷の密通の真相は?
庄三郎が秋谷と暮らしながら成長していく様子。
そこここに、葉室さんらしい静謐さがにじみ出て、一気に読ませられました。
ちょい、ネタばれです。
ただ、余計なことながら、民話「べろ出しちょんま」を思わせる描写が出てくるところから、大事な人物の行く末が最初からわかってしまうのが辛いところだった・・・。
また、藤沢周平「蝉時雨」の終盤そっくりのところもあり、そこはね・・・、とつい突っ込みたくもなりましたが。
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先ずは読みなされ
これが伝えたいことである
いつか、ではなく、月日が決められた限られた命
オビにもあるが、どう生きるか、加えてどれほど満足な日々を送れたか
自分に問うことはあったが、まだまだ中途半端な自分に気付かされる
常に覚悟をもち、凛とした姿勢で過ごす秋谷の生き方に心をうたれるのである
また、源吉の道徳観にも着目したい
これは現代の皆がもっていてほしいものだ
道徳教育が軽視され、現代ではその美しさが失われていると感じてしまう本来の日本人の姿がここにある!
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祝・芥川賞。
作者の作品は、本作が初めて。
作者、50を過ぎてから本格的に小説を書き始めたのだとか。
とはいえ、なかなかに筆の立つ人だと見た。
ともあれ、めでたい。
書評を読み、無性に読みたくなり、近所の本屋の在庫を確認して、取り置きしてもらって昨日のうちに読了。
自分が、歴史物の中でもフィクションが好きな理由が改めて分かった。
やや謎解き的な要素もあるが、基本は、一人の武士による目的完遂の物語であり、それを支え見守る青年武士と家族の物語であり、江戸時代の農村とそれを収奪する制度をめぐる物語である。
最後は涙が止まらなかった。
これは、自分にとって、今年のトップテンに入る作品。
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清清しい読後感。美しい生き方とは、まさにこのようなものであろう。しかし、この美しさは、現代小説では描けない、時代小説でこそ成立する世界観だ。
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10年後の切腹という命の刻限を切られた秋谷の凛とした武士の佇まい。葉室麟氏の理想とする武士はいつもながら見事に生きる。妹を思う源吉に涙した。
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藤沢周平の後を継ぐのは、乙川優三郎か葉室麟だと思う。
「秋月記」「いのちなりけり」「柚子の花咲く」など、確実に私の周囲でもファンが増えている。
直木賞の候補になること、4回。もう、そろそろ受賞させてあげてほしい。
読み終えて、そう感じた。
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◎第146回直木賞受賞作品(2011年度・下半期)。
2012年2月13日(月)読了。
2012-13。
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不祥事を起こし罪に問われた檀野庄三郎は、幽閉されている戸田秋谷の監視を命じられる。秋谷は、かつて主君の側室との不義を問われつつも、藩の家譜編纂のためとして、切腹まで10年の猶予を与えれた人物。彼は、家譜編纂とともに、蜩〔ひぐらし〕ノ記と名付けた日記をつけていた。秋谷家で暮らし始めた庄三郎たちの周囲で、幾つかの事件が起きるが、切腹の日は刻一刻と迫り来る。不義は本当にあったのか、なぜ秋谷は弁解しないのか、様々な事件の背後に隠れた秘密とは。ユニークな状況設定で、推理小説を読むような趣のある長編時代小説。第146回直木賞候補作。
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すごく面白かった。主人公がぱっとしないのと、良いひとが多すぎて、ちょとだけ物足りないのだけれど、爽やかで良かった。
葉室氏のほかの著書は読んでないけれど、蜩ノ記は丁寧に魂をこめてかかれたものだと感じた。直木賞おめでたい!!
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遺された郁太郎と庄三郎のこれからを見てみたい気がした。そして、源吉がどんな大人になっていくのかを見てみたかった。
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10年後の切腹。
命を限られた時、人はどう生きるべきか・・・。
幽閉された山奥で静かに自分と向き合い、冷静に物事を見極め、人を大切に思いながら日々を過ごす。
秋谷さんだけでなく、戸田家の人々みな素晴らしい。
ーーーこの家族には疑うという気持ちを持った者がいない。だから家の中に清々しい気が満ちているのかもしれないーーー という一節が印象に残ります。
身につまされる思いを抱きながら、読了。
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直木賞受賞作品。
葉室さんの作品は初めてだけど、季節や風景の描写が素敵な人です。
秋谷の凛とした真っ直ぐな生き方に背筋が伸びる思いがする良い本だった。