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塩野先生は中東はお嫌い?
2012/06/14 04:31
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投稿者:たぬき - この投稿者のレビュー一覧を見る
「ローマ人の物語」を初めに読んで、毎年楽しみに拝読させて戴いた以来すっかりはまり、「我が友マキアヴェッリ」「三都物語」等々、以前の著作も楽しませてもらいました。塩野先生が書かれるイタリア関連の著作には、根本には愛(執着と言った方が正しいのかも知れません)が感じられますが、この本には残念ながら、と言うことです。塩野節は相変わらずなので、そこは安心して読めます。
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塩野さんの最新作の「十字軍物語3」を読み終わりました。ローマ人の物語を完結なさってから,「ローマ亡き後の地中海世界」と本作の「十字軍物語」で,中世を舞台にした作品を続けて執筆されていらっしゃいますが,前作の「ローマ亡き後の地中海世界」と同様に,「ルネサンスもの」と「ローマ人の物語」を補間する作品になっていると思います。
この3巻でも,頻繁に,ヴェネツィアやジェノヴァなどのイタリアの海洋都市国家が出てきますが,ルネサンスもので物語られる彼らの歴史と今作で物語られている内容との関連も興味深いと考えます。
また,塩野さんの戦闘場面の叙述や,それを率いる優れたリーダに対する躍動的な記述は,まだまだ健在だと思っています。特に第三次十字軍のリチャード獅子心王(ライオン・ハート)は,お気に入りで書いていらっしゃるなと思って読んでいました。
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第3次十字軍から最後の8次までの1188年から1300年までの約百年のエルサレムの攻防戦。 3時の獅子心王リチャードから最後のルイ9世の7次までがメインで行われた十字軍。ただ、現地と彼方後方にいる人たちの思いの違いが大きく描かれそれが原動力で戦闘に。
十字軍の行われたこの期間は法王の力が絶頂期であったころで収束したのが有名なアビニョンの捕囚となって法王がフランスに捕われて法王の権力が落ち終わる。
ただ、十字軍の思いも盲目的なイスラムとの共生が考えられない人によって行われると侵略行為にかならない。一方最後に起きたマルメーク王朝も同様で、キリスト教徒はこの地から追い出すことがジハードであるとしてために十字軍国家が全滅。しかしその後にまたイタリア海洋国家とイスラム商人との通商は始まる。宗教は人それぞれの思いの中に有るときは問題ないがそれを人に強制を始めると問題だ。今のイスラエル地方はまさにそれである。
ウ〜〜ん、考えさせるね。共存は出来ないものか。
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発売は明日の12月9日だというのに登録しました。
待ち遠しい3冊目です。
さっそく発売日にgetしました。う~ 厚い。
物語は第三次十字軍から、第八次十字軍を描き、聖堂騎士団の解散を宣言した1312年で終わりを告げますが、キリスト教側とイスラム教側は戦争を繰り返していく。
これでやっと『コンスタンティノーブル陥落』や『ロードス島攻防記』につながるのでした。
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早く読みたい。楽しみ過ぎて死ぬ。
2巻の残り30ページほど残していたので(3巻が発売されて続けて読もうと思ってた)それを読んでから。
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第3次から8次までの十字軍を描く。獅子心王リチャードの第3次十字軍での活動は目覚ましく、面白く読める。ハンニバルしかり、カエサルしかり、魅力のある登場人物、英雄が出てくると血沸き、肉躍る。
しかし、それ以降の十字軍の歴史を見ると、十字軍とは何だったのかと疑問を抱かせる。
フランスの王家のやり方はよく描かれていない。フィリップとルイという名を王が代わる代わるに登場する。いずれも十字軍の歴史に汚点を残す。特にテンプル騎士団を処刑した王は許せない。こういう非道の行為が、因果は巡り、フランス革命の際の子孫であるルイ16世の処刑につながるのか。
小説フランス革命と並行して読んでいる関係か、こじつけの理屈になってしまう。
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最終巻です。
1巻が起の第一次十字軍とその成果、2巻が承と転で第二次十字軍の失敗とパレスティナのキリスト教国家の維持とイスラム朝の成立、そして本巻が第三次から第八次までの十字軍のほとんどの失敗とパレスティナのキリスト教国家の滅亡になっていて、別巻の「絵で見る十字軍物語」で全体の流れを押さえておけば、よく理解できる構成と思います。
にしても、イスラム国家が今の事態になったのは十字軍に起因すると思いました。せっかく共生できていたのに残念です。
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電車で読むには重すぎるので家でちょこちょこ読んでたらとっても時間がかかってしまった。行きつ戻りつしてたので余計流れはわかったかも。
教養のないものが極端な思考や思想に偏る、という節に納得。学歴差別ではないけどリベラルアーツをきちんと備えた人との会話は多様で面白いもんなあ…
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神様視点の歴史物(司馬遼太郎とか)は大嫌いだったのに、塩野七生は抵抗なく読める。なんでだろ。
地図を頻繁に掲載するのがとても好感できる。歴史物読んでいてなにがいらいらするかって、「そこどこなんだよ」ってことなので。
西洋史をきちんと勉強しなかったので、欧州の中世史を十字軍を軸に知るにはうってつけの良書。
でも読んでいるうちに、一神教の国に生まれなくてよかったと思う。
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日本人にはわかりにくい、キリスト教とイスラム教の確執の原点となる、十字軍について細かく記してある。塩野七生の本は、歴史的事実をそのまま記すという形が多いので、物語というよりもノンフィクションの方が近いのではないかと思う位。
ストーリーを楽しむ人向きではないと思う。
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第三次十字軍から十字軍が終わった後に残した影響までを描いた完結編。
獅子心王リチャードとフリードリヒ2世が印象的。
次に書く予定が二人いるとテレビで言っていたが果たして?
一神教というか、宗教的熱狂のパワーと恐ろしさを知るにつけ、
多神教の国に生まれてよかったと思ってしまう。
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ついに完結、十字軍物語。ほかの巻に比べると分量も多く、詰め込まれてる中身も多いが、歴史を叙述するための塩野さんの編集ぷりが見事。
歴史は点ではなく、様々な線の交差であるという立場なんだと思う。そして僕もそれに深く同意。それが歴史を知る、紐解く面白さ。
塩野七生節炸裂。元気なおばぁちゃんやなぁ、と、改めて。
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第4回から第8回まで,その後~サラディンはモンフェラート侯コラードが守るティロスを陸から攻め父親を殺すと脅されるが屈せず,仕方なく釈放われた父親は迎えるが,イェルサレル王ギード・ルジャニャンは迎えず,仕方なく攻略に向かったアッコンは二重攻防戦となる。バルバロッサ・フリードリヒ1世は騎兵数千歩兵数千でイェルサレム奪回に陸路を辿って向かうが川で溺れ死に,テュートの怒りは解散してしまう。リチャードはシチリアで冷遇されている妹の為に闘って巡礼の寄港地を確保し,キプロスで闘って結婚式を挙げ,沖合でイスラムの物資を積んだ舟を拿捕してから,アッコンに到着したのは,フランスを出航してから1年後だった。丸く削った石弾をプレハブの透析機で城門に撃ち込んだリチャードは一月でアッコンを攻略し,地中海を右に見ながら南下し,アルスーフを前にサラディンとの戦闘に入り,誘導に乗らなかった十字軍は勝利を得,ヤッファ(現テル・アヴィヴ)を拠点にイェルサレムを向かう道を探る。内陸に入ると海からの補給は受けられないが,イェルサレムへの道の2/3まで進んでエジプトからの補給を断つため,イスラムに破壊されたアスカロンからダールムに攻め込む。帰国したフランス王フィリップは,イギリス王弟ジョンを唆してイギリス領を侵犯していた。帰国を欲したリチャードと同じように,無敗伝説が途切れたサラディンの求心力も減退し,講和を望んでいた。第4回十字軍・1198年に38歳の野心を持つ若い法王が選出され,王冠も帝冠も持たない諸侯による十字軍編成が企画される。シャンパーニュ伯ティボーと義兄のフランドル伯ボードワンが参加表明を行うと2万4500人規模を想定し,渡航は8万5千マルクでヴェネツィアが引き受ける。しかし,ヴェネツィアはサラディンを引き継いだ弟のスルタン・アッディーンとの間に通商条約を結び,十字軍の目的地も明記していなかった。シャンパーニュ伯が病死し多くの騎士が離反,総司令官をモンフェラート侯ボニファティオと定めたが,期日までに集結した十字軍兵士は通告していた数の三分の一の一万のみ,ヴェネツィアが提示した金額も集まらず,元首ダンドロのザーラ攻略の見返りとしての返済期間延期の提案を受け入れざるを得なかった。ドイツ王に保護されていたビザンツ皇子が飛び込んできて,コンスタンティノープル攻略を果たしたならば軍費を負担すると約束し,兵士も法王もヴェネツィア元首が先頭に立つコンスタンティノープル攻略を認めざるを得なかった。10ヶ月の攻防の末,ビザンツ皇帝が亡命して建てられたラテン帝国の皇帝にはフランドル伯ボードワンが即位し,ヴェネツィアは東地中海の主要地を抑え,海路の巡礼の安全が確保された。1216年インノケンティウス3世が死に新法王となったホノリウス3世は,イェルサレム王となったブリエンヌの尻を叩きエジプトのダミエッタ攻略が開始された。法王代理ペラーヨは,御当地十字軍がダミエッタが陥落し,スルタン・アラディールが死亡して混乱するイスラム側のアル・カミールから,ダミエッタとイェルサレムの交換が提案されても強硬に反対した。御当地十字軍はしかるべき人物の到着を待ちわび,洪水によって撤退せざるを得なくなった。ノルマン王朝の���であり1196年にドイツ王に選ばれ,1220年に皇帝となった26歳のフリードリヒはアラビア語も操れる人物だった。法王からは十字軍遠征を督促されながら,裏ではアル・カミールと交流を持ち,のらくらしている内に婚姻によってイェルサレム王ともなり,1227年にプリンディシから出航したものの体調不良で静養していると新法王グレゴリウス9世から破門され1228年に破門が解かれないまま2度目の破門となった。破門を意に介さないフリードリヒは1228年6月に自前の海軍兵力で出陣しキプロスの問題を解決してアッコンに到着。アル・カミールとの接触を再開し,3ヶ月の交渉で講和が成立した。イェルサレムのイスラム教徒地区を定め城壁をイスラム側が修復してキリスト教徒に明け渡すという内容だったが,イスラム教徒にもキリスト教徒に不評であった。アンティオキアからヤッファまでの海岸線とイェルサレムがキリスト教徒の支配下に入ったが,南イタリアに法王の意を受けたキリスト教徒が侵入し,帰国せざるを得なかったのだ。ローマが白羽の矢を立てたのは1226年に12歳でフランス王になり,1234年にアルビジョア派の重鎮プロヴァンス伯のマルグリットと結婚して北仏と南仏の抗争を解決したルイ9世であった。1244年シリアの一部族が功名心に駆られてイェルサレムを占領した報に,インノケンティウス4世はフランス王が十字軍を率いる事を求めた。王の一族を伴ったジェノヴァの船はキプロスに寄港した後エジプトに向かい,ダミエッタを攻略し,1249年2万5千の軍勢はナイル上流に向かって進軍し,初戦に勝って勢いづいて無人と思われたマンスールに入城するが,待ち受けていたマムルークにほぼ全滅の憂き目に合わされていた。マムルークは敵を捕虜にしても身代金は彼らの懐に入らないからだ。テンプル騎士団は290名の内285人が殺された。ダミエッタに撤退しても小舟で補給路を断たれ,1万以上が捕虜となった。スルタン・トゥランシャーはビザンチン金貨百万の身代金を要求し,王妃の金策でルイ9世以下の高位者が自由の身になったが,スルタン自身が暗殺される。騎士団は戦力と資力を失ったが,帰国したルイ9世は新たな十字軍遠征に意欲を燃やす。22年後にルイ9世が独自に催した最後の十字軍の目的地はチュニジアだが,チュニスではなく廃墟と化したカルタゴに上陸した一行は疫病に悩まされ,一月後にはるい9世も死亡した。聖人に列せられたのは27年後であるが,その期間中にマムルーク朝スルタンはキリスト教のアンティオ公領・トリポリ伯領は消え,アッコンへ攻撃は絞られた。巡礼達がイェルサレムに行けなくなった憤りからアッコンのイスラム教徒を襲撃したことが口実となった。1291年22万で包囲された1万4千の防衛力のアッコンへのジハードが一月に渡って展開され,キプロス島に逃げ出した上流階級に取り残された騎士と庶民の抵抗も虚しく陥落し徹底的に破壊された。192年存在し続けたシリア・パレスティナのキリスト勢力は一掃された。ホスピタル騎士団はキプロスからロードス島に移り,トルコの圧力でマルタ島に遷ってからも対イスラムの最前線に身を置いた。キプロスからの聖地奪回を目指すテンプル騎士団は失敗が続いてフランスに動き,その資金を狙うフィリッ��4世の謀略に嵌って歴代のフランス王が十字軍で行った失敗の責任を負わされ犠牲となった。フランス王に捕らわれていた法王も救うことはできなかった~テンプル騎士団長は火刑に処せられ,未だに名誉回復は為されていない。堂々の完結。キリスト教側の資料だけでなく,イスラム側の資料まで調べていることに価値があるが,史料がない部分は想像力で補う点に,この「物語」はある。巻末の簡潔な年表はコピーして手許に置いておこう
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十字軍の第三巻は、ついにイスラム教側もキリスト教側も役者が出そろう第三次十字軍から最後となる第八次十字軍とその後の話になります。
イスラム教側は二巻後半以降から登場のイスラムの英雄サラディン、キリスト教側は獅子心王のリチャード(イギリス)とフランス王フィリップ。リチャードの陸海連動での攻めに押されるサラディンで展開されるも、フィリップが帰国後リチャードの領土などを奪いに走り、そのためイェルサレムの奪還までは完遂できない講和による妥協的解決に、だんだん究極の目的よりも世俗的な目的が勝ち始めるのが見え始める十字軍で、それは第4次でさらにはっきり出ることになり、教皇の力が弱くなり始めるのを感じます。
三巻を読んでいて印象に残るのは、改めて宗教家と統治者の違いです。「不信仰の徒」のイスラム教側と講和をして現実的利益をとった十字軍の指導者たち(リチャードやフリードリヒ)よりも、不成功でも、大敗を喫してしまっても、その後に大きなマイナスの影響を与える結果になっても「不信仰の徒」と講和などもせずに戦い続けるフランス王ルイを評価し、聖人に列するというのは、宗教と政治の考え方の大きな違いがわかります。それは、理想なのか現実なのかということといってもいいと思いますがそれを一番感じたのがこの三巻でした。
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200年にわたる十字軍シリーズもいよいよ完結。
主役をはる人物がそれぞれの時代にたくさん出てきて、この200年をわずか3巻で終わってしまうのはあまりにももったいない感じがしました。
第一巻のゴドフロア、ボードワン、ボエモンドにタンクレディのハラハラドキドキの攻略戦。
第二巻は団体としてのテンプル聖堂騎士団、ホスピタル病院騎士団が主役をはりつつ、癩王ボードワンとサラディン。
そして、この第三巻は一番有名といっても良い第三次十字軍が前半の山場。獅子心王リチャード、フランスのフィリップ二世、そして敵としてのサラディンとの駆け引きが描写するどく表現されています。
それぞれの主役級登場人物を掘り下げてじっくりと理解しながら読みたいのですが、テンポ良く進んでいくために(良い意味で)せかされている感じがしました。
塩野さんの表現の仕方がすばらしいのと、図表を多用してくれるのでとてもよく理解できます。地図や人物そして当時の絵が要所要所ででてきて、歴史を面と線と合わせて立体的に捉えることができます。こういったところは他の歴史小説家とは一線を画していて大好きです。
しっかし、一神教どうしの聖地を巡る対立は永遠に解決しようのない問題だと歴史を振り返ってみてよく分かります。今のイスラエルとアラブの対立構造の根本ははるか昔の十字軍時代からの人(いや神か?)の業の連続です。
このものすごく深い問題に、戦いではなく交渉と話し合いで解決を導き出したサラディンとリチャード獅子心王が、個人的にとても共感できます。流行の言葉に「共生」がありますが、一神教同士の共生という、為し難きを為したこの二人には格別の敬意をもっています。
さらには、法王にはボロクソ言われながらも、戦うことなしに講和でイェルサレムの奪還をなしたフリードリッヒ二世が別格です。教条主義的な法王教書などどこ吹く風、実利実益と人の命を最優先したフリードリッヒを高く評価します。
テンプル騎士団と病院騎士団の「神がそれを望んでおられる聖戦」を自己目的化した集団には十字軍とシリア防衛のエンジンであったことは認めつつも、その狂的信仰、原理主義的性向が果たして何をもたらしたかよく理解できました。
いつの時代も信仰は大切です。
欧米では信仰している宗教がない人は、別の宗教を信仰している人よりも一段低く見るといいます。心のよりしろ。心の原点がない人が信仰のある人には理解できないのでしょう。
ですが、ガチガチの原理主義では物事は破壊的方向に行きますし、バランスがとれません。
この十字軍物語を通して「信仰とは」「神とは」「争いとは」「妥協とは」「外交とは」、いろいろなことを考えました。
結論なき哲学的なことを考えるのは、日々現実を突きつけられている小生にとって、とても有意義な知的遊びです。