紙の本
ベンチャーのエナジーはマネーを越えるか?
2011/12/17 23:26
7人中、4人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:kc1027 - この投稿者のレビュー一覧を見る
東日本大震災によって可視化されたわたしたちの社会のエネルギー構造。電力幕藩体制のもとで生み出された原発推進の流れが行き詰まった今、惰性の効かない選択が求められている。本書はこれからのエネルギー体制を考える上でのキーマンと称される飯田氏の最新著書。
地域独占のエネルギー体制を変えるには、膨大なエネルギーがいる。原子力を放棄して石油依存を下げつつ、天然ガスをこれまで以上に有効活用して、その上で自然エネルギーを普及させて、無理のない節電をする。この大枠のシナリオの実現には、新しいエネルギーの推進が急務で、それはガチガチに硬直化した電力行政の間隙を縫うように、小回りの効く地域が小さな成功事例を積み上げて前例を突破していく必要がある。手の届くところから実績を積み上げていく必要がある。まさにエネルギーのデモクラシーが求められる時代。
本書には自然エネルギーの先進地域であるドイツや北欧、カルフォルニアでの事例がふんだんに盛り込まれ、新エネルギー普及の鍵となる電力の固定価格買取り制度などの有効性が紹介されるとともに、日本がエネルギーの分野においてもガラパゴス的な慣習によって政策的な失敗を繰り返し、2000年から失われた10年を過ごしてしまったことが悔悟の念を持って綴られている。
失われた時間はもう戻らないが、そんな中でも温暖化対策で自治体としての先陣を切り、太陽光発電の補助でも国の上を行き、今や世界的な環境先進都市にまでなった東京都の事例が清々しい。知事のリーダーシップもさることながら、1990年の時点において都市の成長の限界を見越した提言を行った都庁官僚が、不遇の時期を乗り越えて環境対策を推進しているというエピソードが非常に示唆に富む。やっぱり突破は個人から、なんですね。
その個人に求められる突破力は、事実を科学的に淡々と積み上げ、そこから得られる最適解を幅を持って示し、自ら実行してしまうこと。それを本書は教えてくれる。時が経てば経つほどに、最適解の幅はどんどん狭まっていく。エネルギー創造という事業開発は、そんな切羽詰まった状況の中の、国家的急務のベンチャー事業。先の見えないベンチャーだから、鍵はきっと、マネーを乗り越えるエネルギー。
紙の本
3.11を経て、これからのエネルギーのあり方を探る
2012/02/10 08:31
2人中、2人の方がこのレビューが役に立ったと投票しています。
投稿者:Smooth - この投稿者のレビュー一覧を見る
原発の是非だけでなく、地域での取り組み例など、実はすでにできていることなど、エネルギーの民主化についても深い考察。
電力会社はいろいろひどいとこあるけど、敵ではなく、エネルギーのパートナーである。そうなんだよね。
自然エネルギーの導入に向けどうしていくべきか、っていうことを説明してくれてる。
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これからのエネルギー問題を考える上で、最良の論議がこの本でなされているように思う。エネルギー問題に関する幅広い情報収集と提供、(政治的)立場の二元的対立自体を無効化する(あるいはそれを超えた視点を提供する)という点に、従来の反原発運動の限界を超える視点を与えてもらった。
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新書だからか日本語ミスがいくつかあったが、全体的にわかりやすく纏められていてよかった。
原発のAlternativeとしての自然エネではなく、「純国産である、地域経済活性化が図れる」自然エネという捉え方が気に入った。
「日本の風では風力は難しいは嘘」は本文中で繰り返されていたが、他の気候条件はどうだろうか、と気になった。
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自然エネルギー推進派の良識,飯田哲也氏の著作.今回は,日本や欧米における自然エネルギーの歴史を振り返りながら,自然エネルギー促進のために,原発推進,反原発の二項対立から脱却を説いている.二項対立ではない実例も提示されており,今後の展開をイメージできる.あとがきにあるように,われわれは「原点」を忘れてはいけないと思った.この手の本ではオススメの一冊.
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自分に都合の良いことだけを選んで書いている。
この人は交流電力がどう流れるのか全く分かっていないのか,分かっていても不都合な部分には目をつむっているのか。
著者の主張のように発電容量は増やせるかもしれないが,自然エネルギーが発電できない場合のバックアップをどうするのか,どうやって系統に繋ぐのか,配電系統の電圧管理はどうするのか,といった電力を安定に送るための費用がまったく考えられていない。
この意味からは,絵空事とも言える。さらに,第1章の反論も反論にはなっていない。kWとkWhをちゃんと区別して議論すべき。
欧州でなんとかなっているのは,国を超えて連系されているためなのではないか?
2012/02/25図書館から借用;同日読み始め
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飯田氏の主張は、一貫している。
だから好感がもてる。
自然エネルギー利用に大きくシフトする時期は今、と僕も思う。
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*寄付
バルセロナ 1998年 新築、改築には太陽熱温水器の設置を義務付け
北海道グリーンファンド
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原子力推進に舵きりをした日本は、自然エネ後進国。技術はあっても後進国。正義の技術が台無しです。もったいない。
行政レベルで改革するには、まず実績が必要で、地方からのボトムアップが効果的。会社もまた叱り!?
人の、日本の、地球の将来を考えて、政策、技術開発をして行きましょう。
■印象に残ったフレーズ
•供給プッシュ型と需要プル型
•市場の自立化
•ビジョンの実現化
→構想1、行政計画1000、事業10万
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[ 内容 ]
いま変わらなければ、いつ変わるというのか?
3・11のフクシマ以降、日本の原発・エネルギー政策の転換は不可避だ。
人間社会のベースがいのちにある以上、もはや原発に頼ることはできない。
なぜなら、自然エネルギーが十分に実用可能であり、もはや「必要悪」でさえない原発に頼る理由などないからだ。
現在、自然エネルギーはうなりをあげて成長しており、農業革命、産業革命、IT革命に次ぐ「第4の革命」と評されている。
本書では、原発事故に至った日本のエネルギー政策の過ちを検証し、あるべきエネルギー政策を地域から再考する。
文明史的な変革にいどむために、備えておかなければならない知見をやさしく語った全国民必読の書。
[ 目次 ]
序章 自然エネルギー懐疑派への反論
第1章 フクシマ後のエネルギー―「第4の革命」の奔流
第2章 自然エネルギーの歴史―4つの波
第3章 失われた10年―なぜ日本では自然エネルギーが普及しないのか
第4章 地域から始まった革命
第5章 日本の地域からのチャレンジ
第6章 これからの日本のエネルギーシフト
[ 問題提起 ]
[ 結論 ]
[ コメント ]
[ 読了した日 ]
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2011年刊。著者は環境エネルギー政策研究所所長(神戸製鋼原子力部門の勤務歴あり)。
政府(殊に経産省)と電力会社の原子力政策に批判的立場から、再生可能エネルギーの現実性と未来像、そして再生可能エネルギーの発展可能性の芽を摘んだゼロ年代の経済産業省の施策とそれを具体化した法案成立を誤謬を鋭く突く書。
一応、それなりの知名度のある著者であり、具体的数字を挙げて説明する点と、WinWinを模索する姿勢は好感が持てる。
本書の姿勢と対照的なのは経産省(主流派?)か。
すなわち、原発問題に関しては、官僚の無謬性の枠に囚われ、結果として再生可能Eに関する日本の国際競争力を削ぐ帰結を招来する政策を打ち出してしまったのが経済産業省である。
本書から伺えるこの事実を見れば、いくら弁解されても、経済産業省は既得権を有する側の方に目線の大部分が向けられていると見ざるを得ないであろう。
一方で、環境省も再生可能Eに有利なデータを保持しているようだ。すなわち、風力発電の巨大なキャパシティに関し、著者が積極的に根拠とした資料を収集したのが環境省なのである。
原子力発電所は廃炉の問題、さらには超高濃度の放射性廃棄物(環境への影響停止まで1万年かかるとも試算)処理の技術的能力の欠如があって、今すぐそれに取り掛かっても遅いくらいなのである。
既得権の柵を脱却できない経産省に対抗できるデータの保持・収集という側面で、環境省には頑張ってもらわずばなるまい。
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再生可能エネルギーがブームになるずっと以前より再生可能エネルギーに取り組んでいた飯田氏ならではの著書と感じた。70年代、80年代、90年代の自然エネルギーの歴史は知らないことも多くて興味深く読んだ。