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本との出会いは不思議。もともと乱読の気はあるものの、なんで「琵琶師」の評伝を読もうと思ったのかは定かではない。(唯一言えるのは、小学館の新聞広告がうまかったのだということ。装丁[特にひらがなのフォント]が目をひいたのだと思う。)
読む前は、存在すら知らなかった女性にして男流琵琶師の物語。確かにこれは数奇な人生だと思う。しかも、記録の数は少なく、評伝とするには非常にタフな対象だったのでしょう。その中で筆者は良くがんばりました。
端的には「すげぇなぁ」という印象だけど、身にしみる一文もあり。読んで、新たな世界も知れてよかった。
だから読書はやめられない?
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大衆的で親しみやすく、自分の弟子に優しいサラリーマン的な「芸術家」はいない。芸術家は常に異常でなくてはいけない。女性、母親の立場を捨て、事業家を辞め、武満徹がきっかけとなり、再び琵琶に人生を捧げた琵琶師の一生は想像を絶する。
鶴田錦史の琵琶による『ノヴァンバー・ステップス』を聴いて、本書を読み、再度同曲を聴くと、さらに曲に没頭できる。私が、芸能から日本の芸術になった琵琶を理解するにはまだまだ人生経験が必要と思う。
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初めて知る世界。
思わず引き込まれて一気に読んでしまいました。
武満徹のノヴェンバー・ステップスはこれまで何度か聞いたことがありましたが、私にとっては印象に残るメロディがあったわけでもなく,よく分からないなあというのが正直なところでした。
しかし,この本を読んで,改めてこの曲を聴いてみると,印象が全然違い,琵琶と尺八の音色にぞくっとします。
鶴田錦史氏も横山勝也氏も,鬼籍には入られましたが,会場でお二人の生演奏によるこの曲を聴いてみたかったなと思いました。
未知の世界に触れる…という読書の醍醐味を味あわせてくれる本で,
一読の価値ありです。
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題材としては最高なのによくできたレポート。
まったく興味のなかった琵琶が戦前にこんなに人気があったとは知らなかった。それにこんなにドロドロしていて一人一人がキャラ立ちしてるとは!事実に驚きと興味をそそられた。なぜ?なぜ?と次々に出てくる疑問に答えはなく、不完全燃焼。
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ノヴェンバー・ステップスを初演した琵琶奏者「鶴田錦史」のノンフィクション。幼い頃から天才少女として一家の家計を支え、結婚して子供に恵まれるも夫の浮気で離婚し、実業界に身を投じて水商売と金儲けの世界へ。
なめられないようにとはじめた男装から、やがてとびきりの美女を従え、養女として事実上の妻を迎えるまでに。
そして豊富な資金力をバックに、琵琶奏者として、男装のままカムバック。
ノヴェンバー・ステップスの演奏場面は音楽の授業で見ましたが、ほんとうに男性とばかり思い込んでいました。これがノンフィクションであるとはにわかに信じがたい、インパクトのある一冊。
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度肝を抜かれる。
鶴田錦史……全く知らなかった人物。
明治44年生まれのこの人は、昨年、生誕百周年を迎えたという。
亡くなって18年、私と重なる時代を生きていたのに、
どうして何も知らずに来てしまったのかと悔やむ。
男装の天才・琵琶師。
子を捨て、女を捨て、一時は琵琶も捨てながら、
実業家として成功し、美しい妻を得、
そして、音楽家として世界中に認められた。
常に、人生に対し、負けなかったこと、才覚を惜しまなかったことに
この成功はある。
ユーチューブで、武満徹作曲の出世作「ノヴェンバーステップス」を
かつての成功の立役者・小澤征爾指揮による演奏を観て聴いた。
難解な現代音楽界にあって、天才と呼ばれる彼の音楽は、私にとって耳なじんだ音楽とは違う。
でも、息を詰めて、目を凝らし、集中して見入ってしまう力がそこにはあった。
琵琶が打楽器であるとの認識を再確認した。
タイトルの「さわり」は琵琶独特の響きのこと。
日本人の感性は、わざと耳に「障る」ような、複雑な自然の音に近づけることでより美しさを感じ、琵琶はそれを最も重視しているのだとか。
タイトルの意味がようやく呑み込めた。
まだまだ知らないことばかり。
著者自身が自らの想いによって追い求めたのではなく、
出版社から頼まれて書き始めたテーマだからであろうか、
さらりと読めるノンフィクション。
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「女として愛に破れ、子らを捨て、男として運命を組み伏せた天才琵琶師「鶴田錦史」その数奇な人生」と表紙にある通り、波乱の人生を歩んだ琵琶師・鶴田錦史さんを描いた評伝。
著者は序章で「日本で琵琶をひいている人は千人にも満たない」と述べている。確かに三味線や琴ならまだしも、琵琶を習っているという人には遭ったことがないし聞いたこともない。何故琵琶はこれほどマイナーな存在になってしまったのか。
その理由は読み進めるうちに明らかになる。
琵琶を習い始めた兄に素質を見出され、嫌々ながら琵琶を始めた菊枝(=のちの錦史)は、すぐに弟子を持つようになり、同時にプロとして様々な場所で舞台に立ち、一家の家計を支えるようになる。
ある時は時代に、ある時は流派内の争いに翻弄されながらも、琵琶師として身を立ててきた菊枝は、同い年の弟子と結婚して子どもを授かるが裏切られ、時勢を見て実業家へと転身する。
別府でのキャバレー経営などを成功させた菊枝は、時期を見て東京に戻り、東京でもナイトクラブを経営してその手腕を振るう。(この頃から男装するようになる)
戦後、急速に衰えた琵琶人気を憂いた菊枝は、昭和三十年に琵琶界に復帰。長年クラブ等で西洋の音楽に親しんだ経験から、保守的な既成概念に囚われない菊枝は、現代音楽の巨匠・武満満からの演奏依頼を機に、積極的に他のジャンルと交わり、新しい奏法を作り上げていく。
保守的な伝統音楽の世界で、ままならぬことの多い中、演奏の技量と持ち前の才覚でたくましく生きる前半生もさることながら、夫と別れ、実業家に転身してからの倦むことを知らないかのような精力的な活動も凄まじい。
実業家として東京に進出した頃から男装するようになり、その後生涯男装で通したようだが、のちに琵琶師として復活してからも紋付き袴という徹底ぶりだったというからすごい。
冒頭にして作中の一番の山場であるエイヴリー・フィッシャーホールでの「ノヴェンバー・ステップス」の演奏のくだりは、琵琶をよく知らない人でも手に汗握るような臨場感と緊張感をもって描かれており、非常に読み応えがある。(youtubeで動画を観られます)
これを機に鶴田錦史は世界的な演奏家になっていくのだが、何故日本でこんなに知名度が低いのか。著者本人も依頼があるまで鶴田の存在を知らなかったそうだし、もっと評価されるべき人物なのは間違いない。
作中では鶴田さんと関わりの深い琵琶師・水藤錦穣という女性についてもかなり詳しく触れられているが、この人の人生も鶴田さんとはまた違った意味で凄まじい。
芸事で一流と呼ばれる人物というのはやはり他を切り捨ててその道に邁進するからこそそうなるのであり、平凡な人生を歩むことはないのだろうなあと、しみじみと思わされる作品。
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ノーベンバー・ステップス
武満徹、小澤征爾、横山勝也、鶴田錦史
この 一つで良い
「気になる」部分があるならば
この一冊は
間違いなく面白い
日本の音楽
の 原点が
ここに 描かれている
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これもまた、伝統文化を現代に活かそうという強い志を持つ日本人の話。特に、ノヴェンバー・ステップス初演に至るまでの鶴田、横山、武満、小澤の緊張感と達成感。こういうのがほんとのCool Japanだと思います。
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薩摩琵琶師-鶴田錦史1911-1995の物語。
非常に特殊な世界の話であり、どう考えたらいいのか判らない。
1967/10、武満徹作曲の「ノヴェンバー・ステップス」をNYフィル、小沢征薾指揮、尺八横山勝也 で演奏した。
水藤錦穣、水藤枝水らも魅力的。
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琵琶奏者鶴田錦史師の評伝
以前から興味のあった純邦楽の世界。三味線でも尺八でもなんでも、伝承者のなかには自分に厳しい人も少なくない。ストイックな人もいるだろう。しかし、その中でも鶴田錦史師の琵琶は異質であり、異様でもあった。
その音楽に対する姿勢の一端がかいま見れる。評伝としてはやや掘り下げが浅いところもあるが、それはこの本の中でも述べられているように、鶴田錦史本人がその過去を封印してしまったからなのであろう。
生きるために子どもを捨て、女としての性を捨て、琵琶を捨て、最後に『琵琶にもどって好きなように行きていこう』と思った結果として生み出されたものがノヴェンバー・ステップだとしたら、本当に彼女は琵琶の神様に選ばれたのかもしれない。
最後の数章は彼女の琵琶を聞きながら読んだ。涙がとまらなかった。
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フリーライター佐宮圭氏が書いたノンフィクション『さわり』を読了。いまはあまり聞く事のない琵琶の音色だがその琵琶をあやつりまた歌もよくした天才琵琶師『鶴田錦史』さんのとても不思議な人生を描いたノンフィクションなのだが、一気に読めた。武満徹氏や小澤征二氏との出会いなども全く知らなかったのでお勉強になりました。こういったひとを歴史の中に踏めてしまわないよう、教育の中に取り入れられないものか?あまりノンフィクションは読まないのですが、これはおすすめです。
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本書は武満徹の「ノヴェンバー・ステップス」の作曲に協力し、1967年11月にリンカーンセンターでの初演を担当した琵琶奏者である鶴田錦史の人生を描いたノンフィクションである。とにかくすごい人生だ。しかも、この振幅の激しい個人を描きながら、昭和史としても読み応えのあるものになっている。(岡ノ谷一夫)
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「鶴田錦史は、前半生で三つの生き方を捨てた。
一つは「母」としての人生。
二つめは「音楽家」としての人生。
三つめは「女」としての人生。
しかし、彼女は捨て去った三つの人生のうちの一つだけ取り戻した。
音楽家としての人生だった。」
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琵琶の特徴的な響きは、「さわり」と呼ばれれている
さわりは、弦が振動しながら楽器の一部に微かに触れることで生まれる
琵琶の伝来は7,8世紀頃
宮中で奏でられる楽器 楽琵琶となり、雅楽の楽器として現在に至る
一方九州では琵琶演奏を生業とする琵琶法師が現れる
9世紀 盲僧琵琶
12世紀 薩摩盲僧琵琶
13世紀 平家琵琶 語り物
16世紀末 薩摩の戦国大名 島津義弘 薩摩琵琶 武士のたしなみ
19世紀初め 薩摩藩 士気高揚のため琵琶を奨励
明治に入り、薩摩人が上京すると、薩摩琵琶人気が東京にも伝わり始めた
昭和20年8月26日 性の防波堤 RAA recreation amusement association
石田琵琶店 明治11 初代石田不識によって神田に開かれた