紙の本
『吉里吉里人』とならぶ傑作、快作
2012/03/02 22:39
1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:萬寿生 - この投稿者のレビュー一覧を見る
『吉里吉里人』とならぶ傑作、快作である。著者の死によって未完になってしまったのは、ものすごく残念である。
いろいろな点で『吉里吉里人』と比較してみたくなる。平行世界が描かれている点で、まず広義のSFである。1945年の敗戦時にアメリカによる単独占領ではなく連合国による分割統治になって40年経った日本が舞台である。日本統一の地下活動を行うことになった大学の地理学助教授の各国諜報員との攻防が展開される。ハラハラさせられるし、この先どうなるのかと期待感も持たされる。
おもしろおかしい喜劇で諧謔が溢れるなかに、人間の本質的な悲哀や、現代日本の文化や風俗に対する批評、皮肉が盛り込まれ、鋭い言語感覚が溢れ、作者の才能が十分に発揮されている。地理や地図また各種兵器に関してだけでもどれだけの資料を読みこなしてきたのか、その蘊蓄や雑学の豊富さにも感心するとともに、おおいに楽しめるものがある。
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抱腹絶倒
摩訶不思議
驚天動地
虎視眈々
怒髪天衝
こんなにおもしろい
小説がもう読めなくなるのがつらい
p445がこんなにも早く進んでいくのが
嬉しく そして 哀しい
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四分断国家ニッポン~ソ連占領下の北ニッポン山形管区在住の地理学者サブーシャは,クレムリンと赤の広場の一分の一の地図を作って,モスクワに招待され結局勇猛消防記章を貰って邦に凱旋し,地元中学校で講演をすることになったが,聴衆は大雪で帰宅できなくなった中学生9名。がっくり肩を落として幼馴染みで義兄の吾助との帰途,男子御法度の新妻会に呼ばれる。待っていたのは,西ニッポンの極道・小形明。日本統一の同士として迎えに来た・いま直ぐにでも福島の良い坂温泉に行くという。村長も妻も,永の別れになると覚悟していたようだ。国境には四国日本の棒球監督・原一平がノックバットを持って待機していた。正確無比のノックで小銃の弾奏を破壊し,放たれたシェパードも退治したが,主将犬はかんじきをグローブ代わりにして,捕球している。最後の一球は外野フライ,ひたすら追って雪山に消えた。越境した一行は飯坂温泉のグランドホテルに,歌手の秋山マリを訪ねる。彼女の不満は中央ニッポンにない海峡を歌えないこと。ホテルは国際会議も開かれるグランドホテルだが,増築に増築を重ねた古い旅館で,オーナーのハツは孫で天才の三太郎を統一運動に加えたい。ホテルにはスパイがうようよいて,従業員も各国のスパイの仮の姿であることを承知の上で,よく働き,給料は安上がり,気も回るとの理由で雇っている。ディナーショーの東洋一の魔術師・一陽斎東勝も北のKGBのボスであり,マリが急遽依頼した男性ダンサーも,中央ニッポンのCIAとKGBと西ニッポンの情報部員と四国ニッポンの保安部員である。エビセンがCIAだと見抜いて新館と旧館の間の薄の間に誘い込んだのはサブーシャのヒットであったが,そこには東勝の幻術が張り巡らされて,敵の手の中に落ちてしまった。他の3名もヘリに積まれて猪苗代に落とされそうなところを救ったのはボールを銜えて戻った主将犬だった。天才・三太郎はサブーシャの完璧なナビで東京に向かうが,追撃するヘリから放たれた追尾ミサイルをかわすために下ろしたロープの先は高速を進むルノー・ヴァンサンクのバンパーを引っかけていた。ルノーのセールスマンと宝石のセールスレディーの心中を思い留まらせた一行は車に乗り換えて,マリの六本木のアパートメントに落ち着くが,各国のスパイが協力すると,その場所も安全ではなくなっていく。マリのマネージャーの朱美は偽造証明書作りのプロを招き,早速写真撮影から始められるが,住み込み仕事を探していたサブーシャを除くメンバーは拘束されてしまう。サブーシャに残されたのは中央ニッポンの実在人物・安田孝の身分証明書。ゴム長靴を皮短靴に履き替える為に靴屋に提示した証明書は,その所有者が殺人鬼であることを告げていた。複雑な国債管理下に置かれた六本木で101と102の密売をアルバイトとする女子高生から,新たな身分証明書を4枚買い込む。一人は中央ニッポンの村上薫,北ニッポン人の大河原良平,西ニッポンの三島音五郎,四国ニッポンの荒神忠太郎。六本木国際雑居ビルのインターナショナル・クーリエ・サービスの就職には村上の証明書を使い,通信届け人として正式を採用されたが,東勝の姿を見掛けてパニックとなり,飛び込んだ中華料理店では荒神の証明書を使い,���神が洗い物の天才であったことから正式採用となり,ロシア地区で使った大河原が不世出の俳優であり,キャスティングされ,大学文学部教授に封書を届けに行って使った村上の証明書は,今噂の一分ノ一という小説を書いた人物であることが判明した~日本が分断されていたら・・・という本を続けて読んでいる気がする。いやいや,昔ながらの井上節だぁ
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井上先生ならではの、プロット。言葉に対する執着と言うか、苦しんで楽しんで書いたのだろうなあ、としみじみ感じてしまう。
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日本が米英ソ中の四カ国の分割統治になっている世界を描く。北ニッポンの地理学者が日本統一の志士の一人となり、井上氏一流のどたばたな活躍をする。