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西村賢太の私小説。クズっぷりが面白い。「見栄っ張りで短気で」という枕詞を使って自分の気持ちのいらだたしさを弁解するあたり小物な感じがするが、気持ちわからんでもない。途中のねずみの短編は小休止みたいなもので更に良かった気がした。
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西村賢太という作家の描く主人公には、やはり底知れぬ魅力がある。暴力や暴言で徹底的に痛めつけたかと思いきや、自らの行いに涙を流して悔いたり、時には頭を臥して詫びたりもする。このどうしようもなく愚直な男を見るたびに、私は荒廃した丘陵地帯をひたすらに進んでいく放浪者のようなイメージを思い浮かべるのです。
北町貫多という男の10代後半〜中年に至るまでの出来事を描いた私小説に混じって、一篇だけ毛色の異なった作品が掲載されていることに、私の興味は惹かれました。この『悪夢ー或は「閉鎖されたレストランの話」』という一篇を読み、私小説家ではない西村賢太に、初めて触れたような気がします。
ひっそりと、誰も見向きもしない場所で語られるこの物語は、避けられない運命と狂気のような復讐を遂げるストーリーにより完結しました。孤独な場所での血なまぐさい憎念と、ある種の諦観に、貫多の内面を垣間見ました。
本作は、一人の人物に寄せて書いた短編集と見ることもできますし、一人の主人公を描いた一つの物語として見ることもできるのではないでしょうか。読了後に、改めて思うのは…自分はやはり、この人の作品が好きであり、この人の描く男には愛着を持たずにはいられないということでした。
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私小説ではない作品『悪夢-或いは「閉鎖されたレストランの話」』が収録されている。これを読むと西村は小説家としては凡庸だなと思う。私小説家だからこそ面白い。チャールズ・ブコウスキーがヘンリー・チナスキーを書き続けたように、西村賢太も愚直に北町貫多を書いてほしい。なぜか女優の南沢奈央が解説という名の感想文めいたものを書いている。
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相変わらず最低ではあるが他作品に比べると若干マイルドな
気がする。
麻婆豆腐やねずみの話なんかはちょっとグロテスクだった。
でもやっぱり今回もなかなか楽しめた。
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貫太と秋恵の短編が5編、フィクションの短編が1編。
『赤い脳漿』貫太の理不尽な怒りも解らなくもない。怒りと後悔とのせめぎあい。
『悪夢』私小説以外の話を初めて読んだ。オチは読めたが諸々のえげつない描写は良かった。
MVP:なし
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初西村賢太。
なかなかおもしろかった!
自分のことを「ぼく」っていうのが、アンバランスでよろし。
乱暴な感じとか、バイト先での話とか、気持ち分からんでもないな〜ってなります。いやいや、それにしても、分からんでもないって変な言葉ですね。
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6編の短編が収められている。どの話も短く、小綺麗にまとめられている。その分だけ、西村賢太ならではの、破壊的な感じや陰湿な感じは薄まったが、サクサクと読みやすいので、これはこれで良いと思う。「悪夢」という、西村賢太には珍しい私小説ではない作品も、ダークでオモロかった。
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「とりあえず、あすこで二週間ばかし働いて生活を安定させる第一歩としよう。で、少し金を貯めたら、まともな仕事先を探してみよう。ぼくの人生はそこからだ。」という北町貫多のセリフが気に入りました。
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今回は前向きな短編が多かったように思う。恋人を作ろうと躍起になっている話よりも、貫多と秋恵が同棲している話が印象的だった。恋人がいても、その性格故に様々なトラブルを起こしてしまうところなど、まさに貫多らしい。
気に入った作品は、『二十三夜』、『悪夢』、『赤い脳漿』だ。特に『悪夢』は作者には珍しく私小説ではない作品だったために新鮮だった。西村賢太の私小説以外の作品は初めて読んだと思う。鼠の身に降り注ぐ不幸が、どう足掻いても止むことはない。あのレストランに勤めていた人間もそうだが、動物も動物で大変だと思う。最後は真っ暗闇の中に光がやっと射し込んだと思ったら、一気に暗転してしまった。
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醜い容姿、短気で酒好き、並はずれの性欲、突如飛び出す暴言・暴力。コンプレックスに苛まれ煩悶懊悩する主人公にいつものように自らを投影していた。他者との衝突にはらはらさせられながらも時折垣間見える相手を思いやる優しい心配りにもぐっと心惹かれた。以前にもまして磨き上げられた文章は陶酔ものであり、ストーリー自体は相変わらずのワンパターンでありながら些かのマンネリを感じさせない。加えて、6編の短編の中の「悪夢」などは、これまでとは全く趣を異にする作品であり、著者の新たな世界への挑戦も感じられ今後にますます期待は膨らんだ。
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六編の短編を集めた本。
「悪夢~」は彼の作品で初めて読んだ私小説以外のもの。自分の中で著者の私小説を読む回路ができていたのでちょっと戸惑った。一念というか意地の悪さを見た。
三編は秋恵話だった。相変わらず、相変わらずだわ・・・
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私小説。
貫多はどうしようもないクズだな!って思うけど、つい暴言が出てしまうだけで実はそんなに酷い人ではないのでは……とも。いや、まあ実際にいたら関わりあいたくはないですけど。遠巻きに見守っていたい。
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いや、西村さん・・しっかり青春してるやん。
ちゃんと、人を愛せてるじゃないか。
すげーよ、あんたすげー!
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モデルがいるに違いない「秋恵」さんの心境を知りたいなと思った。
レストランの話は、思わずのけぞってしまいました。
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中卒で家を飛びだして以来、流転の日々を送る北町貫多。一時の交情、関係を築きつつも必ず最後はメチャクチャに破綻してしまう彼の孤独な姿はそのまま自分自身の裡にあるのではないかと思い、彼の作品を読んでます。
ここには短編集がいくつか納められていて、そのうち、『悪夢―或いは「閉鎖されたレストランの話」』以外はすべて自分自身の体験から生まれた私小説です。『人もいない春』では印刷会社の職工に些細なことで絡んで悪態をつき、雇用の契約が延長されずに解雇され、タクシーの運転手にまで当り散らし、『二十三夜』では男女のことでトラブルを起こし、大喧嘩の末に店を追い出されたり、『乞食の糧途』では同棲する秋恵との危うい生活が描かれます。
その秋恵を『赤い脳漿』で彼女のトラウマとなっている交通事故で目の当たりにした人の脳漿にそっくりなマーボー丼を彼女に食えと強要させ、しかし『昼寝る』ではパート勤めの秋恵を心配したところで、結局お約束の展開となる彼女への罵倒となるのですが、ここではなぜか、二人の関係がよくなってしまいます。それにしても、何で自分がここまで西村賢太作品を読み込んでいるのかといえば、自身の体験したこともその一部にあるということと、彼自身の分身である北町貫多のしでかした人間関係の破綻が、そのまま自分の人生の人間関係の破綻と重なる部分があるのではなかろうかと思っております。
どこがどうだとは具体的には申し上げませんが、今後も北町貫多の人生の軌跡を追っていきたいとともに、自分自身のことを少しは見つめて聞きたいなと思っている昨今でございます。