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楽しみに、楽しみに、楽しみにしていた、タイムオデッセイ完結編。
「時の眼」では、国により時代が切り貼りされた異なる地球(ミール)を見せてくれた。なぜそんなことになったのかはわからないままではあるが、三部作の中では人類の敵、あらゆる知的生命体の敵ファーストボーンの登場編だといえる。
モノリスに値するのは<眼>という、π=3の時空をつなぐ球体だ。
「太陽の盾」では、地球がファーストボーンの攻撃にさらされる。タイトル通り、人類はこの攻撃を想像を絶するスケール(このスケールはバクスターならではであり、彼を超える作家を私は知らない)の盾で防ぎ切る。ミールの謎、ファーストボーンの謎はそのままにして話は終わる。
<眼>はもちろん登場するが、今回の主役はHAL9000ならぬアリストテレス・タレス・アテナの 3AI だ。
脱線するが、私自身はこの「太陽の盾」がとても好きである。人類が英知を絞って立ち向かうさまが大好きだ。そして、AI が大好きである。
そして、完結編。ファーストボーンはさらなる脅威を人類に与える。ファーストボーンとは何か。彼らは、人類のみならず他の知的生命体をも滅ぼした過去を持つ。その中には原始火星人も含まれる。
旅立った 3AI たちはどうなったか。彼らは再び地球に戻ってくる。ファーストボーンと戦うために。人類の武器では勝ち目はない。そこでAIたちが、ファーストボーンに敗北を喫した知的生命体が選んだのは、人類代表のヒロイン・ビセサだった。
彼女は<眼>を利用し、再びミールに戻る。そこで、原始火星人の協力のもと、ファーストボーンの攻撃から人類を救うことになる。なぜ、ファーストボーンに帰属する<眼>は(結果的に)人類の味方をするのか、非常にわかりにくい(ここがクラークの色満載なんだが)ラストボーンとはなんなのか。謎を残しながら物語は終わる。
地球人と宇宙を根城にするスペーサーとの確執は、先日読んだ「ストリンガーの沈黙」に通じるものがある。これは、私自身はサイドストーリーと認識している。読み方によっては面白いだろう。私には、「ストリンガー・・・」ほど両者に顕著な差がないため、イマイチ面白くなかったのだが。
(逆に言えば、「ストリンガー・・・」が面白すぎたのかもしれない)
再読しないとわからないのかもしれないが、ラストボーンとはなんなんだろう? チャーリー? そんなはずはない。原始火星人? 考えられる。この理解が最も良いと思う。しかし、きっとこのタイムオデッセイはスペースオデッセイとつながっているはずである。そう読むのがもっとも楽しいかなぁ。
ファーストボーン=魁種族、ラストボーン=殿種族。ラストは続くのか最後なのか? 殿の訳は適切なのか? 前2作をもう一度読みながら、この作品を楽しんでみたい。