投稿元:
レビューを見る
ロシア資料を用いて冷戦史の再構築。
従来の日米関係史との違いを明確にしながら論じれば、より良いものになる可能性が多いにある。今後やる価値のあるテーマ。
投稿元:
レビューを見る
2011年刊。著者は法政大学法学部教授。
戦後日本占領下の政治史は、一般には日米関係からのみ捉えるだろう。変化球ならば日ソ関係(陰謀論に近いが、ソ共産党によるコミュニズム浸透)からの見方もあるかもしれない。
が、本書は、占領下政治史のステークホルダーに、米ソはもとより、英・豪他の英連邦・中国国民党・中国共産党も含まれるとしつつ、占領下日本の動向には、米英ソ中の外交関係と冷戦過程の進展が影響したものと見て、米ソ(副次的に英中)間の外交関係の分析を通じ、アジア冷戦構図の展開を解読しようとする。
幾つかある視点では核兵器が興味深い。
なるほど、スターリンが米の原爆実戦配備を異常に怖れ、その開発製造に懸命となった点は、さほど新奇ではない。が、スターリンの東欧重視の理由が原爆製造開発のために必要とされるウラン鉱脈を抑える点だったこと、ウラン鉱脈の点で北朝鮮も同様の位置づけだったこと、事実上米単独の日本占領政策と東欧の支配圏構築とをバーターにした点や、その施策も人民中国成立までである、などは、なかなか興味を引く。
加えて、外交現場の臨場感、刻々変動する情勢に即した方針変更や、英米の思惑の違いだけてなく、米国内・ソ連内でのメンバー間の方針の違いも浮き彫りにされ、かような緊張感ある叙述は買いである。
他方、本筋とは離れるが、徳田球一書記長下の日本共産党がシベリア抑留者の解放を、強く積極的にソ連共産党に求めていた点も新奇。
もっとも、本書で日本共産党の占領下での活動を詳述する点は腑に堕ちぬところもないではない。
そもそも、政権獲得可能な議席を取れず、また、後の武装闘争路線も現実的な方法論ではなかった中で、日本の冷戦史の中核を構成したとは考えにくいからだ(ただし、日本共産党の戦後史として見れば、それ自体は間違いなく面白いのだけれど…)。
投稿元:
レビューを見る
【301冊目】
本書の内容の評価とは別だが、誤字が多すぎる。米ソの関係者の名前があべこべになっているなどし、意味が通じない文章も散見される。岩波書店はまともな校閲がいないのか?なお、読んだのは、2011年10月の第1刷。