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2013/08/16読了。白石一文さんは『私という運命について』で知って、これが二作品目。『私という…』は女性視点の作品で、男性作家が書いたと思えないくらい共感できたのですが、この『この胸に深々と…』はそれとは対象的で男性的な作品。
主人公は週刊誌の編集長。若くしてガンを患い、闘病中。
大物政治家の金銭スキャンダル報道をめぐる社内外の圧力や人間関係がストーリーの主軸になっているものの、その周辺にたくさん肉付けがされており、読み終わってみると一体何の話だったのかよく分からない小説です。
とにかく主人公の"頭の中"の部分が多い。仕事、病気、家族など、この人が置かれた状況だと、このように考えるのだろうな…という印象。ワーキングプアや格差問題に関する考え方が興味深く、掘り下げてみたいと思いました。
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かなり驚いたが、白石さんには珍しく、セクシーな場面から始まる。しかも実際にあった事実などの引用が多数出てきて、勉強になるのか?白石さんのストレス発散?か、読みにくく感じる人もいるかも知れない。下巻ではこの世の中のエリートとそうでない人の理由?みたいなことにも触れている。
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ガンに侵された週刊誌の編集者が主人公。勤め先は文藝春秋ぽいが、社名はでてこない。フリードマンや湯浅誠といった人たちの言葉を引用しながら、格差社会のおかしさを訴える。政界を揺るがすスクープを得ても、「政治家をやめさせたところで変わらない」という諦めも、変わらない格差に対する疑問から。小説読んでるというより、社会派エッセイ読んでる気分になる。著者が伝えたいのは、処女作と変わらず、「一瞬の必然を積み重ねる」生き方だ。豊かさの幻想に惑わされない。その生き方の重要性を説く主人公は、格差の上位に立つというのも変な話かもしれない。
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経済論、編集社の男たちの戦い、癌、性癖、生きる、カウンセリング、ポルターガイスト。
小説であり、経済学的すぎるところもあり、今後どう人間関係がこじれていくのか。
世界が幸せになるには、全員が豊かになろうとするのではなく、貧しくなろうとするべきだ。
賛否はともあれ新しい発想だった。
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「世の中に問題が起こるのは、私たちみんなが他人の不幸に余りにも無関心だからだし、その結果として世の中がいつまでたっても不調和なままだからです。私たちは全体の調和を優先しようという強い意志をいまだに持つことができないし、私欲に溺れて資源の分配でも常に独り占めをもくろんでしまう。そのために人間同士の恨みや嫉妬、憎悪の感情は一向に衰えを見せず、相互殺戮がいつ起きても不思議ではない怨恨の連鎖がいまもって途切れることなく続いているのです。」
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人の在り方、社会の在り方、心の在り方が、現実の社会問題や事件、史実の引用とともに主人公を中心に描かれる。
白石さんの本はどれを読んでも個人的に好き。世界観も、文体も。
まだ上巻のみなので下巻が楽しみ。
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衝撃の政治スキャンダルを手にした雑誌編集長。そのネタを元に繰り広げられる世界。胃がんを患いながらも様々な思考を展開する。その結論とは。経済・社会・宗教・哲学的思想を引用を繰り返しながら書きつける。上下巻。
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世の中、つまり政治や経済、国家、人間関係、恋愛、家族、企業内の権力闘争など、あらゆる事柄に対する著書の主張を延々と書き連ねている印象。
どこに行き着くのか?
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いつもの白石さんの気分で読み始めましたが、読み進めていくうちにちょっと違うのかなと感じ始めました。
白石さんが普段感じていることを、カワバタを通して伝えてこようとしているのでは。
難しくも感じるけど、ちょっと罪悪感や見たくない部分に触れられている気分もあり、下巻も読まずにいられません。
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貧困格差なんて絶対に無くならないと薄々分かってはいたが決定づけられた気がした。芸能人が1本百万~千万単位のギャラをもらったり、スポーツ選手の年収が億単位であったり馬鹿げていると言われれば、その通りので読んでいて腹が立ってきた。TVで下らない発言しかしない芸人と朝から晩まで毎日コツコツと仕事をしている人が貰っている給料とが雲泥の差なんてよくよく考えたら可笑しな話だ。そしてお金を沢山稼いでいる人はそうでない人を見下す。極端な話、政治家で消費税が上がって生活が苦しいと私生活で日々の支出を抑えている人がどれだけいるのか?明日食べるものに困って痩せてしまっている政治家なんて見たことないし、みんなでっぷりとした体格をしているではないか。
そういった絶望的な社会を諦めて生きていかなければならないと痛感させられる。
週刊誌編集長のカワバタをはじめ、登場人物の表記がすべてカタカナの為、其々の人物に感情移入することがなく、人間関係よりもカワバタ(著者)の主張が際立っている様に思う。しかしたまに誰が誰だか解らなくなってしまうのが玉に瑕。
下巻の月刊誌への移動とワーキングプアで取材を受けた
”タケダ”の衆議院議員立候補についての展開が気になる。グラビアアイドル”リコ”が無き息子の声の通り「悪い人」なのかどうかも見どころ。
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人気作家がやりたい放題?!一般受けはキビシイかと・・・。
親子揃っての直木賞作家である白石一文氏が、講談社の創業百周年記念書き下ろし作品として刊行した本作。第22回山本周五郎賞を受賞してはいるが、同年度の他候補作の評価が押し並べて低かったということも言い添えておくべきかもしれない。
数々のスクープを物にしてきた有名週刊誌編集長・カワバタは、僅か生後3ヶ月で我が子を失ったことを妻の身勝手さによるものだと思い込み、同時に自らも胃癌を患いながら再発の恐れを抱えている。上下巻とも終始、カワバタ主体で作品は展開されていて、その他の登場人物は実際のところあくまで付録といった印象。肝心の作品内容も、大物政治家Nのスキャンダルをスクープすることから始まり、内閣総理大臣、出版社社長と幹部、芸能事務所、暴力団までもを絡ませながら物語を展開させることで、前面で描かれる全くといって脈絡のない主人公を通した白石氏本人の主義?主張?コメント?を、なんとか繋ぎ合わせて超大作を作り上げたというもの。
巧みな表現力は疑いようも無く、古めかしい小説表現も悪くない。また、読み易さや心地良さ、いたずらな健全さや押し付けがましい感動の共有といった現代の小説に溢れかえっているものに背を向け、真っ向から挑みかけてくる確信的な居心地の悪さや不健康で毒のあるもの言いは、読み手の忘れかけた懐かしい感覚を呼び覚ましてくれる。
ただ、問題なのは作品の半分近くを占める「引用」だ。なにより引用している項目、そして引用文自体のレベルが低すぎる。すべてがワイドショー番組で取り上げられそうな項目と内容で、主人公自身も月並みな評論家程度の見解しか持ち合わせていない。つまり、読み込んでいるうちに「先が容易に見えてしまう」のだ。しかも出てくる評論項目に関連性が薄く、物語の流れが度々寸断されてしまうがため、展開が不自然になり、主人公が最後まで拘り続ける「必然」というものがウソ臭く感じられてしまう。
用意周到に張り巡らされた伏線を上手に繋ぎ合わせて行くような作品が目立つ昨今、このような乱暴でノイジィーな作品は逆に新鮮ではあるのだが、好き勝手にやっているとしか思われない作品では、一般読者にはなかなか受け入れられ難いと思われる。
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新たな遭遇だな。
こんな小説読んだことないよ。
作者は理屈っぽい性格なんだろう(笑)
でも、男の読者はそれがハマるかも。
唐突な引用に戸惑うが
何故か引き込まれる。
でも、勉強になったな(^^)/
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著者の作品を初めて読む方にはいい作品。著者の作品をいくつか読んでいる人にとってはくどいかもしれません。この人の小説はいつも一緒。小説家=自分が主人公。美女がでてきて、不倫して、病気して、出版社に勤めている、中年の男性。。説明文章が多くて回りくどくて、もっとシャープに、ページを少なくかけたんではないか?
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(オーディオブックにて)
こんな小説初めて。主人公の内面を中心に物語が展開する。
頭の中で様々な思いや考えが文字として記録されているような。
ストーリー自体はよくある小説なのだろけど、人間の思考ってこんな感じ、と自分でも思う。
経済の話や哲学に脱線をするが、それも人の思考の中にあることだと思うし、(知っていることもあるが)これはかなり勉強にもなる。
自分を取り囲む人々との関係、自分の(おそらく)未来との邂逅。ガンになったからこそ見えてくるもの。
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とても変わった小説。この世の中はVirtualなのかRealなのか? 直接は見ることもない貧しく恵まれない人に心を寄せる。何となく引き込まれる。