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紙の本

ドルニョオンの聞いた天の音楽

2012/01/23 20:44

1人中、1人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。

投稿者:nasubihime - この投稿者のレビュー一覧を見る

 本書は表題作の他に「河馬の名刺」「口笛ドルニョオン」の三作からなる童話集です。

 作者は宮沢賢治とも交流のあった詩人・儀府成一。その儀府さんが「子供の澄み切った目」をたえず考えた結果、生まれたものがここにおさめられている作品たちなのです。

 子供が澄み切った目を失わないようにと心をこめて書かれた作品には、童話の娯楽性ではなく、童話の芸術性が秘められています。たしかに「リルラの手袋」は心温まる物語であっても、「河馬の名刺」がおもしろおかしい滑稽なお話でも、心に残るのは、清らかな少年・ドルニョオンのかなしいお話「口笛ドルニョオン」なのです。

 作者が本当になにかを伝えたいと思った作品はきっとこれに違いないと思います。つらい境遇でもたくましく正しくいきようとするドルニョオン。その彼にとつぜん天からの音楽が聞こえて、彼の運命を変えてしまいます。

 結末のかなしい物語であるにしても彼が最期の時に吹いた口笛は、彼が神様の祝福である天からの音楽を受けてついて出たものであるとすると、たんにかなしい物語ではなく、なにか光のようなものが見えるような気がします。

 これは自分勝手な解釈なので、いやそれは違うと感じるひともたくさんいると思います。しかし、なにか訴えてくるものがこの作品には感じられました。

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